ぼんやりと車窓を眺めつつ、ときどき居眠り。目を開ければ非日常な景色……そんな旅は意外と近くにある。今回は、茨城県の鹿島臨海鉄道に乗ってみた。東京から快速列車で約2時間の鹿島神宮から水戸へ北上する。神社、湖、2つの塔。ロールプレイングゲームのようなキーワードを、赤いディーゼルカーが結んでいる。
茨城県は郷愁を誘うローカル私鉄がいくつかあった。そのうち日立電鉄と鹿島鉄道は廃止されてしまったが、茨城交通は第三セクターとして再生し、ひたちなか海浜鉄道として生まれ変わった。鹿島臨海鉄道は臨海工業地帯の貨物輸送が主力で揺るぎない存在だ。しかし、これら2つの鉄道は東日本大震災で線路が被災してしまった。関係者の痛み、地域の悲しみ。そこから沸き立つ復旧工事の明るい知らせ。全線復旧したら再訪しようと心に誓った。大洗鹿島線の復旧は7月。その1カ月後の8月に、大洗鹿島線を旅した。鉄道だからできる旅って何だろう。そんなことをぼんやりと考えながら。
鹿島神宮駅からゆるい坂道を上り、てくてく歩いて行くと参道に出る。道路にひび割れが少しあるくらいで、店も開いていた。平日の参道は普段と変わりなく落ち着いているように見えた。汽車が運ぶレストラン、というガラス張りの店があって惹かれたけれど、お昼ごはんは食べちゃったんだよな……。
神宮の入り口はなにやら工事中の様子。小さな木を植え、四角く囲み、しめ飾りがしつらえられている。これは何かと尋ねたら、鳥居の復旧工事とのこと。あ、そういえば神社につきものの鳥居がない。大地震のときに倒れてしまったそうだ。しかし、鹿島神宮界隈で大きな被害と言えばこの鳥居だけで、厄災をすべて引き受けてくれたという話である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング