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大学経営を変える「リアルタイム授業評価システム」特集:CRMの新たな視点とソリューション(2/2 ページ)

» 2005年05月26日 00時00分 公開
[鈴村賢治,野村総合研究所]
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携帯電話を活用したリアルタイム処理の実現

 従来、学期末に授業アンケートを行い、こうした分析の結果が得られたとしても、次年度以降にならないと改善に着手できなかった。すなわち、従来の運用方法では、運用や集計・分析の負荷などから、フィードバックが遅くなるため、実施のタイミングを逃がしている。

 早い時点で教職員が学生の興味のポイントを認識することができれば、その後の授業の進め方や強調すべき内容を変更することが可能となる。そこで考えられたのが、若者の普及率が高い携帯電話の活用である。

 業が終わると、学生は携帯電話を取り出し、授業評価アンケートに回答する。回答や学生の声はリアルタイムに処理され、教職員が自席に戻ったときには、集計結果を確認できる。授業の評価がリアルタイムで行え、学生から寄せられる意見から具体的な授業改善のヒントが発見できるわけである。

 アンケート設問は、選択式の定量項目や自由記述欄などを、任意に設定できる。また、集計された結果は、教職員向けWeb画面で一覧で確認することができる(図3参照)。

図3

 学長をはじめとした経営層は、授業(教職員)別の評価の比較、要望および不満の声の分析結果を一覧することができ、学生ニーズに基づいたカリキュラムの改革や新規カリキュラムの企画が可能となる。

 実際、学生からは、「授業や先生に対して本音をぶつけやすくなった」「授業への不満を先生が聞いてくれて次の授業から具体的に改善された講義もある」「携帯電話でのアンケートは斬新」など、好意的な反応が敏感に寄せられている。

 また、教職員側からは、「毎回評価されるのは若干息苦しい面もあるが、学生の声を聞いて双方向で授業を行っていく時代にもなってきたと思う」「思った以上に学生がフリーアンサーで意見や感想を入力してくれるので、改善のヒントを発見したり、改善の反応をすぐに見ることができて新鮮」と、教育の現場にも意識改革が芽生えてきつつある。

授業評価から大学版CRMの実現への展開

 今後は、さまざまな学生情報を学生カルテとして蓄積し、これと組み合わせることで、より緻密な教職員評価やカリキュラムの最適化支援という展開も期待できる。

 教職員評価への展開については、出席率や成績、キャリアパスなどを用いて、学生のやる気やまじめ度を指標化し、授業評価の結果に補正を加えていくことも必要となる。

 また、カリキュラムの最適化支援への展開については、卒業生の情報まで含めて学生カルテとして蓄積し、学生のニーズ、能力、キャリアパスと、シラバス(講義要綱)などの情報をマッチングさせることで、最適な授業群を導き出す。この結果、カリキュラムの見直しを図ったり、学生の情報を入力すればその学生に最適な授業群を自動生成する、といったことも可能となるであろう(図4参照)。

図4

 さらに、学生、教職員以外にも、大学・短大を取り巻くステークホルダー(利害関係者)は多く、父兄、企業、OB、地域住民などが存在する。このため、「企業、地域の期待に応える大学経営」「生涯学習の場としての大学経営」といったことがより一層求められてくることになる。

 今後「ステークホルダーの声」の活用(=大学版CRM)へと拡大させ、「特色のある大学」へと変革させていく必要があろう。

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