スマートフォン戦線拡大中――「GALAXY S」「GALAXY Tab」を投入するドコモ:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)
2010年冬商戦を前に、注目のスマートフォンが各キャリアから発表された。ドコモは“iPhone追撃の象徴”ともいえるSamsung電子のGALAXY Sを投入し、布陣を厚くする。
GALAXY Tabは女性向き? 課題は料金プラン
それではGALAXY Tabはどうか。同機はiPadと同じタブレット型端末であるが、先述の通り、その印象や使い勝手はiPadとは似て非なるものだ。
この違いはサイズ感の違いによるものが大きい。iPadではサイズや重量の関係で、“ひょいと持って使う”というのは難しい。どちらかというと膝の上や机に置いて使うという使い方になるが、GALAXY TabはiPadよりもコンパクトで軽いため、この“手持ちで使う”ことが気軽にできる。特に使いやすかったのは、“両手で持って使う”というスタイルだ。筆者の手でこの持ち方をすると、ちょうどQWERTY方式の文字入力パレットを親指で自然と押すことができて使いやすかった。タブレット型端末はWebサイトや電子書籍のビューワー的な使い方を想定されがちだが、GALAXY Tabのサイズは意外とメールやTwitter、文書作成といった文字入力用途にも向いているかもしれない。
デザインや質感も悪くない。樹脂製のボディは金属削りだしのiPadと比べると高級感では見劣りするが、つるりとした背面塗装の処理は触れたときの感触がよく好感が持てた。サイズ感が絶妙なこともあり、ビジネス用のブリーフケースから女性用のハンドバッグまで、どこから取りだしてもさまになりそうだ。
GALAXY Tabは単独のタブレット型端末としてももちろん魅力的であるが、そのサイズと性能のバランスは「従来型ケータイと組み合わせて使う2台目端末」としても最適だと感じた。特に従来型ケータイに慣れ親しんだ女性ユーザーが、スマートフォンに乗り換える代わりに買う端末としては意外と支持を集めるのではないか。
日本ではiモードなどキャリア独自のサービスやコンテンツのエコシステムが生活・社会に浸透しており、ケータイで発展した10キー入力のUIに馴染んでいる人も多い。一方でスマートフォンには、大きな画面と、タッチパネルと高性能なWebブラウザ・アプリ環境による、いつでも・どこでも、インターネットやリッチなアプリ/コンテンツが快適に使える点を求める向きが強い。GALAXY Tabのサイズは、スマートフォンと同じことが、スマートフォンよりも広くて快適な画面サイズでできる一方で、モバイルノートPCやiPadに比べてコンパクトなので、持ち歩いていることを意識しないギリギリの大きさ・重さに収まっている。GALAXY Tabはともすれば、コンシューマー市場と法人市場の両面で、「ケータイ併用」を前提にした新たな2台目市場を創出するかもしれない。
ただし、そこには課題もある。
GALAXY Tabは音声通話機能が用意されているため、現状ではドコモのスマートフォン向け料金プランが適用される。これだと従来型ケータイと併用するにはコスト負担が大きく、端末としては新たな2台目需要を喚起するポテンシャルがあるのに、料金が足かせになってしまうことは否めない。おそらく今の料金体系のままでは、ランニングコストの割高感が普及の障壁となり、GALAXY Tabは成功には至らないだろう。
GALAXY Tabを普及・成功させるためには、従来型ケータイとの併用を前提にした料金体系が必要だ。より踏み込んで述べれば、ケータイとタブレット端末で毎月のパケット定額料金分やiモード/SPモードのオプション料金を共有し、セットで大幅に割安になる新たな料金体系は必須だ。GALAXY Tabはマーケティング次第で大きな可能性があると感じるので、ドコモには是非とも「マルチデバイス時代」を見据えた戦略的な料金プランを投入してもらいたい。
布陣を厚くし、存在感を強めるドコモ
ドコモは今回の冬春商戦において、全部で7機種のスマートフォンを投入して陣容を整える。今回のGALAXY SとGALAXY Tabは、主にAppleのiPhoneとiPadの対抗馬という役割だ。これを先に発表・投入することで、年末商戦に向けてiPhone 4とiPadの勢いを削ぐ。その上で、残り5機種のスマートフォンで、2011年の年明けから春商戦にかけての本格化が予想される“一般ユーザーのスマートフォンへの買い換え需要”を取り込んでいく戦略だろう。
布陣を厚くするドコモに、KDDIとソフトバンクモバイルはどう対抗するのか。次回以降はそれを見ていきたい。
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