Brand New PC Style:PCが進化してこそ、人類は進化を手にできる

ZDNet Products編集部では、タブレットPCをPCの進化のメルクマールの1つととらえている。新たな入力インタフェースの登場が何を意味するのか、PCを使用する人間のスタイルをどう変えるのか。我々はタブレットPCを使用したユーザーの率直な気持ちをより多くの人に伝えていく特集を開始する。本特集から見えてくることを、少しでも多くの人と共有できればと思う。

 ZDNet Products編集部では、タブレットPCをPCの進化のメルクマールの1つととらえている。新たな入力インタフェースの登場が何を意味するのか、PCを使用する人間のスタイルをどう変えるのか。我々はタブレットPCを使用したユーザーの率直な気持ちをより多くの人に伝えていく特集を開始する。本特集から見えてくることを、少しでも多くの人と共有できればと思う。

大仰なタイトル、と思われたかも知れない

 ZDNet Products編集部では、2002年11月7日のタブレットPCの発売開始に合わせ、Tablet PCチャンネルを開始した。Productsチャンネル内チャンネルという形態でだ。タイトルはともかく、サブタイトルに「PCの未来がここにある」と名付けた。大仰な、と思われた諸兄も多くいらっしゃったかも知れない。

 11月7日に至るまでの取材を通して感じたことが、このサブタイトルには込められている。それは、マイクロソフトが相当本気だ、ということと、欲張りだということを、我々が感じたことによる。

 OSメーカーとして、なおかつ既に浅からぬPCの歴史の上でも欠くべからざるマイクロソフトが、ペンというものに関わってきた歴史、こだわりは、ウソ偽りのない事実だ。少なくともサードパーティー任せにせず、自らペンを何とかしようとしてきた。

 かといってペンだけに固執しているわけではなく、ペンは最も分かりやすいとっかかりであり、その他の入力形態をも含ませた、OSとPCの変革の皮切りとして位置づけている、ということだ。

 そして世界最大のOSメーカーとしての自覚を忘れておらず、欲張りだ、ということ。現状を善しとせず、状況に流されるのでなく、意志を持ってPCを進化させようとしている。トップがトップを維持するための努力を怠っていない。普通なことだが、普通なことこそ難しい。トップだからこそ失敗を恐れる気持ちが出てしまうものだからだ。

 これらを勘案した上で、その気概や善し、というのが率直な我々の感想だ。無論、我々の同業の大勢がタブレットPCに批判的なのはよく分かっている。メディアは批判をするべきだし、そうでないメディアはメディアとは言えない。だが、批判をするにもいろいろな方法はあるし、それをいろいろ使いこなすことこそ、またメディアなのである。ともあれ、大勢が批判的なため、逆の天の邪鬼的に真面目にPCの将来を語る一つの切り口として、タブレットPCという存在は有効であろう、と考えたわけだ。

タブレットPCとはナニモノか?

 今までも、ペン入力が可能なPC関連機器は多い。タッチパネル系も類するモノだし、PDAが最たるモノだ。だが、それは大多数の人間が使うジェネリックなものとは言い難い。

 時代は変わる。変わらない時代などない。かつて、大型のコンピュータは、パンチングした(穴を開けた)紙で入力を行っていた。キーパンチャーなどという職種すら、存在していた時代があったのだ。その後、パーソナルコンピュータが登場し、多くの人々がコマンドを入力するためにキーボードを使用するようになった。そして、グラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)の登場により、マウスが使用されるようになる。まさにPCはユーザー・インタフェース(UI)につれ、UIはPCにつれ、である。

 そう考えると、大多数の人類が使用するOSが、筆圧感知する進化したペンをデフォルトでサポートする事態。これは、PC進化の階梯が1つ上がった、と言っていい事件だ。

 マイクロソフトは言う。数年後にはすべてのノートPCがペン入力が可能になっているだろう、と。また、次にはデスクトップがそうなるだろう、と。PCのフォームファクタの変更を、PCメーカーに要求しているわけだ。

