JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――第2回「個室型フルフラットシート」秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/5 ページ)

» 2014年08月29日 08時45分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

ドイツで遭遇したFクラスシートがヒントに

JAL顧客マーケティング本部・商品サービス開発部の企画グループマネジャー、藤島浩一郎氏

――快適でしたよ、新しい「SKY SUITE 777」。私が体験したのは成田からのニューヨーク線ですが、フライト時間が長ければ長いほど、シートの良さが伝わってきますね。

藤島: おかげさまで、ご利用いただいた多くのお客さまから同様な感想が届いています。ロングフライトを終えると、普通はみなさんホッとされた表情で降りていかれますが、このシートならもう少し長く乗っていたかったと。そんなふうに言ってくださるお客さまが少なくありません。

――それ、画期的なことだと思いますよ。目的地に着いてからが旅ではない。旅は、出発地の空港のゲートをくぐった瞬間から始まっている。それが私の持論ですが、あのシートなら長時間の移動も苦痛にならず、フライトそのものが楽しくなります。

藤島: ありがとうございます。苦労したかいがありました(笑)。

進行方向右手の窓側席でニューヨークまでのフライトを体験(撮影:倉谷清文)

――新シートの構想は、いつごろから持っていたのですか?

藤島: 構想が具体化したのは、2009年ですね。その何年か前から、毎年ドイツのハンブルクで開かれるエアラインエキスポ(航空機の内装展示会)を視察してきました。2009年に米国のB/Eエアロスペースが展示していたファーストクラス用のシートがヒントになっています。

――ファーストクラスのシート、ですか?

藤島: そうです。これを改良してビジネスクラスに載せられないか、と。実現すれば、JALだけの1ランク上のサービスが提供できると確信しました。

――ずいぶん思い切った着想ですね。

藤島: 当時、JALが777のビジネスクラスに搭載していたのは、180度水平ではなく少し斜めに平らになるライフラット※というタイプのものでした。一方、海外ではヨーロッパ系を中心に、フルフラット化がどんどん進んでいた時代です。JALは今のシートで勝負できるのだろうかという危機感は、常にありましたね。その頃に出会ったのが、B/Eエアロスペースのファーストクラスシートだったんです。

シートサイドの可動式スクリーンを上げると完全な個室に(撮影:倉谷清文)
※ライフラットシート……シート面は水平(フラット)になるが、シートの角度は床に対して斜めになるタイプのシートのこと。フルフラットシートはシート面が床に対して完全に水平になるシートを指す。(注:編集部)

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