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コラム
» 2004年11月26日 00時00分 公開

医薬品研究開発における電子データ管理ソリューションITソリューションフロンティア:ソリューション

日本の医薬品研究開発におけるデータの管理は、規制の関係から依然として「紙」で管理されている。一方、欧米では電子記録による管理が制度面からも認められている。本稿では、医薬品研究開発の生産性や品質の向上を可能にする電子データ管理ソリューション「NuGenesis Scientific Data Management System」(以後、NuGenesis SDMS)について紹介する。

[瀬川真司,野村総合研究所]

紙によるデータ管理の問題

 日本の医薬品研究開発の現場では、実験・分析対象の拡大と新薬開発技術や分析機器の高度化が進んでいる。しかしその一方で、実験内容や分析結果に関する資料は相変わらず紙の状態で管理されるという、アンバランスな状態が続いている。その結果、次のような問題が深刻化してきている。

(1)高性能の分析機器や高度なソフトウェアを使いながらも、その結果は手作業で紙に転記されるため、転記が正しく行われたか第三者がチェックしたり、紙のクロマトグラム(色層分析の結果出力)をスキャンしてレポートに添付するなど、手作業の負担が増大している。

(2)分析結果の提出には、数桁の数字を何十、何百と転記することが必要であり、研究者に「転記ミスをしてはいけない」という不要なストレスを強いる。

(3)紙の文書で過去の膨大な記録を遡るのは非常に時間がかかる。また、紙の状態で保管するためには膨大なスペースが必要となる。

(4)スキャンや転記という作業が全体の作業時間に占める割合が高く、研究者の本来の業務(創造的な高付加価値業務)に時間を割くことができなくなっている。

 このように、その不都合が認識されているにもかかわらず相変わらず紙での管理が続いている背景としては、日本では厚生労働省が紙以外の生データを認めていないという事情がある。

電子記録・電子申請をめぐる内外の動向

 米国では「21CFR Part 11」(以後、Part 11)という電子記録・電子署名に関する規制条例が1997年8月から施行されている。

 Part11は、従来の紙による記録や手書きの署名に代えて、電子記録・電子署名を使用する場合の要件を定めたものである。Part 11の定める要件を満たせば、紙での記録や手書きの署名を電子化したものが公的な文書として認められる。それは、医薬品研究開発の生産性を向上させるだけでなく、新薬の市場投入をスピードアップさせるというというきわめて重要な意味をもっている。そのため、世界最大の医薬品市場である米国のPart 11への対応は、欧米製薬企業のみならず、日本の製薬企業、とくに米国での販売や欧米製薬企業と提携している企業にとっても最重要テーマとなっている。

 日本でも、2003年6月に「医薬品等の承認又は許可に係る申請に関する電磁的記録・電子署名利用のための指針(案)」が公表された。さらに、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)で合意された、電子媒体による医薬品承認申請の国際共通化資料「eCTD(電子化コモンテクニカルドキュメント)」に沿った医薬品承認申請が、2005年4 月から受け付けられることになっている。これを契機に、日本においても医薬品の研究開発・申請業務の電子化対応が本格的に進展していくことが期待される。

電子データ管理ソリューション「NuGenesis SDMS」

 野村総合研究所(以後、NRI)では、このような製薬業界をめぐる環境変化を背景に、そのニーズに応えるため、「NuGenesis SDMS」を活用した電子データ管理ソリューションを提供している。NuGenesis SDMSは、欧米の製薬企業を中心に全世界で300社、500研究所、30,000ユーザに利用されており、電子データ管理ソリューションのデファクトスタンダード(事実上の標準)とも呼べるものである。

 NuGenesis SDMSのおもな特徴は以下のとおりである。

(1)分析機器からの印刷データと測定結果データ双方をデータベースで一元管理。

(2)印刷データと電子生データに対する自動索引付けにより、さまざまな検索が高速で可能。

(3)機種やメーカーに依存せず、あらゆる分析機器を接続可能。

(4)Part 11に対応した監査証跡機能や電子署名機能を搭載。

(5)印刷データから、文字・数値・グラフィックをデータとして再利用可能。

(6)電子生データの収集・保存・バックアップを自動化。

(7)印刷データ・電子生データを自席のPCから参照可能。

(8)他システムとの連携機能、定型業務自動化ツールの開発が可能。

 NRIでは、NuGenesis SDMS導入評価検討のために試用環境を提供している。ある製薬企業の代謝研究業務では、分析準備・分析結果整理・レポートとりまとめの作業を自動化することで、1 試験あたりの所要時間が約1/3(35.5時間→11.9時間)に削減された。さらに、業務の効率化にとどまらず、転記ミスがなくなることによるデータ品質の向上や、研究者が本来業務に専念できることなどにより、一段と密度の濃い研究開発が可能になるという効果も無視できない。

 このような電子データ管理ソリューションが、医薬品研究開発の「紙」から「電子」へのパラダイムシフトを進行させるものと思われる。

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