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「欧州」×「罰金」×「削除」International Feel

» 2004年03月29日 21時40分 公開
[松尾公也,ITmedia]

 さて、前回に予告しておいたネタが大きく花開いてしまったので、無視するわけにもいかない。おかげで、今回のタイトルには困ってしまうことになった。今度も「WMP」×「欧州」というわけにはいかないからなあ。

MS vs. 欧州ひとまとめ

 というわけで、今回ピックアップした、海外主要記事のうち、なんとまあ、25本くらいがMicrosoft関連で、その中でMS vs. EU関連は10本以上におよぶ。第一報はEU、MSに6億ドルの罰金という、3月23日の、裁定前予測記事。裁定の公開前に、この件がライバル企業に与える影響を予測する記事が登場している。

 この記事では、すでに決着がついていたブラウザ戦争とは異なり、メディアプレーヤー分野では、まだ完全な勝者は決定していないと論じており、この裁定が、ライバルであるReal NetworksとAppleにチャンスを与えることになると述べている。

 24日に裁定が公表され、予想どおり、EU競争法に基づき、Microsoftに対して「過去最高の4億9720万ユーロ(約6億1180万ドル)の支払いを命じ、90日以内にWindows Media Player(WMP)のバンドルを取りやめ、120日以内に「完全かつ正確な」情報をサーバ市場の競合メーカーに提供すること」を命じた。

 この欧州委員会の中心人物が、マリオ・モンティ競争政策担当委員。Microsoftのスティーブ・バルマーCEOとの交渉に臨み、決裂に至ったのである。その人物評は、「モンティ氏は言葉で攻撃されても屈しない人物だ。一見学者肌に見えても、内面は筋金入りだ」というもの。MSにとっては手ごわい相手になりそうだ。

 1998年の米司法省 vs. MS反トラスト法訴訟での是正措置は、「完全な失敗」と評されており、欧州はその反省から効果的な是正策を考えたとの見方もある。そして欧州の「是正措置が厳しい内容になったのは、消費者よりも競合企業に対して独占企業が与える影響に重きを置いた欧州の独禁法の理念を反映したもの」と、この記事では述べている。

 気になるのは、この是正措置の影響である。MSは、Windows Media Player抜きのWindowsを90日以内に出荷することを求められており、当然のことながら、MSは拒否している。「WindowsはブラウザとMedia Player込みで一つであり、分割は不可能」というのが、その主張だ。しかし、別バージョンのWindows提供が可能であるということを、同社はすでに公表してしまっていると指摘するのが、「既に実在していた“縮小版”のWindows」という記事。タイで縮小版Windowsが40ドルで販売されている点は、3月10日の記事でも指摘されていた。

 WMP抜きWindowsが提供可能になったとして、それをバンドルするPCメーカーはどうするのか? HP、Dell、IBMは「まだ評価中」と態度を保留しているが、Fujitsu-Siemens、Acerは、「(EUの裁定では)何も変わらない」と述べている。総じて、PCメーカーへの影響は少ないようだ。しかし、21.3%と最大シェアを持つHPが、米国と同様にiPod/iTunes戦略を進めるとすれば、このシェア分のQuickTimeがインストールされることになり、メディアプレーヤー裁定と併せて、欧州のオーディオ/ビデオ勢力が大きく塗り変わる可能性もある。

 直近の影響はさほど出ないとしても、将来バージョンのWindows、つまりLonghornについてはどうだろうか? MSのブラッド・スミス氏はそれほど影響はないと述べているのだが、アナリストは、「Longhorn」にMicrosoftが統合する予定の新機能がいくつか問題になる可能性がある、と指摘する

 欧州委員会では、MSに是正措置を順守させるための方法として、監視役を置く考えだが、その効果については疑問をさしはさむ意見が出ている。

 Microsoftはもちろん、この裁定を認めず、ルクセンブルグの欧州第一審裁判所に上告すると発表した。この裁判所はMSに味方するかもしれないという予想もされている。この問題の審理に当たることになる判事は、欧州委員会の裁定を保留する判断を下した過去があるのだという。

 MS vs. EU問題の疑問のいくつかは、このQ&Aで明らかにされているので、ご確認を。

 MSの訴訟絡みでは、電子メールにまつわる2つの面白い記事がある。一つは、「数々の訴訟で電子メールが暴いたMSの本音」という記事で、相手側につけ入れられやすい電子メールを生むMSの体質を取り上げている。

