効率20%向上を狙う、5MWの軽量風車自然エネルギー(1/2 ページ)

日立製作所は2015年3月24日、国内最大級となる定格出力5MWの大型風力発電設備が茨城県神栖市に完成したと発表した。洋上風力に必要な大型化を実現しつつ、軽量化も兼ね備えた。風車の総合効率を20%高めることも可能だという。

» 2015年03月31日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
図1 太平洋に面した茨城県神栖市と設備

 日立製作所は2015年3月24日、国内最大級となる定格出力5MWの大型風力発電設備が完成したと発表した。2012年7月に開発着手し、2014年5月に建設を開始したもの。「鹿島港深芝風力発電所」(茨城県神栖市東和田)向けの「HTW5.0-126」初号機である(図1)。今後、試運転や性能評価後、2015年夏から、日立ウィンドパワーが商用運転を開始する予定だ。

 同機には4つの特徴がある。まず、出力を従来の2MWから2.5倍に高めた。次にシステム全体の軽量・小型化を進め、基礎工事などの費用低減を図った。さらに信頼性の向上も図る。最後に風車の総合効率を20%以上向上することを狙う。

 HTW5.0-126は、タワー高さが約90m、そこにブレードを3枚備えた直径126mのローターが載る。ローターの直径は2.5MW機の約1.5倍だ。最高点の高さは約150mに達する。これはあべのハルカス(大阪市、300m)やランドマークタワー(横浜市、296m)の半分に相当する高さだ。

 図2にHTW5.0-126の外観を示した。ダウンウインド型とよばれる方式を採っており、風下側にローターが来る。従来の2MW機から引き継いだ方式だ。暴風時にローターが横風を受けにくいため、風荷重を軽減できるという利点がある。発電を開始できる風速(カットイン風速)は4m/s、強風のため発電を停止する風速(カットアウト風速)は25m/sだ*1)

*1)IEC規格による風車クラス区分はClass S(年平均風速10m/s)。NEDOが公開する局所風況マップによれば、設置位置の地上高70mの年平均風速は約6m/sだ。

図2 出力5MWの風車「HTW5.0-126」の外観 出典:日立製作所

 設備の巨大化を進める理由は、洋上風力発電所を狙うため。今回の風車は陸上に設置されているものの、今後、大量に導入しようとしても陸上の立地は限られている。景観や騒音が問題になる場合もある。洋上であればこれらの問題から逃れやすい。

 その代わり、洋上に設置すると1基当たりの建設・運用費が高くなり、定期的な保守にも費用がかかる。費用の課題をクリアする手法が大型化だ。1基当たりの出力を高くすることで、出力当たりの建設・運用・保守のコストを引き下げる。

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