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米政府がバイオメトリクスパスポートを準備中――プライバシー面に問題も

» 2005年01月20日 12時23分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米国に入国する人々への監視の強化を目指す米連邦政府は、個人データと顔面認証データを埋め込んだ米国パスポートの発行準備を進めている。これはテロリストに対抗する上で効果的な対策だが、実施方法を誤ればプライバシーの侵害にもつながりかねない。

 この半年間にわたってバイオメトリクス搭載パスポートのテストを進めてきた米国土安全保障省では、早急にこの新技術を導入したいと考えている。

 このパスポートのチップに記録されるのは名前だけではない。顔面認証用のスキャンデータも記録されるのだ。顔面認証情報は、コンピュータが両目の間隔などに基づいて個人を識別するのに利用される。パスポートの写真もデジタル形式でチップに記録されるほか、名前、生年月日、出生地、性別、パスポート番号などの個人データも記録される。

 米国以外でも、ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)が策定した規格に基づいて電子データを記録したパスポートの採用の動きが広がりつつある(関連記事)。ICAOは過去50年以上にわたり、世界の大多数の国々のパスポートの規格の策定にあたってきた機関である。

 米国土安全保障省によれば、新パスポートは他人のパスポートの不正使用を防ぐのに大きな効果があるという。このパスポートは非接触方式でのデータ転送が可能であり、検査官はパスポートのチップをコンピュータに物理的に接続しなくてもデータを取り込むことができる。同省では、2006年までにすべてのパスポートに非接触技術を組み込みたいとしている。

 だが残念なことに、個人情報は暗号化されないまま記録される。加えて、非接触技術では、適当な装置を持った人間に離れた場所から個人情報を読み取られる危険性がある。

 米政府は、いわゆるスキミングを防止するための対策を開発中だ。その作業が完了するまでは非接触技術を導入すべきでない、というのが筆者の考えだ。それまでの間、物理的に接触しなければデータを読み出せないスマートカードを使用すべきである。また、パスポートに記録するデータは暗号化すべきだ。

 新パスポート導入計画を変更する時間はまだある。この計画に不安を感じる人には、ICAOおよび米国務省に意見を寄せるようお勧めする。

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