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» 2006年11月03日 10時30分 UPDATE

ネットベンチャー3.0【第14回】ポータルビジネスはソーシャル化されるのか?(中) (1/2)

佐々木俊尚氏が日本のベンチャーにおけるWeb2.0ビジネス最前線を描く連載企画。オンラインゲームポータルにソーシャルサービスを持ち込もうとする@gamesの動きを追う。

[佐々木俊尚,ITmedia]

それ自体がオンラインゲームのようなSNS

 サイバーエージェントのゲームコンテンツ子会社であるジークレストが今年6月から、@gamesというオンラインゲームのポータルサイトを提供している。これはオンラインゲームとSNSを融合させようという試みだ。

 @gamesの画面は、他のSNSと比べると独特だ。無料登録するとセルフィというアバターが与えられ、画面上部にはセルフィが3Dの鳥瞰世界を自由に歩き回ることのできる画面が表示される。左ペインには会員の写真のかわりに、セルフィの全身像。右ペインにはmixiと同様、加入しているコミュニティーや交換日記、フレンドリストなどを表示させることができる。

 セルフィの3D世界にはゲームタウンやチャットタウン、クイズタウンなどの街があり、これらの街の中に入ることで他の会員とリアルタイムでチャットしたり、あるいはゲームで対戦することもできる。街中をぶらぶら歩いているときに他のセルフィと出会い、そこでお互いに関心があれば、「リング」を掲げ合うことで「プチフレンド」になることができる。セルフィの衣装や、自分の部屋に置く家具などはショップで購入することができる。このあたりはMMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game)のお約束を忠実に実行している。

 ジークレストは、携帯電話ファームウェアの開発で知られるシステムプロの一事業部として出発し、その後独立してサイバーエージェントに第三者割当増資を引き受けてもらい、子会社になっている。最近までは競馬やMMORPGなどのオンラインゲームをそれぞれ単体で提供し、会員獲得に励んでいたが、これをポータル化することでIDを共通化し、会員獲得コストを引き下げるとともにブランディングを行おうと考えたのが、2005年秋のことだった。以降、ポータルサイト開発を進めてきたのである。

Web2.0サービスでオンラインゲームユーザー層の拡大を

 ところがジークレストがポータル開発をスタートさせたのとほぼ時期を同じくして、Web2.0の波が日本にもやってくる。単なるB2Cのポータルではなく、プラットフォームを提供することによって人々が楽しくつながっていくというWeb2.0の考え方は、ジークレストの開発部隊をいたく刺激した。

 ジークレスト執行役員の末光晴人さんは、「オンラインゲーム市場が拡大していく中で、これまでのようなヘビーユーザーだけでなく、これまであまりゲームに触れていなかったようなライトユーザー層をどう取り込んでいくのかということが、今やオンラインゲーム業界の最大の課題となっています。そのためにはただゲームを提供するだけでなく、コミュニティーベースのサービスを導入していくことが必要だと考えたんです」

 つまりはオンラインゲームという市場に対して、ゲーム圏からのゲームとしてのアプローチではなく、インターネット圏からのWeb2.0サービスとしての切り口でアプローチしていけば、mixiやYouTubeなどにはまっている人たちをも惹きつけることができるのではないかと、考えたのだ。末光さんはこのプロジェクトに、「game2.0」というコードネームを付けた。

 もちろん、これまでのMMORPGにもコミュニティーは存在している。パーティーを組んで冒険に行き、武器や装備の売買を行い、さらにはギルドを結成するといったそれらのコミュニティー的機能は、MMORPGへの参加者がきわめて大規模なだけに、リアルの世界と遜色のないほどにまで発達進化している。だがこれらの関係性は、あくまでもバーチャルに依拠していることが、現在のWeb2.0の潮流とは若干位相を異にしているといえるかもしれない。Web2.0でいうソーシャル化は、単にネット上の仮想人格が相互に出会い、つながっているだけでなく、リアルの人間関係にどこかで接続され、その人間関係を反映しているところに重要な意味がある。この連載の12回(検索エンジンが「ユーザーのその日の気分」を知る方法(下))で、私は以下のように書いた。

 たとえば、妻が子育てに強い興味を持っていて、ソーシャルブックマークで子育て関連の記事を特に読んでいる。家でご飯を食べているときに、そうした話題が頻繁に出る。あるいは会社の仲のいい同僚が、最近はYouTubeに凝っていて、会社の会議などでさかんにYouTubeの話題を口にする。そうやって周囲の人間から聞かされていると、子育てやYouTubeの話題を書いた記事を優先して読むようになる。そうした関係性を加味して、ソーシャルブックマークやGoogle検索結果から記事を利用者に合わせて抽出するような仕組みが出てこれば、それは素晴らしいパーソナライゼーションとなる。

 そしてこのテーマについて、ソーシャルニュースサイト「newsing」を提供しているマイネットジャパンの上原仁さんは、次のように話したということも連載12回で書いた。「こうした人間関係を含めたソーシャライゼーションが、今後のWeb2.0の進展では非常に重要な意味を持ってくると思う。そしてそうした人間関係に基づいた検索行動は、マーケティングの考え方さえ根本から変えてしまう可能性があると思います」

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