コラム
» 2008年04月11日 16時39分 UPDATE

MSN+MySpace+Yahoo!=?

MicrosoftとNews Corp.が共同でYahoo!を買収すれば、インターネット業界の様相が変わり、Googleは守勢に立たされるだろう。ただし、実現できるかどうかは別の問題だ。

[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 米Yahoo!の取締役会にとって、特に1株当たりの買収額が引き上げられた場合、承諾する以外に選択肢はほとんどないだろう。Microsoftも、株主の価値への見返りを強調してくるかもしれない。現在Wall Street Journalが報じているうわさは、新組織でMSN、MySpace、Yahoo!が統合されるというものだ。

 理論的には、この組み合わせには膨大な可能性がある。しかし実務面では、特に新組織が別会社として運営された場合は悪夢だ。筋が通る理由と通らない理由について説明しよう。

 Googleの検索と、広告分野における独占強化は強調され過ぎている。Googleの成功にとって、市場シェアは部分的にしか関係がない。Microsoftにとって問題なのは競争力のあるプラットフォームだ。Googleは、Netscapeができなかったことを成し遂げた。開発者とエンドユーザーにとって魅力的なWindowsの代替プラットフォームを作り出したのだ。WindowsのプラットフォームはPCで、GoogleのプラットフォームはWebになる。

 Googleの成功は収益力と、サードパーティーも大きな収益を上げられる魅力的なプラットフォームの提供に根ざしている。ちょうど1980年代と90年代のDOSとWindowsのように。現時点で、アナリストもブロガーもメディアも大部分、Googleの成功を検索市場のシェアで測っている。しかしこれは間違いだ。ネットにおける成功は、視線、つまり、ユーザーがWeb資産上にどれくらい長くいたかで測らなければならない。広告はスペースを必要とする。最も価値ある広告スペースは、ユーザーがとどまる場であって、検索のようにただ通り過ぎてしまう場ではない。

 調査会社Nielsen//NetRatingsが親会社とブランド別に集計した統計によると、ユーザーがネットで過ごす時間はAOLとYahoo!がトップだった。Nielsen//NetRatingsは親会社別とブランドの2つに分け、1人当たりの滞留時間を集計している。定義は次の通り。

 親会社とは、1組織が保有する複数ドメインとURLを統合したものと定義される。ブランドとは、ブランド展開しているコンテンツが一貫性を持って集められた複数ドメインとURLを統合したものと定義される。

別表1:親会社別1人当たりの滞留時間(2008年2月)
親会社 ユニークビジター数(単位:百万人) 滞留時間(時:分:秒)
Google 122 1:55:47
Microsoft 121 2:16:54
Yahoo! 113 3:14:24
Time Warner 104 3:47:33
News Corp. 75 1:53:17
eBay 65 1:51:02
(資料:Nielsen//NetRatings)

 うわさされているAOLとYahoo!の合併では、ユーザーのネット滞留時間で測った業界トップ企業同士が結び付く。この組み合わせは魅力的だ。わたしは金融アナリストではないので株主の潜在的価値についてはコメントしない。しかしNews Corp.とMicrosoftが組んでYahoo!を買収すれば、これも同じ理由で魅力的だ。別表を見てもらえば分かるだろう。

別表2:ブランド別1人当たりの滞留時間(2008年2月)
ブランド ユニークビジター数(単位:百万人) 滞留時間(時:分:秒)
Google 115 1:29:15
Yahoo! 112 3:13:56
Microsoft 96 0:43:32
MSN/Live 95 2:09:30
AOL Media 89 3:58:22
YouTube 70 0:47:40
Fox 64 2:01:16
(資料:Nielsen//NetRatings)

 しかし、いずれの親会社/ブランドのマッシュアップにも問題がある。数字がすべてを語るとは限らない。AOLとYahoo!の滞留時間を合わせると7時間を超え、MicrosoftとNews Corp.を合わせると4時間を超す。しかし、特にAOLとYahoo!の場合は重複しているWeb資産が膨大にあり、そのため一部のサービスでは滞留時間が帳消しになる。MSN、MySpace、Yahoo!を組み合わせた場合の重複時間はさらに大きくなる。

 それを考えると、MicrosoftとNews Corp.では広告掲載のためのスペースが大幅に広がる。そしてMicrosoftは自社とYahoo!の分析・検索ツールを広告主に提供することになる。Microsoftは広告スペースと広告効果を測るツールの提供が可能になり、これは魅力的だ。鍵となるのは、ユーザーがこれらの資産で実際にどれだけ長く過ごしてくれるかだ。これと比較するとGoogleは、YouTubeを除けば目的地を探すための駅のようなものだ。

 他社の資産の方がエンドユーザーを長い間つなぎとめておけるというだけで、Googleのプラットフォームの広さにまつわる価値が減少するわけではない。Google検索は適合度が高く、分析、キーワード検索、広告サービスは結果が出せる。しかしMicrosoftがNews Corp.と組んで最高の広告スペースを手にすれば、Googleのシェア独占に対抗できるかもしれない。

 ネット広告スペースの価値は、滞留時間だけでなく、ユーザーがそこでどう過ごすかによっても測られる。MicrosoftとNews Corp.は、ユーザーが音楽やビデオといった価値の高いデジタルコンテンツを使っているか、ほかのユーザーと交流しているかのどちらかだと主張できる。MySpaceはどちらで測っても大きな魅力だ。デジタルコンテンツ、SNSとも、マーケティング上の大きな魅力がある。それは影響力、つまり誰が誰に何を勧めているということであり、ブランドの認知と魅力が高まることでもある。

 このネット資産のマッシュアップには可能性があるが、実現できるかどうかは疑問がある。Microsoftのオンラインサービス部門はほんの短い期間(2年足らず)を除くと赤字が続いている。Microsoftは1995年にMSNを創設し、同部門は約7年間、赤字が続いた。2年半ほど前、MSNからWindows Liveにブランドを変更して以来、オンラインサービス部門は再び赤字に転落した。

 Microsoftはまだネットサービスで黒字を保てる手腕を見せていない。従って、News Corp.がYahoo!共同買収の提案に乗るかどうかは疑問だ。Yahoo!取締役会がMicrosoftによる一方的な買収提案に強硬に抵抗しているのも無理はない。Yahoo!はユニークビジター数と滞留時間で測れば圧倒的なブランドでありWeb資産だ。もしMicrosoftが自社のオンラインサービス部門にやったようなことをYahoo!に来てやれば、そのすべてが消滅してしまうかもしれない。

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