“2画面”アプリは実用に足るか?――「Sony Tablet P」徹底検証(後編):汎用性と独自性のはざまで(5/5 ページ)
タブレット端末はハードウェアとソフトウェア、ネットワークサービスの融合が重要だ。「Sony Tablet P」ならではの2画面タブレットに最適化したアプリ群を試してみた。
Androidの枠を超えた“使える”2画面タブレット
以上、Sony Tablet Pを3回に渡ってじっくりチェックした。
価格はソニーストア直販で6万2880円と安くないが、コストがかかった2画面搭載のAndroidタブレットとしては納得できる範囲だ。NTTドコモのFOMA定額データプランに契約して購入すれば、実質負担額は抑えられるが、これを指名買いするようなユーザー層であれば、既に所有しているモバイルルータと組み合わせたり、MVNOで試したいといったケースも多いだろう。
Sony Tablet Pの折りたたみボディは、“小さく運んで、大きく使う”というコンセプトをうまく体現している。ソニーのコンテンツ配信サービスはまだまだ洗練されておらず、純正アプリはものによって操作性が大きく異なるなど課題はあるが、第1世代の製品としてはハードウェアとソフトウェアの両面をよく作り込んできた印象だ。
これまでは2画面の携帯情報端末というと、コンセプトモデル的な部分が残ったままの製品も少なくなかった。しかし、Sony Tablet Pはきちんと各種アプリも最適化して2画面のタブレットとして成立させている。最初はクセを感じることがある純正の2画面アプリも、少し使って慣れれば便利に活用できるものが多く、総じて満足度は高い。
不満点を挙げるならば、バッテリーの減りが結構早いことだが、バッテリーは交換式なので泊まりがけの出張などには予備を持っていくことでフォローできる。
汎用のAndroidアプリは2画面にうまくフィットしないものもあるため、単にAndroidタブレットが欲しいという理由で選ぶのは避けたほうがいいが、明確な差異化が難しいAndroidタブレットの中にあって、これほどの独創性を備えた製品は皆無で、強烈な魅力を感じる人は決して少なくないだろう。
携帯性に優れた2台目のタブレットや、ほかとは違ったポータブルデバイスが欲しい、といったこだわり派に強くおすすめしたい。
そもそもSony Tablet Pは「モバイル環境で高速なデータ通信が可能になった時代に最適な携帯端末は何か」というテーマで、2007年から開発が進められてきた。Androidの採用はいわば市場動向を受けての後付けだ。
実際、Sony Tablet Pで主に常用することになる独自の2画面アプリは、標準的なAndroidアプリとは見た目も使い勝手も異なるため、Androidアプリ互換の独自ポータブルデバイスという認識でも正しいように思う。
ここはスタンダードなモデルのSony Tablet Sとは違う部分だが、近い将来にソニー独自のコンテンツ配信サービスがより強化されれば、Sony Tablet全体としてAndroidのオープンな世界からさらに距離を置くことになる。
とはいえ、Androidタブレットとしての汎用性を保持することで、ユーザーの間口を広げているのも事実だ。海外では既にSony TabletのAndroid 4.0アップデートが予告されており、日本でも実施されるだろう。OSのアップデートが可能と分かれば、購入時の安心感が違ってくるはずだ。
もっとも、最新OSへのアップデートは新機能の追加や不具合の修正といった意味で朗報だが、Sony Tablet Pの場合はAndroidであることと別のところに価値があるので、ほかのAndroidタブレットほどアップデート対応に大きな意味はないかもしれない。
ソニーとしては今後、Android端末としての汎用性を保ちつつ、どのように独自性を追求していくのかが、Sony Tablet開発における腕の見せ所になるだろう。
現状でのAndroidの完成度を考慮すると、開発当初に可能性としてあった別のOSという選択肢を見たかった気もするが、Androidに独自サービスをうまく載せていければ、ほかのAndroidタブレットともiPadとも違ったポジションが確立できる可能性はある。
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