サラリーマンのためのタブレットPC使いこなしガイド 第1回
OneNoteの登場でタブレットPCがいっそう身近に(1)
ノートPCとPDAの中間――普段のWindowsアプリケーションが使え、PDAなみの軽快な操作性と携帯性を持つタブレットPC。メールやWebの閲覧はもちろん、企画書を作成して他社に営業に行き会議室でプレゼンを行う……そんな今回の企画にぴったりの人はもちろん、それ以外の人にもタブレットPCとOffice OneNote 2003などのアプリケーションを組み合わせた、きっと役に立つちょっとしたノウハウを今後数回に分けて展開していく。
現代ペン・コンピューテングの感激
タブレットPCと相性のよいデジタルノートアプリケーション「Office OneNote 2003」(8月28日の記事参照)を初めて見たとき、「マイクロソフトが推進しようとしている"インフォメーション ワークの生産性向上"というテーマを、一般ユーザーに対して最も解りやすく表現したソフトウェア」だと感じた。また同時に、あの小さな名機の使いやすさを思い起こしていた。
新しくオフィスアプリケーションに追加された「Office OneNote 2003」。ペンによる手書きとキーボードによるテキスト入力のほか、画像、音声、URLアドレスなど、あらゆるデジタル情報を収集、加工、整理、配布することを目的としたデジタルノートアプリケーションだ
1996年、現代ペン・コンピューティング世代の始まりを見る
1996年のこと。シリコンバレーに住んで、ベンチャー企業が開発した最新技術の動向をレポートする仕事をしていた私は、胸を躍らせながらクルマをエルカミノ通りに走らせていた。
その年、起業したばかりのベンチャーが中心になって催されるクローズドな展示会「DEMO'96」が南カリフォルニアの高級リゾート地、パーム・スプリングスで催され、それは初めて人々の前に披露された。Yシャツの胸ポケットに入るように設計された小型の電子デバイスは「グラフィティ」と呼ばれる文字認識エンジンを搭載していた。付属のペンでなぞった文字を(当時としては)快適なスピードと精度でテキスト変換して画面上のアプリケーションに入力でき、コマンドやチェックボックスはペンでタップするだけでスイスイと指定できた。
そのクローズドな展示会に運良く参加することができた米国の報道陣や投資家の多くは感嘆の声を上げ、ペン・コンピューティングの新たな息吹の誕生を感じた。その電子デバイスは「Palm Pilot(以下Pilot)」と名付けられた。
いよいよリリース間近となったPilotの実物をエルカミノ通りのPalm Computingオフィスで見せてくれるということになり、私は一目散に駆けつけた。開発者は日本語が流暢な日系二世の人だった。コミュニケーションがとりやすかったこともあって、開発の背景や機能など、私はこと細かに2時間も聞きまくった。そして聞いた情報を一生懸命に文章で表現し、翌朝には原稿をインターネットで日本に送った。それはPilotの仕様と写真を日本で紹介した初めての記事になったと記憶している。
そのとき、この製品は素晴らしいビジネスに成長すると確信していたが、一方で「実はマスのユーザーが本当に望んでいるものは、このペン・インタフェースと使いやすさとシステム手帳並の機動性を持ったWindowsなのだろう」とも感じた。Pilotはその後、Windowsとは違うフィールドで進化していくのだが、これがのちに「Information at your fingertips」コンセプトを掲げたビル・ゲイツ氏が生んだWindowsCEとの激しい市場争いのはじまりだったことは言うまでもない。そしてこれが現在のPDAやペン・コンピューティング世代のはじまりでもあった。
(第2回へ続く)
著者紹介
神崎洋治:
トライセック代表取締役。パソコンや周辺機器、インターネットに詳しいコラムニスト。シリコンバレー在住時は、取材による米ベンチャー企業の最新技術動向をレポート。ペン・コンピューティングデバイスの先駆けである「Palm Pilot」を、製品写真や開発者取材を通して日本のメディアに初めて紹介したひとり。
マーケティングにも精通し、ライターやデザイナーとしても幅広く活躍中。主な著書は「ひと目でわかるMicrosoft Office OneNote 2003 マイクロソフト公式解説書」「学び直すDVDのしくみ」(日経BPソフトプレス)ほか。
[神崎洋治(トライセック), ITmedia
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