ボーイング787“ドリームライナー”は空の旅をどう変える?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/6 ページ)

» 2011年02月09日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

人々の「夢」が技術を進歩させる

 さて、ここまで787の技術面についてレポートしてきたが、気になるのは開発スケジュールの遅延だ。冒頭で触れた2009年12月の初フライトまでにも、すでに2年半近い遅れが出ている。当初は2009年第2四半期(4〜6月)に予定されていた初フライトが延期になった原因は、胴体側面部に発覚した強度不足だった。初フライト後、実用化に向けた飛行試験に移行してからも、エンジン不具合や胴体内部の配電盤の火災など相次ぐトラブルで作業がストップしている。結果、最終発表と思われていた「2011年第1四半期(1〜3月)」というANAへの1号機納入時期についても再度延期され、この1月に「初号機の納入は2011年第3四半期(7〜9月)」と修正されたことは前述した通りである。

飛行機と空と旅 製造ラインとしては世界最大の容積を誇るボーイングのエバレット工場

 たび重なる納入延期の発表を受け、一部マスコミの間では「夢の旅客機は夢で終わる」といった論調での厳しい意見もささやかれ始めた。夢の旅客機は夢で終わる? 果たしてそうだろうか。

 私はそうは思わない。新しい旅客機を誕生させる難しさは、もちろん私も知っている。鉄道車両などもそうだが、多くの旅客を乗せて運ぶ輸送機械の開発では「経験工学」が重視され、長年の歴史の中で一つずつ実績を積み重ねてきた技術をリスクを負ってまで安易に変えることは難しい。つまり「安全」が大命題となる輸送機械は、新しい技術の導入がなかなか進まない分野なのだ。

 かといって、現状に満足しているだけでは進歩はない。787は機体の約50%にカーボンファイバー複合材を使用するなど、これまでにない画期的な旅客機である。その完成に至るまでには当然、多くの苦労がともなうだろう。が、技術の進歩は常に人々の「夢」がベースになってきたことも事実。そして夢を実現させた先には、次に述べるような新しい未来が待っている。

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