羽田発、碧きカリブの優雅な休日秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(6/6 ページ)

» 2013年05月17日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]
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老夫妻との交流で生涯忘れられない旅に

飛行機と空と旅 窓のあるゆったりサイズの個室

 4日目は終日、船上で過ごし、5日目の朝を迎えた。朝6時。クルーズ船はあと2時間でマイアミ港に帰港する。私たちは最終日のカリブ海の日の出と、港への接岸の様子を撮影するため、最上階のデッキに出ていた。楽しかった5日間に別れを告げるに相応しい、見事な朝焼けだ。

 マイアミ港の桟橋が見えてきたとき、背中から「あら、おはよう!」と声をかけられた。出航時に同じこのデッキで会った、ニューヨークからのマグワイア夫妻だ。夫妻とは5日間のクルーズでときどき顔を合わせ、朝食をともにしたり、ディナーショーで同じテーブルを囲んだ。

 「娘さん、お迎えに来ていますかね」

 「もちろんよ」と夫人は言った。「今日は孫たちも連れて、家族で来てくれるって言ってたわ。あ、ほらほら、ターミナルの左側にいる4人連れ──」

 指差された方向に視線を合わせると、若い夫婦の横で小学生くらいの女の子二人が船に向かって手を振っていた。

 「いい旅になりましたね」

 「ええ、本当に。一生忘れないわ。澄んだ海も、青い空も、そしてあなたたちと出会ったこともね」

 そう言ってやさしく手を差し伸べるマグワイア夫人の手を、何のためらいもなく握り返す。その瞬間、カリブ海クルーズがこれで終わってしまうことに淋しさを覚え、そして私たちにとっても生涯忘れられない旅になった。

飛行機と空と旅飛行機と空と旅 (左)デッキチェアで日光浴を楽しむ人たち(右)若いカップルの乗客も意外に多い
飛行機と空と旅 4泊5日の旅を終えて再びマイアミ港へ

著者プロフィール:秋本俊二

著者近影 著者近影(米国シアトル・ボーイング社にて)

 作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。

 著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。

 Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。


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