 翻って、PCメーカーのほうを見てみよう。

 ここ数年PCが面白くない。似たような筐体、似たようなスペック。低価格競争。家庭普及率の上昇と同時に出荷台数が伸び悩んでいる。他社製品との差別化が難しい時代なのだ。少なくとも、差別化に成功した会社は伸びている、と言った方が良いだろう。

 当然だ。PCというモノのベースとなるフォームファクタの変更が余り無い以上、価格競争が手っ取り早い差別化だからだ。経済不況も相まって、価格的ボリュームゾーンの下落と、激安パソコンの登場には、驚きつつも、それだけで良いのか? という気になる。

 タブレットPCとは、PCを取り巻く世界のリセットの第一歩だ。今回タブレットPCの第一弾に名を連ねたPCメーカー(及び近々の開発・出荷をアナウンスしたメーカー)は、リセットを歓迎していることになる。入力手段のリセットは、つまり、ハード的形態のリセットであり、想定使用スタイルのリセットでもある。

 OSの変化を歓迎するPCメーカーを、我々は歓迎したい(無論OSに捕らわれることなく、自ら変化し続けるメーカーも、だが)。

道具の変化とスタイルの変化は、不可分だ

 思い出そう。ITなどという言葉が登場する前、PCこそが時代の最先端だった。PCこそが、新しい市場、新しいビジネス、新しい文化、新しいスタイルだった。

 だがPCには、ITよりも断トツに優れていて、かつ、永遠にITが追いつけないことがある。ここに来て、業界だけでなく多くの人が、薄々気づいているのではないか?

 PCは、ユーザー・インタフェースと不可分なものであり、かつ、人間の五感と密接に関係せねばならない機器であり、何事か新しいファンクションを人間とデジタルの間に登場させる際に、非常に柔軟な受け皿であり、かつ、形態そのものも進化をしていける可能性を秘めた存在なのだ。

 人間が人間である以上、ユーザー・インタフェースとともにあるPCこそが、数百万年前に最初にサルが握った道具の進化の先端の一つなのだ。ネットの向こう側のサーバの中にあるITとともに、新たな道具の進化には欠かせないものだと思うのだ。

 そして道具の進化とスタイルの進化はほとんど同時であり、瞬時だ。新しいスタイルの要求があれば道具はいつか進化するし、新しくていい道具があれば、スタイルが勝手に進化する。

 タブレットPCというものを通して、我々はその進化とともに、歩むことが出来るだろう。

 ともあれそれほど大げさに感じる必要もない。良ければ残るし、悪ければ廃れるのだから。

体感を追う試み

 PCは、人間とデジタルとを結ぶメジャーなユーザー・インタフェースの一つだ。しかも、タブレットPCの登場を皮切りに、新たなスタイルの覚醒と解放が始まる。

 我々はメディアの使命として、人間の体感とその変化を追ってみることも非常に有意義だと思っている。そこで今回、仕事環境・PC経験年数・PC習熟度などが重複しない、PC業界人ではない5人をピックアップし、タブレットPCを手渡し、ファースト・インプレッション、こなれてきた時の感覚、応用へのひらめきなどを、モニタしようと試みることにした。

 より多くの人に触ってもらうほうがいいに決まっているのだが、当然物理限界はあるため、5人とした。なるべく多くの人のシチュエーションに近づくほうがいいと考え、特殊な用途だけを想定することはせず、普通にPCを使用している人を中心に選んだ。

 今後数カ月にわたるユーザーレポートを、是非ごらんいただきたい。PCを使用するスタイル進化の一局面を、そこに読み取ることができるはずだ。

 また、そのユーザーレポートの準備の期間中とレポートの合間には、特定の業界で活躍されるかたのスペシャルインタビューや、PC関連業界のリーダー的存在のかたがたのスペシャルインタビューも掲載をしていく予定だ。

 無論、機会があるなら実際にタブレットPCを店頭で触る体験の方が自分にとっての真実ではあるだろう。ただ本特集を読んでいただけることで、少しでも変化の時代の空気を感じて戴ければと思う。

ZDNet Products編集部 副編集長 大出裕之

[大出裕之, ITmedia ]

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