コラム
» 2007年04月09日 10時45分 UPDATE

金融・経済コラム:上場ベンチャー株式のオーナー持ち分は高すぎる (1/2)

日本のベンチャー企業が上場する際にオーナー社長の持ち分が過半数を占める、ということはめずらしくありません。しかし、いざというときは社長が何でも決められる状態での上場は、コーポレートガバナンスの観点から難ありと言わざるを得ません。

[保田隆明,ITmedia]

 以前、一般投資家保護の観点から東証が子会社上場を奨めない方針のようだ、というコラム(「子会社上場への風当たり強まる――IT・ネット系企業に与える影響」)を書きましたが、むしろオーナーの持分比率が高い企業の上場こそ問題ではないかと思ったりします。特にインターネット系企業では、社長が過半数の株式を保有したまま上場するケースも多く、そのような企業では会社の最高意思決定機関である株主総会も、オーナー社長の一存により決議することができるので、一般株主がないがしろにされる可能性は高くなります。

オーナー持分は高く保つべし?

 日本のベンチャー界では、一般的には上場前に経営陣の持分が過半数を切るのはよろしくない、と言われています。証券取引所がそのように求めているという話もあれば、安定株主の確保という観点もあるでしょうが、合理的説明があるわけではなく通説です。

 一方、オーナー社長は、とにかく持分は高く維持したいと考えるのが普通です。それは持分が低くなると、株主総会での決議事項が全部自分の意のままにならない可能性も出てきますし、外部株主が結託して会社が乗っ取られる可能性もあるかもしれないと心配するからでもあります。また、上場した後は株を売れば現金が手元に入ってきますので、少しでも持分を高く維持している方が上場後によりお金持ちになれるということもあるでしょう。

 しかし、社長が何もかも決められてしまうような企業が上場をして、一般株主から投資を仰ぐというのは、昨今のコーポレートガバナンスの議論に相反するものではないかと思います。例えば、コーポレートガバナンスの議論の1つに、株主の利益を代弁するために社長への牽制役として社外取締役を入れましょう、というものがあります。ただ、最大の株主がオーナー社長であれば、社外取締役を入れたところでそれは形式的なものでしかなくなってしまいます。

 東証が子会社上場は推奨されざるべし、というのであれば、このオーナーの持分比率の高い企業の上場も同様に推奨されざるべし、とするべきではないかと思います。

米国ベンチャーキャピタル経験者による起業家から学ぶ

 このあたりを議論するために、今回は、アメリカのベンチャーキャピタルでの勤務経験があり、現在は日本で自らがベンチャー企業社長として働いている砂川大氏にインタビューをしました。砂川氏は三菱商事、ハーバード大MBAを経て、2003年にアメリカのベンチャーキャピタルであるGlobespan Capital Partnersに就職します。2004年には同社日本事務所を開設し代表を務めた後、2005年にロケーションバリューという会社を起業しました。ロケーションバリューでは、携帯端末の位置情報を利用して、リアルタイムの短時間バイトのマッチングサイト「おてつだいネットワークス」を運営しています。

 砂川氏が、米国ベンチャーキャピタルの日本事務所を開設して最もびっくりしたことの1つが、まさにこの日本におけるベンチャー経営者の持分割合の高さだったそうです。砂川氏によると、「アメリカのベンチャー企業では、創業者持分の推移の典型的パターンとしては、初回資金調達時に30%にまで低下し、2回目資金調達時で15%、株式公開前で10%程度」ということです。日本では、株式公開時でも50%以上を創業者が維持しているベンチャー企業も多く、その差は明らかです。

 そんなアメリカでの事例を見てきた砂川氏ですが、いざ自らが起業する場合にはそうは言っても持分を高く維持したかったのではないかと聞いてみると、「その思いがなかったと言えばウソになるが、投資家と経営者の本来の関係を考えるに持分が高い、低いは関係ない」とのこと。具体的にどういうことかというと、「日本の起業家の場合、何かあったときのために自分の持分を高くしておき、会社に対するコントロールを持ちたがるが、そもそも論として、投資家をあまり信用していない傾向にある。ただ、投資家と揉めたときに起業家が自分の意見をゴリ押しできるように50%以上保有するというのは悲しい。もちろんリスクヘッジとしてはありだが、あまりにもヘッジしすぎじゃないか」と、日本のベンチャー企業における起業家と投資家(ベンチャーキャピタル)の信頼関係の薄さを指摘します。

 なぜ、信頼関係が薄いのかに関しては「日本の起業家が投資家を信用できない理由は、投資家が起業家ではないという点がある。アメリカの場合は、名の通ったキャピタリスト(投資担当者)は、自ら起業経験がある人が多くベンチャーが何たるかを良く知っている。また、よっぽどのことがない限り辞めることもない。ただ、日本の場合はキャピタリストの多くはサラリーマンであり、権限もないし担当も変わるから信頼の礎を築き難い」と指摘します。また「一方では、日本の起業家側にも問題があり、投資家を見る目を養っていないので、投資家を信用できないのも仕方がないとも言える」とのことです。

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