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オープンソースを活用したECサイト構築ソリューション特集:CRMの新たな視点とソリューション

» 2005年05月27日 01時45分 公開
[新井朗,野村総合研究所]

ビジネスの成長に合わせたシステム構築

 野村総合研究所(以後、NRI)による、2009 年までの国内IT主要7 市場の市場規模予測では、BtoC EC分野(一般コンシューマ向け取引)の市場規模は、インターネット通販・旅行・チケット予約などを中心に、今後も堅調に成長し、2004年の2.9兆円から、2009年には5.5兆円に拡大するものとみている。

 一般に、ビジネスが成長し、アクセス数・取扱商品数・取扱高が増えていくと、サイトダウンによる売上機会損失の割合も増大し、ミッションクリティカル度(継続的なサービス提供が求められる度合)も高まる。また、将来のさらなるビジネスの成長にも対応できるように拡張性も求められる。

 こうしたシステムの再構築には、システムの冗長化、データベースの二重化などの対策が必要だが、それには、アーキテクチャー(構造)の変更や運用体制の見直しなど、システムの全面的な再構築が迫られることも多い。

 しかし、当初から、ビジネスの成長を見越して、信頼性と拡張性を担保したシステムを構築しようと、多額なIT投資を行うのは必ずしも効率的ではない。むしろ、当初は低コストで素早く構築可能で、ビジネスの成長に合わせて、信頼性を高めていける柔軟なソリューションが求められているのである。

 ECサイトは、一見まったく異なるように思われるものでも、機能面において共通する部分は決して少なくない。そこで、低コストで素早いシステム構築を行うために、ゼロからシステム開発を行うのではなく、すでに開発され、流用可能なひな型部品とオープンソースを活用する方法が有効となる。

コストと工数を大幅削減する工夫

 図1に、システム構成のうち、「ECサイト構築ソリューション」の提供範囲を示す。(1)の業務固有部分は、業務要件に合わせて開発することができる。太枠で囲まれた(2)(3)(4)の部分がNRIで提供可能であり、このうち(4)がオープンソースの活用範囲である。

図1

(4)OS/ミドルウェアは、あらかじめNRIが設計・検証を行ってあるもので、NRIが推奨する構成となっている。この組み合わせをそのまま採用すれば、方式設計の工数はほとんど不要になる。

 OS/ミドルウェア以外のインフラ基盤については、案件ごとに再作成が必要になる部分と、再利用性が効く部分を分離し、後者を・共通基盤としてフレームワーク化してある。また、アプリケーションについては、EC サイトの業務領域をモデル化し、汎用性の高い部分を、EC業務共通のひな型部品として用意してある。

 このように、これらの既成のプログラム部品を導入した上で、個別案件ごとに必要な機能を、業務要件に合わせてオーダーメイドで開発する、というのが「ECサイト構築ソリューション」の基本の考え方である。どの案件でもほぼそのまま導入できる部分と、個別案件ごとに対応すべき部分とを分離することにより、ゼロからシステム開発を行う場合に比べ、工数は大幅に削減できることになる。

 また、ECサイトにおいて最もコストがかかるとされるデータベース(DB)について、オープンソースであるPostgreSQLを選択すれば、ライセンス費用および保守費用の大幅な削減が可能となる。将来的に、ミッションクリティカル度が高まった段階で、障害復旧などの機能に優れたOracleに置き換えることも可能である。

パッケージソフトにはないメリット

 低コストで、素早くサイトを構築するには、パッケージソフトを利用するという方法もある。しかし、パッケージソフトは、機能が実装済みで提供されることが多い。機能が業務要件に合わない場合は、業務をパッケージソフトに合わせて変更するか、新たな開発を加える必要が生じるため、かえって高コストになる場合も少なくない。

 これに対し、当ソリューションは、あえてすべての機能を実装しない「半製品型」のため、業務要件に合わせた柔軟な設計が可能となっている。このため、設計の自由度と、フレームワークによる高生産性という2 つのメリットを同時に追求することが期待できるのである。

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