コラム
» 2007年07月24日 16時42分 UPDATE

スペック表では分からない、100ドルノートPCの実力

発表資料からではXOはパワー不足に見えるかもしれない。だが実物を見れば、このシステムが決してパワー不足でもなければ無能でもないことが分かる。

[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 「世界」を変えるだけでなく「コンピューティングの未来」をも変えることを目指したプロジェクトとなれば、多くの注目が集まり、さまざまな議論が沸くのも当然だ。「One Laptop Per Child」(OLPC)プロジェクトも、そうしたプロジェクトの1つだ。このプロジェクトには、正当な理由と不当な理由の両方で注目が集まっている。正当な理由とは、同プロジェクトの人道的な目標や同プロジェクトで導入される各種の画期的技術。不当な理由とは、この製品の価格設定に対する固執や性能に関する憶測だ。

 5月には、米CBSの人気報道番組「60 Minutes」でOLPCプロジェクトが取り上げられ、その提唱者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)のニコラス・ネグロポンテ教授が番組に出演した。同氏が出演したコーナーでは、OLPCが開発中のノートPC「XO」(一般的によく知られているのは、厳密な命名ではないが「100ドルノートPC」という名称だ)のほか、「開発途上国の子供たちに低価格なコンピューティングリソースを提供する」という同プロジェクトの目標に焦点が当てられた。だが実際に注目を浴びたのは、ネグロポンテ氏と米Intel会長のクレイグ・バレット氏との間で繰り広げられた舌戦だった。

 最も印象深かった場面の1つに、Intelがナイジェリアで配布したという宣伝資料をネグロポンテ氏が提示した場面がある。その資料の内容は、開発途上国向けにIntelが独自に開発したClassmate PCとXOノートPCとを比較し、XOを酷評するというものだった。

 バレット氏はそうした文書の存在を認めた上で、「社内の誰かが、市場で提供されている他社のデバイスとClassmate PCとを比較したのだろう。それは、当社の通常のビジネス手法だ」と語り、人道的な取り組みと通常のビジネスとの区別が付いていないような発言で応じていた。

 だが今ではIntelも、OLPCのようなプロジェクトには反対するよりも協力したほうが得策である(と同時に、優れた広報活動にもなる)ということを悟ったようだ。実際、Intelは7月13日、OLPCの理事会に参加し、子供たちに低価格コンピューティングを広めるための取り組みを支持する方針を発表している

 このニュースにより、OLPCの目的は正しく理解され、ようやく開発途上国に向けたXOノートPCの配布に集中できるかのように思われた。だが、ちょうど時期を同じくして、今度はコンピュータ業界のまた別の大物がOLPCプロジェクトとその低価格ノートPCにケチを付けた。

 その大物とは、米Dell会長のマイケル・デル氏だ。同氏はDell/National Federation of Independent Business Small Business Excellence Awardsにおける質疑応答セッションで、XOノートPCについて次のように語っている。「このノートPCはあまりに性能が低く、子供たちに何の役にも立たないし、必要なコンピューティングタスクも処理できないだろう。問題はこのノートPCの価格というより、このノートPCの性能だ」

 多くのユーザーが実際にコンピュータをどのように使っているかについて、デル氏が完全に把握していないとしても無理からぬことだ。結局のところ、「コンピュータの性能を年々強化して販売する」というのがDellのビジネスモデルの基本だからだ。だが同氏ももう少し現実の社会に目を向ければ、多くの個人ユーザーやビジネスユーザーが5年かそれ以上前のコンピュータを使って、実に生産的にさまざまな用途に活用していることを知るだろう。

 だが、ここでもっと明らかなのは、デル氏には最新のXOノートPCを目にするチャンスがなかったのだろう、ということだ。

 わたしには最近、ちょうどそのチャンスがあった。マサチューセッツ州ケンブリッジのOLPCのオフィスを訪問し、XOの詳細を見せてもらえたのだ。XOは23日に、最終β版が発表されている

 発表された資料からしかXOノートPCを判断できないのであれば、「このノートPCはパワー不足」との結論に達するのが普通かもしれない(XOはAMDのミッドレンジプロセッサ、256MバイトのRAM、少容量のフラッシュドライブを搭載する)。だが実物を見れば、このシステムが決してパワー不足でもなければ無能でもないことが分かる。むしろ、その逆だ。XOはわたしがこの何年間かに見てきた中でも、最も強力なシステムの1つだ。

 画期的なディスプレイ技術(明るい日光の下でも読める)や省エネに配慮した電源管理機能、プロビジョニング機能、ワイヤレスメッシュ機能(電源が入っていないときにもワイヤレスメッシュルータとして作動できるため、村の子供たち全員を接続できる)などにより、XOは子供たちの生活に大きな影響を及ぼすことになるだろう。

 さらにXOはノートPCの未来にも影響を及ぼし、より効率的で高性能なモバイルシステムの新たな波を引き起こすことになるだろう。

 驚きだったのは、XOで動作するLinuxベースのSugarソフトウェアに備えられた幾つかの画期的な機能だ。Sugarには、ワープロなど、標準的なデスクトップツールの簡略版が含まれているが、Sugarのソフトウェアの多くはXOのハードウェアと同様、革新的なものとなっており、例えば、コラボレーション環境はわたしがこれまでに見てきた中でも最も優れたレベルに達していた。

 願わくは、デル氏のコメントは、XOの実際の性能を知らずに発せられたものと思いたい。コンピュータメーカーはXOをおもちゃ扱いしたり、なお悪いことだが、自社システムの競合製品としてとらえたりすべきではない。それより、「従来のベンダーにありがちな窮屈な官僚主義からの革新的な解放」として歓迎すべきだ。XOは停滞気味のノートPC市場を活気付けてくれるだろう。

 XOの性能や機能、革新技術の詳細については、eWEEKのEmerging Technologyサイトに掲載される記事を参照いただきたい。同サイトでは、OLPCのソフトウェア担当プレジデントのウォルター・ベンダー氏、およびOLPCの最高技術責任者のメアリー・ルー・ジェプセン氏のインタビュー記事とそのポッドキャストも提供される。

 もちろん、XOの写真とSugarのスクリーンショットも多数掲載する予定だ。

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