純増数・解約数では厳しい状況続くが、改善に手応え ドコモ 2012年度第1四半期決算
NTTドコモが7月27日に発表した2012年度第1四半期の決算は増収減益。音声収入の減少や月々サポートの影響、営業費用の増加が収入増を上回った。しかし状況は堅調で、ほぼ想定どおりだと加藤薫社長は話す。
NTTドコモが7月27日、2012年度第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比2.4%増の1兆723億円、営業利益は前年同期比1.9%減の2626億円で、増収減益となった。
決算会見の冒頭で代表取締役社長の加藤?氏は、25日に発生したspモードに関する不具合を謝罪。問題が発生したアカウントは把握しており、現在個別に対応しているところだという。影響があったのは1000件弱のユーザーで、原因は引き続き調査中だが、人為的なミスの可能性が高いとしている。
第1四半期の進捗はほぼ想定通りと加藤氏。2011年度第1四半期と比べて、音声収入で約412億円、月々サポートの影響が283億円と計695億円の収入減があり、端末販売費用の増加で89億円、その他費用の増加で240億円で計329億円の営業費用の増加によって、計1024億円の減益要因があった。一方、パケット収入は461億円増加、端末販売収入が357億円増加、その他収入が128億円増加したほか、通信設備使用料等が28億円減少し、974億円の利益が出たが、営業費用の増加が売上増を51億円上回った。進捗率は売上高が24.1%、営業利益が29.2%。
パケット収入は前年同期比で399億円(9%)の増加。音声収入が633億円(15.6%)減少しているが、落ち幅は想定より小さいという。当期の音声ARPUは440円減の1900円、パケットARPUは130円増の2750円で、総合ARPUは310円減の4570円だった。なお、これは月々サポートの割引の影響は含まない金額だ。今後もARPUの下落傾向は続く見通し。
加藤?氏は第1四半期の推移は「堅調」とコメントした。「パケット収入の向上、スマートフォン販売台数の拡大、新事業領域の拡大などで着実な成果を出せている。純増数や解約数では厳しい状況が続くが、ユーザーのセグメントに合わせた割引施策や家族セット割などを展開し、夏モデルも出そろうことでさらなる改善に手応えを感じている。クラウドを活用した新サービスの提供や、事業領域の拡大にはスピード感を持って取り組みたい。年間目標の達成に最大限の努力をしていく」(加藤氏)
総販売台数2380万台へ向けて順調な進捗、MNP転入数も改善
2012年度、ドコモは端末の総販売台数を2380万台と予想しているが、第1四半期の実績は517万台で、前年同期比11.2%増を実現しており、「手応えを感じている」と加藤氏。517万台のうち、スマートフォンの販売台数は249万台で、前年比で約2倍に上るという。夏モデルの販売が好調な7月も、販売数は順調に伸びており、7月26日現在で100万台を超えるスマートフォンを販売したとのこと。スマートフォン販売数の通期予想は1300万台で、力強く進捗していると自信を見せた。GfKの調査によると、量販店でのスマートフォン販売シェアは5割近くをドコモが占めている。2012年夏モデルの販売数は、「7月26日時点でおよそ83万台で、そのうちGALAXY S III SC-06Dが34万台に上る」(加藤氏)という。
ただ、第1四半期はPlayStation Vita向けに提供したプリペイド契約の期限切れによる影響が大きく、4〜6月の純増数は27万にとどまった。プリペイドデータプランの影響を除くと、40万の純増だったという。解約率は0.74%で、2011年度第4四半期の0.82%からは改善。プリペイドデータプラン解約の影響を除くと0.67%だった。MNPでの転出は、4月から月を追うごとに減少しており、第2四半期以降も夏モデルの販売を強化してさらなる改善を目指す。
新料金プラン投入でXiのすそ野を拡大、料金施策の認知度向上も図る
Xi対応スマートフォンが多数登場し、契約増に弾みが付いている第1四半期、Xiの契約数は332万にまで増加した。すでに7月22日には400万契約を突破しており、年度内に1000万契約を獲得するという期初の目標達成を目指す。基地局数は、現在およそ1万局ほどだが、2012年度末までに2万1000局まで増やし、エリアカバー率は約70%を達成する見通し。なお一部地方都市では下りの最大スループットを112.5Mbpsまで高速化する。
Xiユーザーのすそ野拡大を目指して、料金プランには新たに「Xiパケ・ホーダイ ライト」を10月1日から導入する予定だ。Xiパケ・ホーダイ ライトは、月間の通信量が3Gバイトを超えると、送受信の速度が最大128kbpsに制限されるが、それまでは月額4935円の固定料金でXiデータ通信が利用できるプランで、Xiパケ・ホーダイ フラットの5985円よりも1050円安い。高利用者ほどパケット通信を利用しない、中利用者向けの料金プランで、加藤氏は「結果的に増収につながる料金プランだと考えている」と話した。将来的にはフラットよりもライトの方が比率が増えると予想している。
そのほか、GALAXY S III SC-06DやARROWS X F-10Dのようなハイエンドモデルかららくらくスマートフォン F-12Dのような初心者向けモデルまで、幅広いラインアップをそろえたことから、家族でまとめて新機種を購入すると1回線あたり1万円を割引する「家族セット割」を8月31日まで提供し、端末の買い換えを促進。さらに世代や利用期間、利用形態に合わせてセグメントごとに用意したさまざまな割引施策の認知度を向上させ、純増数の拡大を図る。
このほか、クラウドサービスの拡充、ユーザー満足度の向上、安心・安全施策の強化、そして総合サービス企業への進化を引き続き目指していくとした。Wi-Fiアクセスポイントは2012年度12万から15万スポット程度へ拡大する計画で、一部にはXiを活用するが、なるべく光ファイバー回線を用いてオフロードを図る考えだと話した。
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