ボーイング787“ドリームライナー”は空の旅をどう変える?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(6/6 ページ)
開発の遅れが懸念されていた次世代機787について、ボーイングは今年1月に「初号機納入は2011年第3四半期(7〜9月)」と発表した。1号機を受領するのはANAだ。スケジュール通りに進行すれば、いよいよ年内にも日本の空でデビューすることになる。787は、これからの空の旅をどう変えるのか?
CAも待ち望む“人に優しい”快適環境
キャビンの天井も同サイズの中型機に比べて20センチほど高くなり、頭上の荷物入れには大きめのバッグが縦に3個並べて収納できるようになった。室内照明にはLED光を採用し、昼間や夜の時間帯のイメージに合わせて赤、青、オレンジなどに調整できるのもユニークだ。またトイレには、787の最初の顧客であるANAの要望を取り入れ、温水洗浄便座が装備されている。
機体をカーボンファイバー複合材で構成したことで、“人に優しい”機内環境も実現した。旅客機が一番嫌うのは水分だ。目に見えないところで水滴がたまったり結露があると、従来の金属製の旅客機ではそれが機体の錆びや腐食につながってしまう。そのため、機内の空気は水分除去装置を通してから送り込み、客室内は常にカラカラに渇いた状態にせざるを得なかった。長時間フライトでは咽を痛める人も多かったのではないか。その点、耐腐食性にも優れたカーボンファイバー複合材でつくった機体なら、室内の湿度を自在にコントロールすることができる。
「キャビンがいつも乾燥していることは、私たち乗務員にとっても辛いことでした。お化粧が渇きやすく、肌のケアが大変で……」と話していたのは、中東系エアラインに勤務するベテランCAだ。「787は機内環境を飛躍的に向上させることができる機体だと聞いています。就航が具体的に決まれば、きっと乗務希望者が殺到するでしょうね」
787への期待は、客室乗務員たちの間でも高まっているようだ。ボーイングが発表した「2011年第3四半期」にANAに1号機が納入されれば、初就航は今年末にも実現する。その際にはまっ先に搭乗取材し、新しい空の旅の体験レポートという形でこの連載で改めて報告したい。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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