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コラム
» 2005年02月18日 00時00分 公開

中国統括会社のあり方についてITソリューションフロンティア:海外便り

「世界の工場」のみならず、「将来の巨大市場」として企業が位置付ける中国。これを受けて、近時、在中国の日本企業の間で、中国における統括会社の位置付けや機能のあり方についての議論が活発化している。本稿では、いま、なぜ中国統括会社なのかという背景の分析と、望まれる統括会社のあり方について、事例を踏まえつつ考察する。

[野中利明,野村総合研究所]

高まる中国統括会社の重要性

 中国統括会社とは、中国に進出した自社の複数の事業会社を取りまとめる会社のことであり、一般に中国本社として位置付けられることが多い。この統括会社には、各事業会社に投資を行う投資性公司(傘型企業)と、投資は行わないが管理・統括のみを行うケースとがある。

 従来、日本の大手企業の中国進出は、日本本社の各事業部が、必要に応じて中国に会社を設立し、個別に事業を進めるケースが多かった。加えて、中国には、他の地域への支店開設や、生産内容や営業範囲の変更・拡大などに依然として制限が多く、地域ごと、生産内容ごとに会社を設立しなければならなかったという事情も存在した。なかには、中国における事業会社が50を超えるという企業もある。

 こうした経緯から、従来、中国に進出した各事業会社間の連携は、ほとんど行われていなかったのが実態であった。しかし、ここにきて、これらの中国事業会社を取りまとめる統括会社に対する意識が高まってきている。その理由として、おもに以下の点があげられる。

 第一に、従来の、各事業会社間の連携が不十分な状態では、相互の機能補完が図れず、事業の重複などの無駄が多かったことである。中国におけるグループ全体としての事業最適化を進める必要性が高まってきたと言うことができる。

 第二に、各事業会社が、中国の各地域ごとに、グループとして一貫性のない広告、販促活動を行ってきたために、ブランドイメージ、企業イメージが育たず、販売も十分に伸びないといった問題が出てきたことである。

 そして第三に、欧米企業や一部の韓国企業のなかに、中国統括会社の機能をうまく活用し、中国国内での業績を着実に伸ばし、かつ高い企業イメージ、ブランドイメージを確立したケースがみられるようになったことである。こうした成功事例が、日本企業に中国事業のマネジメントのあり方を再考させる契機となっていることは間違いない。

 第四に、中国の反日感情に由来するトラブルがここ数年来、頻発していること。この類のリスクへの対応を、グループ全体としてマネジメントする必要に迫られている。

位置付けや権限の明確化が求められる

 日本企業にとって、中国が輸出製品の製造拠点として位置付けられていた時代においては、こうした問題がクローズアップされることは少なかった。しかし、中国国内市場への本格的な参入を図る上ではこうした問題への取り組みが不可避である。

 現在までのところ、統括会社を十分に機能させている日本企業は少数である。統括会社をうまく活かせない企業に共通するのは、統括会社は設立したものの、その位置付けや権限を明確にしないまま事業を進めているという点であろう。

 結果として、各事業会社の適切な管理ができず、シェアードサービスレベルの業務を行うに留まっている。各事業会社はそれぞれ目先の事業目標に追われているのが実情であり、中国事業全体の視点から、設計・製造・販売など各機能の最適化を図るためには、統括会社が中国事業を取りまとめ、管理することが必要になってくる。

統括会社のあり方は企業の中国戦略による

 統括会社をうまく機能させるには、統括機能について、どこまで権限を委譲するかが大きなカギを握る。統括会社に何ら権限が与えられなければ、日本企業は事業部制による縦割りの意思決定の流れが強いため、統括会社が現場レベルのみで工夫を凝らしたところで、おのずと限界があろう。

 韓国の電機メーカーであるサムスン社は、中国統括会社を韓国本社に次ぐ、第二本社と位置付け、思い切った権限委譲を進めている。現地で迅速な意思決定ができるよう、本社の副会長クラスをトップに据えるなど、本社人材リソースの大胆な投入を行っている。こうした権限委譲の事例は、中国統括会社の位置付けを考える上で大いに参考になるだろう。

 ごく最近、上海に投資性公司を設立した日本企業がある。日本および欧米市場での大幅な事業の成長が望めないなか、中国市場を最重要と位置付けた上で、現地側で迅速に意思決定ができる組織体制づくりが必要と判断したためである。各事業会社が取り決めた業務計画を集約するだけでは、中国市場での大きな飛躍はままならない。中国事業全体の目標を明確にし、それを達成するために、権限のある拠点として投資性公司を設置したわけである。

 結局のところ、統括会社のあるべき姿の議論は、当該企業が中国市場の重要度をどのように位置付けるかということと無縁ではない。この点をあいまいにしたまま、統括会社がもつべき機能を議論しても、意味のないものとなってしまう。

 中国市場において大きな成功を目指すのであれば、日本本社が統括会社の位置付けを明確に示し、統括会社に中国の各事業会社を取りまとめ・指揮できるだけの権限委譲と人材などのリソース投入を進め、現地で的確な意思決定のできる体制づくりを行うことが重要となろう。

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