「人工光合成ハウス」実現へ、CO2を消費してエネルギー完全自給スマートハウス(1/2 ページ)

太陽光エネルギーを利用し、CO2を新たな燃料に変換する人工光合成技術。地球温暖化対策や新しいエネルギー利用の手法として注目が集まるこの技術を、住宅に応用する注目の実証実験が沖縄で始まる。太陽光エネルギーを利用してCO2と水から水素の燃料となるギ酸を生成・貯留する。ギ酸から水素を生み出し、住宅のエネルギーとして利用するという。

» 2017年07月13日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 戸建分譲住宅販売の飯田グループホールディングス(飯田GHD)は、大阪市立大学と共同で、世界初の人工光合成技術による「IG パーフェクトエコハウス」の実証実験を、2017年中に沖縄県宮古島で開始すると発表した。

 実験用IGパーフェクトエコハウスは、飯田GHDのグループ会社、飯田産業(東京都武蔵野市)が宮古島市で建設中の大規模リゾート計画地内に建てられており、この実証実験で、太陽光エネルギーから水素を作り出し、発電給湯を行う技術を確立し、2020年に「人工光合成技術による二酸化炭素消費型の新しい住宅」の完成を目指す。

宮古島市に計画中の大規模リゾート計画地(左)と「IG パーフェクトエコハウス」の完成イメージ(右) 出典:飯田GHD

 現在、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスによる環境汚染対策として、環境低負荷型エネルギー循環システムの実現や、温室効果ガスを有効エネルギーに変換するシステムの開発が求められている。その方法の1つとして注目されているのが、太陽光エネルギーを利用し、CO2を新たな燃料に変換する人工光合成技術だ。

 この技術を戸建住宅に活用するため、飯田GHDは2015年に大阪市立大学人工光合成研究センターに共同研究部門を設立。今回建設する同エコハウスの建設は、「CO2の排出量を削減する」住宅の省エネ化にとどまらず、この技術を活用した「CO2を消費する」住宅の供給実現に向けた第一歩と位置付ける。

 今回の研究はCO2から水素源となるギ酸を生成・貯蔵し、このギ酸から水素を生成して電気を作ることが実現できれば、新たな人工光合成の応用技術になると考え開始した。この人工光合成技術により、ギ酸から生成した水素で発電した電気で、家庭の消費電力の全てを賄えれば、環境に優しい未来住宅が実現できる可能性がある。飯田GHDでは「政府が促進するゼロエネルギーハウスより、更に高い目標レベルを見据えている」と積極的な姿勢をみせる。

 これまでも、太陽光エネルギーを利用してCO2と水からギ酸を生成する技術は研究されていた。しかし、その反応効率の向上や反応が溶液系に限られているなど、実用化に必要な課題が多く残されたままだった。

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