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女性をIT業界に引き入れるには

» 2007年07月03日 16時50分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 わたしが最近新たに興味を抱いているのは、コンピュータ業界で働く女性たちについてだ。実際、わたしが近ごろIT業界のリーダーたちによく尋ねる質問の1つは、「女性にもっとITに興味を持ってもらうためには何ができるか?」というものだ。

 その点を念頭に、わたしは先月、オーランドで開催されたMicrosoftのTechEdカンファレンスでのランチョンミーティング「Women in Technology」に参加してきた。

 わたしは少し遅れて到着したため、会場では既に昼食が始まっており、わたしが部屋の奥のテーブルに席を見つけて着席したときには、会場の500人ほどの女性たちは既にサラダや前菜に手を付けているところだった。わたしは気恥ずかしく思いながら、いつものごとくひっそりと、できるだけ目立たないよう目立たないよう、着席した。だが、何の意味もなかった。会場には、数名の給仕係を除いで、男性はわたしを含めて6人しかいなかった(わたしは男性はほかに5人いたと思ったのだが、人によって、男性は5人いたと言う人もいれば、7人いたと言う人もいて、正確な人数は定かではない)。とにかく、いずれにせよ、わたしは非常に少数派だったのだ。

 そして、わたしはIT系のイベントでは少数派となるのが常なのだが、今回の感じはいつもと少し違っていた。どのように違うのかについて、ミーティングの最中、わたしは特に考えないようにしていた。だが、ミーティングの後、Microsoft英国支社のITプロエバンジェリストチームのマネジャーで、このイベントのまとめ役兼進行役を務めたアイリーン・ブラウン氏がわたしにこう尋ねてきたのだ。「今日のイベントに“野郎”として出席するのはどんな気分だったか?」と。

 わたしは最初、平然を装い、「わたしはいつだって少数派だから!」と答えた。だが、それに対し、ブラウン氏はただ上品に微笑むだけだったから、わたしはその先を続けざるを得なかった。そしてわたしは、冗談の意味が分からなかったときなど、幾度か、自分が全く場違いなところにいると感じたことを認めざるを得なかった。そして、理解できた冗談というのは、わたし、つまり男性に対するもので、そんなときには、視線を宙に泳がせているわたしを見て、近くの席の女性たちが皆クスっと笑っていた、ということも、白状せざるを得なかった。

 だが当然ながら、このイベント自体は冗談などではなかった。わたしは黒人だから、ITイベントで少数派に属するのには慣れており、ときには会場でたった1人の黒人男性のこともある。だが、わたしはそれを気にしたことなど全くなかった。なのに、正直、Women in Technologyでは、わたしは少数派であることが気になった。それは、わたしが自分を場違いと感じたからではなく、会場内の女性の間に非常に強い仲間意識が感じられたからだ。それは、非常に明白だった。まるで、何か婦人団体のイベントにおいて、女性が皆、互いに手を取り合っているかのような雰囲気だった。わたしがそうした印象を受けたのは、昔、ガールフレンドの女子学生社交クラブの創立記念イベントに出掛けたとき以来だ。このイベント会場に集まった500人以上の出席者のうち、男性は30人程度だった。イベントの途中、ある時点で、女性が全員立ち上がり、クラブのテーマ曲を歌っていたのだが、その一致団結ぶりはWomen in Technologyと同じくらいに力強いものだった。

 Microsoftのイベントでは、各テーブルの中央に、Women in Technologyのバナーが印刷されたカラースカーフの入ったバスケットが置かれていた。ブラウン氏は出席者の女性に対し、スカーフをそれぞれ1枚ずつ手に取り、IT業界で働く女性に敬意を表し、着用するよう促した。わたしはメモを取り、発言を書き留めるのに夢中だったのだか、その発言に顔を上げ、自分が座っていたテーブルの上のバスケットを見てみたところ、スカーフは既に1枚もなくなっていた。そのテーブルは3分の2しか埋まっていなかったのにだ。近くのテーブルでも、スカーフは既になくなっていた。まあいい、確かに、男性がそんなスカーフを手に入れてどうしようというのだ? わたしは単なる参観者にすぎなかったのだし……。

 もし、1枚もらえていたら、わたしはIT業界で働いている妹にそのスカーフをあげるつもりだった。わたしには姉妹が4人おり、1人の姉を除いて皆、年下だが、わたしが事実として知っているのは、「自分に課された仕事については、どのようなものであれ、女性の方が男性よりも一所懸命に、より賢く、より上手に取り組む」ということだ。わたしの姉妹たちは皆、これまでさまざまな状況でわたしを打ち負かしてきた。そして、彼女らが与えてくれた教訓こそが、わたしを今日ある姿へと導いてくれたのだ。

