ついに中国でもスタート W-CDMA方式の3Gサービス:山根康宏が現地からリポート
中国聯通(China Unicom)が5月17日、中国国内55都市で3Gサービスを開始した。通信方式はW-CDMA。今後エリアを拡大し、秋には本格的なサービスを開始する予定だ。
中国の通信事業者、中国聯通(China Unicom)は5月17日、中国で初のW-CDMA方式による3Gサービスを開始した。サービスエリアは北京、上海、広州など全国55の都市。エリアは今後9月末までに284都市に拡大する予定である。
ブランド名は“wo” HSPAサービスも提供
中国聯通が提供する3Gサービスのブランド名は“沃”(英語名は“wo”)。サービスの内容はテレビ電話、高速音楽配信、ストリーミングによるビデオ配信など。またデータ通信はHSPAに対応し、通信速度は下り最大7.2Mbps、上りが最大5.76Mbps。3G端末はSamsungやLG Electronics、Sony Ericssonなど海外メーカーのほか、HuaweiやZTEなど中国国内メーカーのものも提供されている。
基本料金は最も低価格な月額186人民元(約2600円)のものから最も高価な月額1686人民元(約2万3600円)のものまで7タイプを提供。基本料金には音声通話、TV電話、データ通信、コンテンツ利用料金が含まれる。コンテンツは文字によるテキストコンテンツ(T)と、写真や動画などのマルチメディアコンテンツ(M)に区分され、データ量ではなく利用したコンテンツの数で課金される。例えば月額186人民元のプランに含まれる無料利用分は音声通話が510分、テレビ電話なら20分、データ通信が60Mバイト、それにテキストコンテンツ40本、マルチメディアコンテンツ20本となる。このほかに無料のモバイルニュースが毎日配信される。
なお中国聯通の3Gサービスは現時点では“商用テストサービス”という位置づけで、本サービスの開始はエリアが拡大される今年9月末を予定している。
“Netbookの格安販売”も──事業者間の競争が本格化
中国の3Gサービスは中国移動(China Mobile)がTD-SCDMA方式、中国電信(China Telecom)がCDMA2000 EV-DO方式を採用している。中国聯通のW-CDMA方式はすでに海外で広く利用されており、対応端末も多いなど先行2社に対して大きなアドバンテージを持っている。
そのため中国移動、中国電信の両社は中国聯通のW-CDMA開始に対して端末割引を強化するなど対抗プロモーションを開始した。また音声端末向けのサービスでは“3Gならでは”のキラーコンテンツ、キラーサービスがまだ出そろっていないこともあり、各社は3Gサービスの目玉の1つをモバイルブロードバンドに置いている。
ちょうど2008年から低価格ノートPCのNetbookが各PCメーカーから続々と市場に登場しており、中国メーカーの参入も今年から始まっている。3G回線を利用すればADSL並みの速度でインターネットを利用できるメリットがある。加えて中国では、固定系のサービス契約は手続きに時間がかかるが、携帯電話回線であればモデムを買ったその日からインターネットを利用できるという大きな強みもある。
そのため通信事業者が通信料金とデータモデム、そしてノートPCを安価に販売する動きが加速しており、中国移動はDellやHP、LenovoなどのNetbookにTD-SCDMAモデムを内蔵したモデルを投入。モデムを外付けしなくともすぐにインターネットを利用できる手軽さを売りに、通信料金と合わせた割引販売で他社を引き離したい考えだ。対する中国電信、中国聯通もUSBスティック形のモデムをNetbookとセット販売するなど、日本の量販店店頭に見られる“格安Netbook販売”が中国でも活発化しそうだ。
中国では2008年に通信事業者の再編が行われ、6社が3社に統合されたばかり。2008年中は各社サービスの統合などに時間がかかっていた。しかし2009年春からは全社が3Gサービスを武器に新体制で本格的なサービスを展開することになる。これまでは中国移動の一人勝ちが続いていた中国市場だが、今後3社による競争が激しさを増すことになりそうだ。
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