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コラム
» 2005年05月26日 00時00分 公開

大学経営を変える「リアルタイム授業評価システム」特集:CRMの新たな視点とソリューション(1/2 ページ)

野村総合研究所(以後、NRI)が開発した「リアルタイム授業評価システム」は、携帯電話を使った授業評価によって、学校経営および教育現場に変革を促すことを狙いとしたものである。本稿では、本システムの導入事例を紹介するとともに、その仕組みの有効性と今後の可能性について考察する。

[鈴村賢治,野村総合研究所]

顧客視点に立った学校経営という発想

 今日、大学や短大の経営を取り巻く環境は激変している。

 少子化などにより、2004年度には大学の4 校に1 校で志願者数が定員数を下回った。さらに2007年度には、大学・短大の志願者数と入学者数が一致すると言われており、進学を希望すれば誰もが大学・短大に進学できるという「大学全入時代」は間近に迫っている。すでに、大学は学生を「選ぶ」立場から「選ばれる」立場に変わってきており、それぞれの大学が、教育および研究内容の質を問われてきている。また、大学教育の活性化を目的とした大学間の競争制度も導入されている。

 そのため多くの大学・短大は、学生の確保と教育の質の向上に対し、強い危機感を抱くようになっている。たとえば、これからの大学は、国際競争力を支える、個性的で多様な人材の育成を果たせる存在へと変貌していかなければ、もはや生き残ることは難しいとさえ言われている。

 2004年12月に、日本経済新聞社が全国の国公私立大学の学長を対象に行った「全学長アンケート」の結果によれば、大学の経営課題として、「大学の特色の明確化」がトップにあげられている(61.1%)。そのために欠かせない「教職員の意識改革」と「教育カリキュラムの改革」も緊急の課題となっている(『日本経済新聞』2005年1月8日)。

 こうした課題に対して、日々の授業やカリキュラムの改善のため、学生のニーズを早い段階でとらえようとする取り組みにすでに着手する大学も出てきた。

 すなわち、「学生=顧客」「授業=商品」ととらえ、商品(=授業)の売れ筋(=学生ニーズ)を把握し、品揃え(=カリキュラム)の継続的な拡充を行っていくために、「学生の声」に着目した授業評価を行っている。

 このために、NRIは、この大学の「リアルタイム授業評価システム」の構築を行った。これは、携帯サイトでアンケートを実施・回収するもので、「学生の声」を含む授業評価結果を教職員にリアルタイムでフィードバックできるシステムである(図1参照)。NRIの「TRUE TELLER」によるテキストマイニングシステム(テキストのデータ解析システム)をシステムの核としており、「今後の授業の改善点」や「印象に残ったキーワード」など、学生の自由記述を分析対象とした具体的な改善のヒントの発見に役立てることができる。

図1

自由記述のデータ解析の実際

 図2は、「1年間の授業で最も印象に残った点(自由記述)」という設問の回答を、授業の満足度と理解度といった定量評価の結果と合わせて、テキストマイニングで分析した結果を示したものである。

図2

 同じ授業を受けても、理解度と満足度が高いセグメント1 の学生と、理解度も満足度も低いセグメント2 で、印象に残っているキーワードに明らかな違いがある。学生のやる気や興味のレベルにより、興味を引く情報、知りたい情報が違うことを示す例である。

 すなわち、セグメント1の学生は、「将来」や「体験談」「国際性」についての話題が印象に残っており、「将来海外での生活をしたいと考えていたので、海外での体験談が非常に参考になった」などの意見が多かった。

 一方、セグメント2の学生は、「血液型」「性格」といったキーワードが目立ち、「余談であった血液型別の性格分析が面白かった」ようである。

 この分析から得られる改善のヒントとして、授業レベルについては、とくに海外での体験談や留学生との交流を増やすことで、よりグローバルな視点を育成していくことが考えられる。また、学校レベルについては、前向きな学生のニーズに合ったカリキュラムを別途設置するなどの対応が考えられる。

 このように、テキストマイニングを活用すれば、満足度が○点、理解度が○点といった単純な評価だけでなく、自由回答欄に書き込まれる「学生の声」から、より具体的な改善策を発見することが可能となる。

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