――しかし藤島さんが新シートの構想を温めていた時期は、会社の雲行きが怪しくなる頃と重なっていたのでは?
藤島: 日に日に募っていましたね。うちの会社はどうなってしまうんだろう、という不安が。その一方で、マーケティングの立場からはJALのプロダクトが他社に比べてかなり遅れていると感じていましたし、会社の置かれた状況を考えると遅れはどんどん拡大していくのではないかという恐怖感もありました。
――実際、藤島さんが描いていたフルフラットシートの構想も、2010年の経営破たんで中断してしまうわけですよね。
藤島: はい。ですが、諦めたことは一度もありません。各社はどんどん新しいシートを発表していましたし、JALが再起に向けて取り組みを開始したときは、フルフラットは世界の常識になりつつありました。そこで勝負するには、単なるフルフラットであるという以上の魅力を打ち出さなければならない。そう確信していました。
――再建に向けてJALが新体制になり、経営陣から新しいシートの開発にゴーサインが出たわけですが、構想を具体的な形にするプロセスでは苦労も大きかったのでは?
藤島: 丸3年を要しました。海外出張のときは必ず他社のフライトを利用し、とくにフルフラットシートについては全社体験したと思います。そうして得た情報や、市場調査の結果も合わせながら、構想を具体的に固めていきました。
――ファーストクラス用に考案されたシートを、777のビジネスクラスのキャビンにレイアウトする。それだけでも大変な作業だったと思いますが、まずは図面から起こしていくわけですか?
藤島: 最初のステップとしては、図面化ですね。展示会で発表されていたものを、そのまま持ってきても777のキャビンに必要な数は収まりません。横幅、高さともにスペースが限られていますから。そこに、横一列を“2-3-2”という配置でシートを置いていくには、どう改良すれば可能になるか。それを、まずは図面で検証していきました。
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