コラム
» 2005年04月07日 18時31分 UPDATE

RFIDパスポートは「テロリストビーコン」?

RFIDパスポートはテロリストが米国民を識別するのに役に立つ――反対派はこう主張して、このパスポートを「テロリストビーコン」と呼んでいる。

[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 異国の街を歩くすべての米国人を特定できるデバイスに、私たちの敵はどれだけの値段を払うと思う? そして、米国務省はどうしてそのような武器を実現しようとしているのだろうか?

 ここで取り上げるのは、RFIDチップを米国民のパスポートに組み込むという計画だ。国務省は、こうしたパスポートを作れば、国民がスムーズに国境を越えられるようになると主張している。Washington Post紙の報道によると、このRFIDチップにはパスポートに印刷された情報と、顔認識に利用される所有者の写真が含まれるという。

 国務省は、このRFIDデータは4インチ(約10センチ)以内に近づかなければ読み取れないと言っている。同省は8月からこの技術を使った新規パスポートを外交官向けに発行開始する計画だ(彼らが自分の身を実験台にすることは評価しなくてはならない)。

 ほかの人たちは、現行のパスポートの期限が切れたらRFID付きのものを受け取ることになる。私のパスポートは最近更新したばかりで、あと10年有効だ。私としては、この問題は自分自身の身に降りかかってくる前に解決されると思っている。しかし、このパスポートがわが国の外交官にもたらすかもしれない危険を考えるのは嫌なものだ。

 この計画案の意見公募は4月4日に終了した。1500件を超える意見が寄せられたが、その多くは反対意見だった。新パスポート計画を進めるかどうかの決定は今春中に下される予定だ。

 旅行業界などの批判派は、RFIDパスポートは、テロリストが犠牲者候補の中から簡単に米国民を識別できるようにする電子ビーコンになってしまう恐れがあると主張している。

 「これは技術の不適切な使い方であり、危険だ」とカリフォルニア州のパブリシストで元諜報部員のビル・スキャネル氏は主張する。同氏は新しいパスポートを「テロリストビーコン」と呼び、これに反対するRFIDkills.comというサイトを開設している。

 同氏は、国務省の職員はRFID技術をプレゼンされた時に「惚れ込んで」しまい、後になってやっとこの技術を使うことの潜在的な危険性に気づいたと考えている。同氏の話では、米国の諜報機関は既に、RFIDを職員のIDバッジに採用しないことを決定済みという。こうしたRFIDの使い方は、民間セクターでは一般的だ。

 ここで問題なのは、群衆の中から米国人を見つけ出すために、テロリストはパスポートに含まれる情報を「読み取る」必要がないということだ。米国人がRFIDパスポートを持ち歩いてさえいれば、テロリストはそのパスポートが存在するかどうかを識別するだけでいい。RFID受信機をかざすだけで、すぐ近くにいる米国パスポート所有者を十分に見つけられるだろう。

 問題――あるいは賭どころと言ってもいい。世の中をそんなふうにとらえたいのなら――は、この先、特に狂信的に「知る必要」のある人物がどの程度の距離でRFIDを検出できるようになるのかだ。

 常識的に考えれば、実際にデータを読み取る必要がないのであれば、データを読み取る場合よりも離れた場所からRFIDパスポートを発見できるはずだ。その距離がどのくらいになるのかについて、米標準技術局は年内に調査を行う予定だ。今後の技術改良によりこの距離がどれだけ伸びるかという疑問が、この調査でどう取り扱われるのかはまだ分からない。

 この距離が十分に伸びれば、隠した読み取り機を使って、テロ以外の目的で、建物への出入りなどの際に米国パスポート所有者を特定することもあり得る。

 この種の使い方は既に自動車で実現されている。高速料金を支払うために車に取り付けられている「料金タグ」やその他の自動車向けツールは、交通監視にも利用されている。そのために、特定のタグが特定のレーンを通過したときに記録する監視装置が高速道路に沿って設置されている。タグが監視装置の前を通過したときに、車両が最初の地点から次の地点にたどり着くまでにかかった時間を測定できる。

 この情報は推定「走行時間」として、ラジオやTV、インターネットの交通情報レポートで利用されている。

 RFID問題を考えていたら、解決策になりそうなものを思いついた。空港のX線検査装置からフィルムを守るのに使われる鉛の容器だ。可塑化した鉛の容器がRFIDデバイスを保護し、容器から出さない限りデバイスが機能しないようにする上でどれだけ有効かという問題は興味深い。

 国務省は、新しいパスポートと一緒にこの容器を提供するかもしれないし、空港の売店やその他小売店でこのような容器が提供される可能性もある。こうした容器が2〜3ドル以上するとは思えない。

 おそらくNISTは、こうした単純な鉛のスリーブをテストで使うだろう。それに効果があるかどうかは分からないが、コンセプトとしては妥当に思えるし、賛成派も反対派も満足させられると思う。

 前出のスキャネル氏は、私が提案した「解決策」はお気に召さないようで、バーコードやスマートカードなどほかにあらゆる技術が利用できるのだから、RFIDは検討すらするべきではないと主張している。私は反対とまでは言えないが、RFIDの採用を止められないにしても、少なくともダメージを和らげる方法があるかもしれない。

 現状では、RFID計画に対する懸念は十分な根拠のあるものではない。国務省は国民に提供するサービスの質を心から改善しようとしていると私は信じている。問題は――私はこの問題が原因で、国務省の計画が最終的に棚上げされると考えている――RFID技術の進歩が予測できないということだ。もっと離れた場所にあるカードを「読み取る」機能など、この技術がもっと大きくなっていくことだけは予想できるが。

 国外で国民の安全を守ることと、国内で彼らのプライバシーを守ることの重要性を考えると、国務省は別の技術を採用する方が賢明だろう。このケースにおいては、「RFIDは命取りになる」というスキャネル氏の意見は正しい。そうならないことを祈りたいが。

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