 もう一つは、ああ、なつかしや、GOのジェリー・キャプラン氏の証言である。同氏がIntelからの支持を得ようとしていたときに、ビル・ゲイツCEO(当時)からIntelのアンディ・グローブCEO(当時)宛に、GO支持を思いとどまるよう訴えるメールが届けられたという。PDAの元祖、Newtonと並ぶペンコンピューティングプラットフォーム、PenPointを開発したGOが歴史に埋もれていった背後に、「MSからのメール」があったと、キャプラン氏は主張しているのだ。でも、この証言は、EUとの裁判のためのものではない。ミネソタ州で起こされた独禁法関連の集団訴訟絡みなのだ。EUとの裁判でも、新たな暴露メールが期待できるだろうか?

CloseBox

 長いブランクのわりに、トピックは一本のみだが、その分、こちらは週末をゆったりとすごすことができた。何をやっていたかというと、iTunesデータの整理、である。iPod 40GBとiTunes 4.2をうまくシンクさせるためには、まずデータの整理から、と満を持して取りかかったのだ。

 iTunes化してあるMP3 & AACデータは約47Gバイトある。これを、iPodの40Gバイトに入れるわけだが、当然のことながら、全部入るわけはない。7Gバイト分、さっ引かなければならないわけだ。今はiTunes側で、勝手にプレイリストを作ってくれるのだが、どうせなら、お気に入りの曲ができるだけ漏れることのないようにしたいし、使いやすくしたい。楽曲の「年」表示を、実用的なものにすることと、使いでのあるプレイリストを作ることがとりあえずの目標だ。

 個人的にいちばん欲しいプレイリストは、こんなやつ:

  • 年代は1979年から1983年
  • 楽曲はAOR、洋楽のみ
  • その中でもとびきりの名曲

 あと、ビートルズ、TOTO、ゼップ、トッド・ラングレンといったお気に入りアーティストの楽曲は必ず40Gバイトの中に入るように。あと、最近リッピングした楽曲も入るようにしたい。それに、ビートルズのソロはひとまとめにしておきたいし、トッドのプレイリストには、ユートピアも入るようにしたい。

 とにかく、スマートプレイリストの機能は強力だ。複数の条件をAND/ORで設定し、絞り込むことができ、しかもライブアップデートできるのだ。黄金期AORのベスト盤は、「年を1979年から1983年」「AORというジャンルはないから、相当するアーティストの分類項目に、AORという文字列をあらかじめ入れておく」「マイレートを★★★★★」にしておけば、望みのベスト盤が出来上がるのだ。そのリストを仮に、“AOR: The Best Of Times”とでもしておけば、新たに名盤を手に入れても、その中から名曲だけをマイレートでピックアップし、アルバムにAORの分類を設定すればいいのだ。

 ただ、落とし穴がある。それはデータのほうだ。Gracenoteから提供されているID3タグデータは、不完全なものが多く、ディスクナンバーが入ってなかったり、年が記載されていなかったり、年も、CDの発売日なのか、楽曲が最初に発表された年なのか(クラシックの場合)、オムニバスの場合、アルバム全体に同じ年(CDの発表年)が設定されていることが多く、個々の楽曲に年を設定する必要があるのだ。週末は、この作業に時間をとられてしまったのだった。

 とはいえ、楽曲データさえ整理してしまえばあとは楽だ。iTunes/iPodなら、こういうふうに無理難題も楽々こなしてくれる(実は、iPodでのスマートプレイリスト再生には限界があるのだが……)。ほかのMP3プレーヤーはどうかな? 7月まで延びてしまったiPod miniの発売日だが、iTunesを単なる転送ソフトととらえ、このポイントにライバルメーカーが気づかないようなら、iPodの天下は続くだろう。

 ※スマートプレイリストが、「分類」を含んでいる場合には、そのスマートプレイリストは、iPodに同期されないようだ(iPod側でプレイリストを選択しても何も表示されない)。この場合には、別の(スマートでない)プレイリストを作り、そこにスマートプレイリストの楽曲をコピペし、それをiPodと同期するという、なんとも面倒くさいものになってしまう。なんとかならないものだろうか?

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