オートGPS対応で、「iコンシェル」は新たなフェーズへ――ドコモの前田氏:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)
2008年、「iコンシェル」を導入することで携帯サービスに行動支援の要素を取り入れたドコモ。2009年冬春モデルでは位置情報連携に対応させ、さらに高度な行動支援が可能になった。位置情報連携がiコンシェルにもたらす新たな可能性について、NTTドコモ ネットサービス企画担当部長の前田氏に聞いた。
詳しくは図版もあわせて見ていただきたいが、このオートGPSを用いたiコンシェルの仕組みでは、「ユーザーの現在地情報」がドコモの管理するサーバーのみで保有される。これによりユーザーは“現在地情報を通知する”ことによるプライバシー上の不安を感じることがなくなり、一方でコンテンツプロバイダはユーザーからの位置情報提供を受けるセキュリティ上の負担やリスクを回避できる。コンテンツプロバイダから見ると、提供するコンテンツに「提供場所」や「提供タイミング」の設定をしておくだけで、適切なユーザーに届けてもらえるのだ。
このiコンシェルの位置情報サービスでは、コンテンツプロバイダ側がかなり細かく配信条件を設定できる。具体的には、配信エリアは半径50メートルから10キロメートルの任意のポイントで設定可能であり、配信時間も24時間から分単位で決められる。また、「マイメニュー登録しているユーザー向け」「特定のトルカを保有しているユーザー向け」「特定のiスケジュールを持っているユーザー向け」といった条件設定も可能だ。
その反面、現在のiコンシェルでできないのは、リアルタイムでの配信依頼。コンテンツプロバイダからの配信予約は前日までに設定しなければならないので、例えば飲食店で「今日は雨が降ってきたから、今から周辺ユーザーに割引クーポンを配信する」といった使い方はできない。
「現状ではコンテンツプロバイダがあらかじめコンテンツを用意しておき、ユーザーが設定条件にあうとコンテンツを配信するものとして考えています。しかし、(端末機能のオートGPSと異なり)iコンシェル自体はサーバーサービスですので、今後さらに機能を進化していく予定です」(前田氏)
より高精度なレコメンド情報を提供するために
オートGPSを用いたiコンシェルサービスは、多くのコンテンツプロバイダが利用できるように解放される。すでにリポート記事でも紹介されたとおり、全日本空輸や日本航空、ぐるなび、楽天トラベル、すかいらーくグループ各チェーン店やNAVITIMEなど、さまざまなコンテンツプロバイダが、この新たなサービスプラットフォームに参加する予定だ。さらにドコモでは、「(オートGPS対応の)iコンシェルをお客様に理解してもらい、その利便性を知ってもらうため」(前田氏)に自らもコンテンツを用意する。その1つが、終電間近になると通知してくれる「終電アラーム」であり、位置情報と連携した「オートGPS気象情報/地震情報」などだ。
そして、もう1つユーザー自身が利用できるサービスとして、「オートGPSリマインド」も用意される。これはユーザーがあらかじめ設定した店やエリアに近づいたときに、マチキャラが通知してくれるというサービス。一種の備忘録的なものだが、“常に位置情報を確認し、設定ポイントに近づくと教えてくれる”というのがポイントだ。
「オートGPSリマインドは自分で(通知)ポイントを設定することもできますが、コンテンツプロバイダの用意するコンテンツやトルカなどクーポン情報との連携も視野に入れています。例えば、いま計画中のものでは『Gガイドモバイル』との連携などですね。テレビ番組情報と連携して、オートGPSリマインドを設定する、といった使い方を考えています」(前田氏)
一方、自分でオートGPSリマインドを設定する場合は、携帯電話の設定画面から場所や通知条件などを設定することになるが、「将来的にはMy DoCoMoのサイトを使って、(PCを使って)WebからオートGPSリマインドの設定や、その他のiコンシェルの設定・操作ができる環境を用意したい」(前田氏)という。iコンシェルが便利になればなるほど、設定や操作を大きな画面とマウス・キーボードが使えるWebからしたいというニーズは高くなる。My DoCoMoサイトの活用と連携は、いち早く実現してほしいところだ。
iコンシェルの進化発展は今後も続く
iコンシェルがスタートしてから1年。今回のオートGPS対応で、その行動支援の精度はさらに高くなり、コンテンツサービスとして提供できる価値も増大した。今後のiコンシェルは、どのような方向で進化していくのだろうか。
「iコンシェルそのものの本質的な価値は大きく2つあります。1つは『お客様のデータを預かっていること』、そしてもう1つが預かった情報から『お客様のコンテクスト(文脈)が分かっていること』です。これにより(ユーザー側に能動的なアクションを求めることなく)最適なコンテンツをお客様にマッチングさせることができる。このコンテンツとお客様を結びつける技術として今回のオートGPS対応は大きな進化と言えます。
その上で、今後のiコンシェルをどうしていくのか、という部分ですが、iコンシェルは生活総合支援サービスのプラットフォームですから、お客様を(iコンシェルのシステム側が)より高精度に理解していかなければなりません。そこで重要なのは、iコンシェルがよりコンシェルジュ的に振るまうために、情報の『インプット』をしていく仕組みを作らなければならない、ということです。ユーザーがiコンシェルに指示や情報を出して、それをもとにiコンシェル側がお客様の趣向や(サービス利用)傾向などを学んでいく。私はこのインプットの部分を強化することで、iコンシェルをさらに発展させていたけると考えています」(前田氏)
今回、位置情報サービスの要素を取り込んだことで、iコンシェルはモバイルのサービス/ビジネスプラットフォームとして、さらに一歩前へと未来に踏みだした。今のところ「日本だけ」「ドコモだけ」という課題はあるものの、その先進性や革新性はモバイルビジネスのトレンドをリードするものだ。オートGPSによって、iコンシェルがどのように進化・発展していくのか。それはモバイルを通じて、コンテンツやサービスがどのように「リアルと連携し、新たな価値やビジネスを生みだすか」の先行事例になるだろう。期待を持って、今後のiコンシェルに注目していきたい。
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