空の上に8席限定のレストラン――ファーストクラスのメニューに新生JALの本気を見た(4/4 ページ)

» 2011年10月31日 08時20分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
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 メインディッシュ3種はいずれも、味だけでなく盛りつけが非常に美しいのも印象的だった。写真を撮りそびれた「和牛のフィレステーキ」はステーキとフォアグラ、リンゴのソテーがハンバーガーのように高く積んであり、鮮やかな赤いリボンのような、揚げたビーツが散らしてある。見た目も味も驚いたのが「メカジキの味噌柚庵仕立て舞茸とともに ふわふわに削ったナッツとパルメジャーノ・レジャーノを散りばめて」。味としては、西京漬けのメカジキをソテーして、白味噌とユズのソースをかけたものを思い浮かべていただくと近いと思う。ここにパルミジャーノ・レジャーノ(チーズ)とマカデミアナッツを削って上からふんわりとかぶせてある。和食がベースになっている魚料理なのだが、おどろくほど華やかな味なのだ。

「メカジキの味噌柚庵仕立て舞茸とともに ふわふわに削ったナッツとパルメジャーノ・レジャーノを散りばめて」。見た目、何の料理なのかまったく分からない

 これらの料理の盛りつけも、キャビンアテンダントが機内で行っている。山本シェフは新メニューを考案するたびに自らが料理を盛りつけるようすを動画に撮り、キャビンアテンダントはそれを見て練習する。機内でもこの動画が繰り返し流れているのだそうだ。

温かいタルト+冷たいアイスの組み合わせ

 デザートは「焼きたて温かなジンジャーオレンジのタルト ココナッツとヨーグルトのアイスクリームを添えて」。山本シェフは普段から、「温かいタルト+冷たいアイス」をデザートの基本形にしているのだという。冬なのでかんきつ類を使いたかったこと、オレンジとヨーグルトとココナッツのカクテルがおいしかったので、デザートに仕立て直してみた結果、この形になったそうだ。

デザートはサクサクの温かいタルトと、ココナッツ味のヨーグルトアイスの組み合わせ。飛行機の中でこれが食べられるというのもすごい話
左からシャンパーニュ・サロン社長のデディエ・ドゥポン氏、JAL 商品・サービス開発部マネージャーの田中誠二氏、「龍吟」山本征治シェフ

 JALのファーストクラス用メニューは、前菜からパン、メイン、デザートに至るまで驚きの連続だった。「機内食」という概念を壊す料理の数々は、味が良いだけでなくさまざまなアイデアにあふれており、フレンチレストランでもなかなかこれだけのコースはないと思う。冒頭に書いたとおり、山本シェフは日本料理の料理人であり、彼の店である龍吟に行ってもこの料理は食べられないのだ。「ここでしか味わえない料理を出す」という、JALと山本シェフの狙いが見事に実現されており、ひたすら驚くばかりだった。

 ……とはいえ、ファーストクラスに乗る機会など、筆者にはおそらく一生に一度あるかないかだと思われる。「ここでしか味わえない料理」の片鱗として、オリジナルのパンだけでも通信販売してくれたら、ファーストクラスに乗れない庶民も楽しいだろうなあ……などと思いながら「龍吟」を後にしたのだった。

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