未来のMacを先取り!「OS X Yosemite」特大プレビュー:林信行が「OS X v10.10」を徹底分析(7/7 ページ)
Macに新しい進化の道を示すOS X v10.10「Yosemite」。林信行氏がその思想的背景から新機能の魅力までを徹底解説する。
iOS 8とともにデジタル写真に革命を起こす新アプリケーション
アプリケーションについては、もう1つ話題がある。実はiOS 8のリリース後、OS X用に今後、新たな標準アプリとなるであろう「Photos for OS X」のリリースが予定されている。これはiOS 8の超重要機能と関連した新アプリケーションだ。
前回、ITmediaでWWDCの速報記事を書いたときは、急いで仕上げる必要があったため、この重要機能について触れるのを忘れてしまった(関連記事:林信行のWWDC 2014ポイント解説:iPhoneの体験を加速する「iOS 8」――ユーザー主体の時代へ)。
そこで、Yosemiteの話題から少し脱線にはなるが、まずはこのiOS 8の重要新機能の解説を行ないたい。
今、世界中のiPhoneユーザーが、iPhoneを電話である以上に、カメラとして愛用している。写真や動画の撮影や、表示/再生の機能は、実はiPhoneの至宝であり、これまでの新型iPhoneの発表でも、新OSの発表でもカメラ関連の進化がないことはなかった。
iPhoneが、国内有名デジカメメーカーのコンパクトデジタルカメラと同じCCDを内蔵し、圧倒的な描写力で高い評価を得てからは、ほかのスマートフォンメーカーもかなり本腰でカメラ機能に注力し、画質で追随してはいるものの、iOS 8では使い勝手でそれらの製品を引き離してしまう機能を搭載している。
それは「iCloudフォトライブラリー」で、iOS機器で撮影した写真すべてをクラウド上に保存してしまう機能だ。標準で5Gバイトまでなら無料で使え、さらに毎月99セント(約100円)の月額料金を払えば20Gバイトまで、毎月3.99ドル(約400円)で200Gバイトまで写真を蓄積できる。また、料金設定は不明なものの、最大1人当たり1Tバイトまでの写真をiCloud上に保管することもできる。
ストレージ容量が足りないと考える読者もいるかもしれない(筆者もそちら側だ)。ただ、そういう人は自分の恋人や伴侶、親兄弟や親友ならどうかと想像を巡らせてほしい。ほとんどのユーザーにとって、これはこれまで通りに使っていたら数年間撮り貯めても到達しない容量のはずだ。
子供が中学、高校に入ってから卒業した後までのすべての写真は確実に入るだろうし、数年間の旅行先の写真もすべて収まる。流行りのライフログ機器で機械的に記録された写真ではなく、「これはきれい」、「これは記録に残したい」というハートの暖まりを覚えてiPhoneのシャッターを切った映像が、もしかしたら一生分記録でき、そしていつでも、大事な瞬間を思い出したいときに、さっと見つけ出してくれる。これは「カメラ」というものの概念すらも変えてしまう「革命」だ。
そしてもちろん、これからはiOS機器とMacの連携が大事な時代。そこでアップルはYosemiteのリリースと前後して、iOS 8の「iCloudフォトライブラリー」を、Macでも参照できるようにする新アプリケーションをリリースするのだ。
リリースは秋、その前に公開β版も
OS X Yosemiteは、新しい時代を切り開くOSだ。それでいて、あれだけ見た目が違うのに、これまでのOS Xユーザーが違和感なく移行できるOSでもある。そして、すでにiOS 7のフラットデザインに慣れ親しんだ人が、パソコンを買う際に十分な親しみと魅力を感じるOSでもある。
Yosemiteのリリースはこの秋で、アップグレードは無料。Mac App Storeから配布が行なわれる。ただ、その前にβ版が公開予定だ。
これだけ大胆な新しい提案をしており、これだけ大胆にデザインも変えてきたのだから、最初からすべて完璧というわけではないかもしれない。それを見て、揚げ足をとってソーシャルメディアやブログで自分がいかに洞察が深いかを世の中に示すのもいいが、それだけに終わらせず、同じフィードバックをβ版公開を機会にアップルにも伝えてほしい。私も自ら実践して、例えばアイコンのデザインや公開β版時点での日本語フォントについてはフィードバックしたいと思っている。
もちろん、そんなことをしてもアップルからは感謝状もお礼の言葉も送られてこないかもしれない。何せ世界に数千万人の利用者がいるOSだ。誰かが思いつくアイディアは、たいてい十数人から送られてくる。しかしそれでも、意味がないことではない。それだけ大勢からフィードバックが行なわれた意見にはアップルも、その分、しっかりと耳を傾けるだろう。
そして、あなたの元にお礼状は届かないかもしれないが、秋ごろには、あなたの意見も取り込まれて少しだけ使いやすくなった最終版のOS X Yosemiteが届き、あなたの日々の生活や仕事にちょっとだけ喜びを加えてくれるはずだ。
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