シムドライブのEV「SIM-CEL」、「突き抜ける加速感」でクルマの魅力を追求(2/4 ページ)

» 2013年04月01日 12時54分 公開
[朴尚洙,MONOist]

最適化された水滴形状からデザインを起こす

 2人乗りEVであるSIM-CELは、外形寸法が4840×1830×1400ミリ(全長×全幅×全高)、車両重量が1580キロ。これまでのSIM-LEI、SIM-WILと同様に、4つの車輪それぞれに走行用モーター組み込むインホイールモータータイプのEVとなっている。2次電池パックやインバータなどモーター以外の電動システムを、車両の床下のフレーム部に組み込むコンポーネントビルトイン式フレームを採用している点でも同じだ。

 SIM-CELの開発でこれまでと大幅に異なる点は、空力性能を突き詰めるために採用したデザイン手法、ボディ素材の樹脂材料への置き換えによる軽量化、「突き抜ける加速感」(清水氏)を実現するためのインホイールモーターの改良、そしてスマート・トランスポーテーションの4つに集約される。

 デザイン手法では、車両デザインから空力特性を最適化するのではなく、空力特性を最適化した水滴形状の原理モデルを基に車両デザインを進める「理論空力造形」を採用した。市販車両のCd値が0.35〜0.45であるのに対して、SIM-CELのCd値は0.2未満を目標に据えた。最終的には0.199というCd値を実現することができた。

SIM-CELSIM-CEL 「SIM-CEL」のデザインに採用した「理論空力造形」の概要。(左)一番上が原理モデルで、そこからデザインベースになった空力モデルにする。(右)最終的なデザインフリーズモデルが示されている(出典:シムドライブ)

 0.199というCd値を実現する上で鍵になったのが、車両後部の波型のギザギザ形状である「シェブロンスポイラー」である。このシェブロンスポイラーにより、車体表面付近に小さな渦が発生し、その小さな渦が車両後方に流れる空気流を「ポニーテールのようにまとめる」(シムドライブ)効果がある。さらに、車体後部に正圧を発生させているので、Cd値の低減に大きく貢献しているという。

SIM-CELSIM-CEL (左)「SIM-CEL」の車両後部に施されている「シェブロンスポイラー」(右)シェブロンスポイラーによる空力特性向上効果を示している(出典:シムドライブ)

ボディ素材にCFRPを全面採用

 SIM-LEIやSIM-WILの場合、アッパーボディはスチール製のモノコックフレームだった。SIM-CELでは、これをCFRPに置き換えることで、大幅な軽量化を図っている。後輪を覆うスパッツに用いた植物由来樹脂を除き、全面的にCFRPを採用した。これにより、同じボディをスチールで製造した場合と比べて、79キロもの軽量化を実現できたという。

SIM-CELSIM-CEL (左)「SIM-CEL」のアッパーボディに採用した樹脂の種類。ほとんどがCFRPである。(右)CFRPの採用による軽量化効果(出典:シムドライブ)

 一方、車体構造部品については、SIM-LEIやSIM-WILと同様に、樹脂ではなくスチールを用いている。ただし、軽量化が可能なパイプ構造のハイドロフォーム成形で製造した部品の使用量を増やすことでさらなる軽量化につなげている。この他にも、サスペンションの構造部品の一部をアルミニウム製に置き換えるなど、さまざまな軽量化のための工夫を施した。

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