 ブラウン氏はさらに、IT業界で働く女性を対象に行った調査の結果についても話をした。この調査は1300人以上の女性を対象に行われたもので、700人以上から回答が寄せられ、その中には男性17人からの回答も含まれたという。

 調査結果には、「女性は目に見えない壁を感じている」との指摘も含まれた。その点は回答でも明らかで、ブラウン氏によると、回答者のうち52%は「IT業界でマネジャークラスまで出世した」と答えているが、「ディレクターレベルまで出世した」と答えた回答者はわずか5%だったという。

 また同氏によると、「40〜55歳の女性が大挙してこの業界から退いている」という。

 さらにブラウン氏はこの調査から得られた結論として、「IT業界のおたく的なイメージが女性を敬遠させている」「長時間労働もIT業界の魅力を削ぐ一因となっている」などの点を指摘している。また多くの回答者は、「女性は男性よりもハードに働かなければならない」と感じており、「しばしば女性は相互に信頼しておらず」「女性的なか弱い女性が動機を損なわせている」と考えている。

 ブラウン氏にはかつて商船隊員として数年間働いた経験があるが、そのときの経験について次のように語っている。「本当に厳しい生活だった。船では、わたしが唯一の女性だった。男性の2倍は懸命に働かなければならなかった。皆さんにも共感していただけるのでは?」

 もちろん、共感を得ていた。会場中の称賛とざわめきがそれを証明していた。さらにブラウン氏は、この調査に関連して、「わたしが自分の提案に耳を傾けてもらうためには、1000回は説明する必要がある」と発言している。

 この調査結果について語った後、ブラウン氏はIT業界で活躍する女性のパネルを紹介した。パネリストには以下の人物が含まれた。

 Microsoftのシニア製品マネジャーのアニ・ババイヤン氏、MicrosoftのパートナーであるIntermedia.NETのマーケティングマネジャーのリサ・コールマン氏、Microsoftを専門とするジャーナリスト兼ブロガーのメアリー・ジョー・フォーリー氏、Microsoft Education Strategiesのシニアプログラムマネジャーのミスレイー・ガナパシー氏、Infotech CanadaのシニアITスペシャリスト兼オペレーションディレクターでINETAの会長に選出されたアマンダ・マーフィー氏らだ。

 マーフィー氏はユーザーグループ、特に開発者向けのユーザーグループを発足させることに関して迷いはなかったという。「わたしは父に“お前の開発者としてのスキルは料理の腕前と同じくらいだ”と言われた。実際、料理をすることはあっても、本当のところ、あまりうまくはない」と同氏は冗談めかして語っている。だが、それでも同氏はユーザーグループの発足をあきらめなかったという。「わたしにとって大切なことは、それが本当にコミュニティー、そして人々のつながりに貢献しているという点だ」と同氏は語っている。

 ババイヤン氏は新著「The IT Girl's Guide to Becoming an Excel Diva」(Wiley)が近く刊行される予定だが、同氏は本当に数学が好きで、ITは彼女にとって自然な選択だったという。「わたしがIT業界に入ったのは、14歳のときに、ベビーシッターみたいな仕事はつまらないと悟ったから」と同氏も冗談めかして語っている。

 だが、女性が直面する不公正さの問題に言及し、ババイヤン氏はあるプログラムに参加したときのことを語っている。「そのプログラムでは、わたしだけがデスクトップPCとモニターを持って毎日歩き回らなければならなかった。同じプログラムに携わっていたほかの人たちは皆男性で、皆、ノートPCを持っていた」

 若い女性にもっとIT業界に興味を持ってもらうための方法について、ババイヤン氏は次のようにアドバイスしている。「わたしの経験からすると、女性たちはわたしがどういうところに旅行し、普段何をしているのかとか、どのようなものを買えるのか、あるいは、わたしが自分用にCOACHのバッグを買えるかどうかといった話にワクワクするようだ」

 またガナパシー氏は「あらゆる種類の多様性がより良い製品の開発に役立つ」と考えているという。だからこそ、チームを強化し、その技術を強化するためには、より多くの女性を要職に加えるしかない。

 だがおそらく、女性をIT業界に引き入れるためには、ITが社会に及ぼす影響力にもっとフォーカスを当てる必要があるのだろう。ガナパシー氏は、学校での技術の教え方にも問題があると考えているという。

 「われわれはITの社会的な側面をアピールしていない。技術が社会をどのように変えられるかについて、その影響力を分かりやすく示せていないのだ」と同氏は語っている。

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