カーニバル・イマジネーション号は3日目の午後早く、メキシコ南部のコズメル島に寄港した。夜10時の出航まで、ここで9時間ほど停泊する。私たちはマヤ文明の遺跡で知られるトゥルムをフェリーとバスで訪ねるツアーに参加することにした。
クルーズ船を降りて、桟橋を300メートルほど移動。指定された青と黄色のフェリーに乗り込んで、空いていそうな船室に席をとる。すると、同じ船室に遅れて入ってきたのが、おそろいの真っ赤なTシャツを着た25名ほどのグループだった。キューバのハバナからカリブ海クルーズに参加していた旅行者たちだ。
何が面白いのか、席に着くなりゲラゲラ、ギャーギャーと大騒ぎが始まる。誰かがひと言しゃべると、全員でギャーハッハッハ! 他の仲間が言葉を返すと、それに反応してまたギャーハッハッハ! そのうち、私の向かいに座ったでっぷりした女性が「どちらからですか?」と訊いてきた。
私が「東京から」と答えると、全員でいっせいにギャーハッハッハ! クルーズは楽しんでいますか? その質問に「もちろん」と返すと、また声をそろえてギャーハッハッハ!
「ハバナには来たことある?」
「あるよ、ずっーと前に、1回だけ」と私。「すごく楽しかったのを覚えている。また行きたいな」
すると隣の、私の5倍くらい身体の大きい男性が立ち上がって「おい、聞いたか? この人、またハバナに来たいって」と大きな声を出し、そうして船室が壊れそうな怒号に近い笑い声でギャーハッハッハ!
40分後、フェリーはユカタン半島の船着き場に到着した。そこからは3台のバスに分かれて、遺跡に向かう。キューバ人のグループとは、残念ながら私たちは別のバスに。あいつら、どのバスに乗っているのかな? そう思って窓を開けると、1台うしろのバスから「ギャーハッハッハ!」という地響きのような声が漏れていた。
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