第57鉄 2つの塔でパノラマくらべ――鹿島臨海鉄道でRPG(?)な旅杉山淳一の +R Style(2/5 ページ)

» 2012年03月19日 10時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 鹿島神宮の祭神は武甕槌神(たけみかづち)。武神、軍神として信仰されているという。香取神社の祭神、経津主神(ふつぬしのかみ)とは東国平定の戦友だそうで。するとJR鹿島線は神々の前線基地。大洗鹿島線は東国遠征の進軍ルートに当たるかもしれない。

 さらに北に常磐線の大甕(おおみか)という駅があって、いまはなき日立電鉄の乗換駅だった。大甕って珍しい地名だなと調べてみたら、付近の大甕神社が由来という。大甕には土着神の甕星香々背男(ほしのかがせお)がいて、神々の日本平定に最後まで抵抗したという。その甕星香々背男と戦った神様が鹿島神宮の武甕槌神と香取神社の経津主神だった。

 ところが武甕槌神と経津主神の力を持ってしても甕星香々背男は征服できず、建葉槌命(たけはづち)が乗り出して制圧した。建葉槌命は天岩戸に籠もった天照大神を誘うために織物を作った神様。大甕神社は建葉槌命を祀っていて、甕星香々背男は大甕神社の宿魂石に封じられた。

 鹿島が大震災で大きな被害にならなかった理由は、武甕槌神(たけみかづち)が甕星香々背男の復活と思い込み、必死に抵抗したからではないか……などと想いをはせてみる。神社って観光地の1つだと思ってしまいがちだが、調べると奥が深い。

 さて、駅に戻って旅を始めようか。

赤いディーゼルカーで出発!

ちょうじゃがはましおさいはまなすこうえんまえ、で降りる

 鹿島神宮駅はJR鹿島線と鹿島臨海鉄道線の乗換駅。本当は隣の鹿島サッカースタジアム駅がJRと鹿島臨海鉄道の境界で、鹿島臨海鉄道が1区間だけJR線に乗り入れている。ちなみに鹿島サッカースタジアム駅は境界駅なのに臨時扱い駅で、スタジアムでイベントがない日は全列車が通過してしまう。そして今日も通過。スタジアムの威容もするっと遠ざかってしまった。

境界の鹿島サッカースタジアム駅を通過

 さて、大洗鹿島線は鹿島サッカースタジアム駅から水戸駅までの53kmを結ぶ路線だ。もともと国鉄の路線となるはずだったのが、建設中に国鉄の赤字が問題になってしまい引き受けられなかった。そこで臨海部の貨物線を運行していた第三セクターの鹿島臨海鉄道が引き継いだ。国鉄向けで重量貨物対応の高規格線路を、赤いディーゼルカーが1両または2両連結で走る。のんびりとローカル線といっても、線路がいいから揺れも少なく、速度も速い。そのせいか日中でも利用客が多く、クロスシートはどこも1人か2人座っている。

 この路線の名物の1つは「日本一長い駅名」だ。鹿島サッカースタジアムも長いけれど、2つ隣は「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前」。音数で日本一、文字数では2番目に長い。ちなみに文字数も含めた日本一は九州の南阿蘇鉄道にある「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」となる。「長い」「日本一」という話題作りのための駅名で、かつてはもっと長い駅名もあった。長い名前など後出しで作れるわけで、どうでもいい。でも、はまなす公園というからには見どころがありそうで降りてみた。

日本一長い駅名……長い

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.