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MSがiPhone 3Gから学ぶべきこと

» 2008年07月15日 17時29分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 準備は大切だ。米Appleはそれができていなかった。

 米Microsoftがデータセンターインフラの構築にこれだけの時間とコストを投じているのには理由がある。Webサービスには規模が必要だからだ。今回、MobileMeのリリースに伴うトラブルでiPhone 2.0ソフトウェアの配布が遅れたことや、iPhoneのアクティベーションに時間がかかったことは、Appleのインフラがそれだけの負荷を処理し切れなかったことを示している。

 Microsoftは以前からWebサービスの分野に取り組んでいる。同社は2004年から2006年までの間に、問題のある新しいWebサービスを幾つも始動した(多くはβ版の形で)。なぜ「問題のある」サービスなのかと言えば、それらのサービスはいずれも最初の数日間は動作が不安定だったり、利用できなかったりしたからだ。だがこの1年半、Microsoftは可用性の強化に重点的に取り組み、Webサービスのクオリティの大幅な改善に成功している。

 iPhoneにとってもWebサービスは基盤だ。iPhoneではまずアクティベーションの手続きが必要だが、発売日の11日朝には、過負荷のためにこのプロセスが文字通り機能停止となった。太平洋夏時間(PDT)の11日午前8時にiPhone 3Gが発売されてから数時間、また米国東海岸で販売が開始されてから最初の3時間は、「AT&Tのアクティベーションサーバがダウンしている」と文句を言いながらApple Storeから出てくるユーザーが何人かいた。ただし、わたしが最後にチェックしたときには問題はiTunesのアクティベーションサーバにあった。誰がこのインフラを管理しているのかは知らないが、とにかく、これだけの負荷に対応する準備が整っていなかったということのようだ。

 11日の正午ごろ、わたしはApple Storeの入り口から中の様子をのぞいてみたが、店内では最初の購入者のうちの1人がまだアクティベーションの完了を待っていた。Apple Storeの従業員らは予定よりもアクティベーションに時間がかかっていると説明していた。アクティベーションできないからという理由でiPhoneを持たずに店を立ち去る人もかなりいて、中には、列に並んで順番待ちをしている人たちに向かって大声で不満をぶちまける人もいた。

 わたしが思うに、Appleが発売日の問題を追って分析すれば、販売からアクティベーションまでのプロセスに時間がかかった別の元凶が明らかになるのではないだろうか。その元凶は、キャリア移行手続きだ。わたしは11日にはサンディエゴのショッピングモールFashion ValleyにあるApple Storeで、そして12日にはラホヤビーチ近くのApple StoreでそれぞれiPhone購入者に非公式の調査を行ったが、それによると、多くの購入者はキャリアの移行を行っていた。そのような場合、購入時には追加の手続きが必要となり、購入者は信用調査、番号ポータビリティの手続き、そして通話テストが完了するまで帰るわけにいかなかったのだ。

 iPhoneの2つ目のサービスコンポーネントは、ソフトウェアの配布だ。AppleがiPhone 2.0のアップデートに手間取ったのは確かだ。わたしは11日、そして一部には12日にも、同ソフトウェアのダウンロードに関する多くの不満を耳にした。iPhone 2.0の配布に関しては、Appleに対する評価は「C」だ。それに比べると、App Storeははるかに健闘した。わたしは何の問題もなくPCとiPhoneに各種のアプリケーションをダウンロードできた。App Storeの反応は一貫して迅速で、ダウンロードもスムーズだった。App Storeに関しては、評価は「A」だ。

 もう1つの重要なサービスコンポーネントがMobileMeだ。MobileMeのリリースに関しては、「D-」の落第点を付けざるを得ない。ただし同サービス自体に対する評価は、若干のためらいはあるものの、取りあえず今日のところは「A」だ。Appleは.Mac(media access control)からMobileMeへの移行を太平洋夏時間の9日午後6時に開始する予定だったが、結局この移行は2時間延期された。そして移行は6時間で終わるはずだった。だがAppleは10日の朝までに、ステータス報告の内容をさらりと変更し、緩やかな移行が太平洋夏時間の9日午後8時に始まった旨を伝えている。

 「緩やかな移行」というのは実に正しい表現だ。MobileMeでは、10日のほとんどの間中、利用できる状態と一部だけ利用できる状態、まったく利用できない状態とが幾度も繰り返され、11日になっても幾分不安定な状態が続いた。MicrosoftはWebサービスの大半を無償で提供しているが、MobileMeは年間使用料が99ドルだ。やれやれ、料金を支払っている顧客には、もっと良いサービスを提供して然るべきではないだろうか。

 もっとも、しっかり機能してくれさえすれば、MobileMeのサービスは実に便利だ。メールボックスの同期化も含め、メールのプッシュ機能のおかげで、わたしのiPhoneははるかに使いやすくなった。わたしはこのサービスを1週間フルに使用するのが楽しみだ。まるまる1週間の間、ブログやメールやインスタントメッセージング(IM)などの作業をすべて、アップデートしたiPhone 2Gか新しい3Gのどちらかでこなせるか、つまりPCを一切使わずに済ませられるか、試してみたくて仕方がない。

 Microsoftの社内では恐らく今回のAppleの失態をほくそ笑むようなメールが飛び交うことになるだろう。これだけの失態を演じたのだから、Appleもある程度の批判は甘受すべきだろう。ただしこれはMicrosoftの社員にとっても人ごとではない。何しろ、Webサービスは難しい。しっかり準備しておかなければ、MicrosoftもいざLive Meshを始動したときに我が身に災難が降り掛かってこないとも限らない。

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