IoT(モノのインターネット)を活用したエネルギーサービスとして、業界外からも注目されている大阪ガスの“クラウドにつながるガス機器”。サービスを開発したきっかけやその狙い、エネルギー業界のIoT活用のポイントや課題について、大阪ガスのキーマンに聞いた。
電力自由化が始まり、エネルギー各社の顧客獲得に向けた取り組みが加速している。これまでにない市場競争の中で、エネルギーをフックに、消費者にどのようなサービスや価値を提供できるかが、競争の重要なポイントになりつつある。
そして、こうしたサービスや価値の提供に向け、エネルギー企業と消費者を“つなぐ”ための鍵として、IoT(モノのインターネット)の活用に注目が集まっている。一方で、IoTを具体的にどのように活用し、どういったビジネスモデルを描けば良いのかなど、課題も残る。
国内のエネルギー各社の中で、先行してIoTの活用を進めてきた1社が大阪ガスだ。同社の“クラウドにつながるガス機器”は、一般消費者向けIoT(モノのインターネット)サービスの成功事例として、エネルギー業界外からも注目を集めている。その開発を主導した大阪ガスの八木政彦氏に、エネルギービジネスにおけるIoT活用の課題と、その解決策を聞いた。
大阪ガスは2014年から、ガス機器とスマートフォンを接続・連携させるという、IoTの視点を取り入れたサービスを開始している。このサービスから始まる同社のIoTに関する取り組みにおいて、ビジネスモデルの構築やシステム開発について中心的な役割を担ったのが八木氏だ。
現在、同社のIoTサービスの中核を担っているのが、クラウドに接続可能な家庭用燃料電池「エネファーム」と高効率ガス給湯器「エコジョーズ」だ。2016年4月より販売を開始した新型「エネファームtype S」のリモコンにはWi-Fi接続機能が搭載されており、各家庭に設置されているルーターを経由して、Amazonが提供するクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」とエネファームを接続する仕組みを構築している。
これにより、顧客に対して外出先からの風呂・床暖房遠隔操作サービスや、発電量と電気使用状況が確認できる省エネナビゲーションサービス、機器状態を遠隔監視し故障時には同社から顧客に通知、修理手配を行う発電見守りサービスなどを提供できるようになった。これらのサービスは、顧客満足度の向上に大きく貢献しているという。
このように、「顧客の利便性向上」に寄与する点を特徴としたエネファームのIoTサービスだが、サービスを開発するきっかけとなったのは、「メンテナンス業務の効率化」のためだったという。新型エネファームには、10年間の無償メンテナンスサービスが付帯している。そのため、今後エネファームの設置台数が増加した場合、メンテナンス業務のさらなる効率化が求められることは明らかだった。そこで八木氏を中心とするチームが、IoTを活用したサービスの開発に着手。メンテナンス業務を担う部署と協力しながら開発を進めていった。
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