ここで、ボーイングの最新鋭中型機787の主翼構造についても触れておきたい。
先日、その787で成田から米国へ飛んだときのことである。離陸後しばらくして、私の横に座っていたカメラマンが「飛行機に乗っていることを忘れてしまいそうですね」とつぶやいた。彼がそう感じたのは、揺れがほとんど伝わってこなかったからだ。
周囲からも「気流が安定しているのかな?」「今日は天気がいいからね」といったやりとりが聞こえてくる。しかし、スムーズな飛行について自分なりに理由づけをしていた人たちが、あまりにも揺れが少ないことにやがて疑問を持ち始めた。気流が安定しているからではなく、これはもしかしてボーイング787だからなのか──と。
飛行中は揚力を発生させる主翼は上方向に、反対にボディは下方向に引っ張られる力が働くため、主翼には可能な限りしなやかな構造が求められることは前述したとおりだ。787は従来機で使用していたアルミ合金に代わり、強くて軽い炭素繊維複合材がボディや主翼の素材として採用された。細かな金属パーツをつなぎ合わるのではなく、大きな1枚板で主翼が構成され、しなやかさがより増している。上空で気流の悪いエリアを通過するときは、その柔軟な動きで影響を抑え、キャビンの乗客には不快が揺れを届かなくすることに成功したのである。
フライト中の787は、主翼の両端が上に反り返って、じつに優雅で滑らかな曲線を描き出す。そのシルエットは他の機種には類を見ない美しさがあり、空港の展望デッキなどに見学に来ていた人から思わず「かっこいい!」という声が漏れることも珍しくない。
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