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VODサービスが閉塞状況を抜け出すのに必要なものは?(2/2 ページ)

» 2005年01月28日 11時02分 公開
[西正,ITmedia]
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 光ファイバー、ADSL、ケーブルインターネットなど、すべての回線に対応しているので、同社専用のSTBを購入してくれば利用できるというシンプルなモデルである。この形であれば、口コミでの広がりも期待しやすくなる。

 「i-DVP」(internet Digital Video Player)と呼ばれるメディアプロセッサを搭載した専用のSTBをブロードバンド回線とテレビの間に接続するだけでサービスを受けられる。PC上での難解な利用設定など必要ないので、機械オンチのユーザーにとっても使いやすい仕組みになっている。MPEG2/4で配信し、画質は回線の種類によらずDVD並みの映像を実現する。

 コンテンツはダウンロードしてくる形だが、ダウンロードと同時に再生をすることができる。基本的に待ち時間はない。ダウンロードの開始早々に「早送り」が出来ないのは当然だが、「巻き戻し」はもちろん可能であるし、ダウンロードが終われば、後はレンタルビデオと同様に、「早送り」も「巻き戻し」も自由自在である。

 コンテンツの購入価格は、他の事業者のVODサービスと同様で、レンタルビデオ店の貸し出し価格と変わらない水準。コンテンツホルダーにとっては、よりレベニューシェアでの組み方が容易なモデルになっている。

 また、コンテンツの購入は、専用のICカードで行う。ICカードにはユーザーIDやパスワードなどの個人情報が保存されており、i-DVPに挿入するだけで認証が行われる。

 PCを経由する必要はなく、購入したコンテンツは視聴期間が終了したら消去されるので、違法コピーを防止する仕組みも備え合わせているわけだ。

 端末価格も2万円を切る水準なので、回線を選ばないという特長は非常に大きな強みになるだろう。レンタルビデオ店との競合もあまり心配は要らない。レンタルビデオ店の棚に乗せられるコンテンツは限られているから、レンタルビデオ店と「でじゃ」が組むというシナリオも十分に実現可能だ。

 もちろん、ベンチャー企業の提供するサービスだから、大手の有線役務利用放送事業者や大手ケーブルテレビと真正面から対抗したら、体力的には勝ち目はないだろう。だが、あまり競合するモデルにはならないと思う。特定の回線とセットで提供されるVODサービスは、その回線の利用者が使う分には便利だろうし、回線だけそのままにして、わざわざ「でじゃ」に乗り換える必要もないからだ(「でじゃ」ではWebベースのコンテンツ配信を行っており、番組配信にも通常のWeb用配信サーバを利用する)。

 ただ、集合住宅内などで固有に使われているブロードバンドや、一般のケーブルテレビの利用者にとっては朗報と言えるだろう。

 特に、全国各地にあるケーブルテレビ事業者の多くは、独力でVODサービスを提供することは難しい。今後、大手の事業者ともエリア的にバッティングするようなことになっていくと、サービス面で劣ることは非常に不利な状況を迎えることになる。

 そうしたケーブルテレビ事業者の場合には、DNAのサービスを活用することにより、加入者に対してVODサービスを提供することができる。

 回線の制約を超えてVODの利用可能者数が増えていけば、肝心の利用者数も追って増えてくるだろう。DNAのサービスがそれに貢献するのであれば、大手の事業者にとっても決して迷惑な話ではないはずだ。

 DNAのVODサービスについては、まずはレンタルビデオ事業者、一般のケーブルテレビ事業者が連携を検討すべきだと思われる。競合と協業は表裏一体の関係にあるのである。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「モバイル放送の挑戦」(インターフィールド)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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