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それでもMacを買う?

» 2008年08月11日 12時25分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 8月2日に地元の量販店Targetで売っている2台のHP製ノートPCを見て以来、わたしはMacとWindows PCの価格について考え続けている。店頭にあった2台のうち1台は14インチモデルのHP製DV2946NRで価格は699.99ドル。4Gバイトのメモリと320GバイトのHDDを搭載している。これは1299ドルのMacBookの2倍の容量だ。グラフィックスメモリはMacBookの144Mバイトに対して356Mバイトある。不思議だ。Vista搭載ノートPCがこんなに充実した機能でこれほど手ごろな価格で売られているのに、MacのデスクトップとノートPCは勝負できるのだろうか。

 わたしは調査会社NPDの業界分析担当副社長、スティーブン・ベイカー氏に小売市場におけるPCの平均販売価格推移について尋ねてみた。店頭で見たHPのノートPCの価格はまさに平均ど真ん中だった。WindowsノートPCの平均販売価格(ASP)は700ドル。MacのノートPCのASPは1515ドル。やはりMacはWindowsの2倍以上の価格だ。だがそれだけではない。MacのデスクトップのASPはWindowsのデスクトップより1000ドル以上高く、しかも6月の時点で2年前よりも高くなっているのだ。

ASP 小売市場におけるPCの平均販売価格推移

 この価格差については、いろいろな見方ができる。

1. AppleはPCをプレミアム価格、つまり1000ドル以上で売ることにしている。MacのノートPC(MacBook)の最低価格は1099ドルで、デスクトップ(iMac)の最低価格は1199ドルだ。Mac Miniは599ドルからだが、この機種の販売台数は微々たるものだ。

2. Appleは競合がないことから強気な価格設定にしている。少数の非公認クローンメーカーを除けば、AppleだけがMacを販売している。つまり、Macの競合は基本的にゼロだ。もちろん、MacはWindows PCの競合だが、両者はまったくの別物だ。ハードウェアは同じでも、OSやソフトウェア、サポートが違う。Appleの方が高くつくが、Windowsにはないおもてなしを求めている多くの人々は喜んで支払うだろう。

3. Appleの戦略的な高価格設定はうまくいっている。Gartnerによると、第2四半期の米PC市場(台数ベース)で、Appleは前年同期の6.6%から8.5%にシェアを伸ばした。流通も重要だ。Macは世界の1万以上の小売店で販売されている。

4. Appleのシェア拡大は印象的ではあるが、Windows PC市場に比べればまだ小さなものだ。価格が主な障壁の1つだろう。HPのDV2946NRがMacBookと比べて、いかにハードウェアが充実していて、しかも大幅に安いかを考えてみよう。Appleの高価格設定は、お手ごろ価格の製品のみを買う多くの人たちを排除している。

5. Windows Vista搭載PCの市場販売支援はこれまで地味なものだった。だがMicrosoftは3億ドルを掛けたVistaキャンペーンを本腰を入れて始めようとしている。現実的な広告は現実的な販売効果をもたらすだろう。Windows Vista搭載のデスクトップとノートPCはMacより安いのだ。

6. AppleはMacの、恐らくより安価な新製品を準備中だ。同社は7月に、粗利率が2008年度第3四半期(4〜6月)の約35%から2009年度には30%にまで落ち込むとの見通しを明らかにした。これほど劇的な粗利率の減少から考えられるのは値下げだ。

 かつてわたしはAppleの価格設定を擁護したことがある。当時は同価格帯のMacとWindows PCを比較した場合、ハードウェアの機能はほとんど同等だったからだ。この半年、特にこの3カ月で状況は劇的に変わった。この広がりつつある不均衡に、もっと注意を払っておくべきだった。これは平均販売価格とは別物だが、無関係ではない。

 Windows PCのASPは下がるだけ下がっており、デスクトップは底値状態で、ノートPCも似たようなものだ。NPDのデータによると、2006年の夏以来、デスクトップPCのASPはほとんど変化していないのだ。ちなみに平均的なノートPCは6月には2年前より177ドル安く売られている。だがASPはもう急落していない。5月のノートPCのASPは714ドルだった。

 「WindowsではデスクトップでもノートPCでも、価格を下げるような現実的な動きは特にない」(スティーブン・ベイカー氏)

 Windows PCメーカーは、ハードウェアをグレードアップすることで補完し合い、差別化し合っている。価格を据え置いたまま、より価値を高めようとしている。一方、MacのノートPCの仕様は、Appleが2月にMacBookとMacBook Proの製品ラインのメジャーアップグレードを発表して以来、現在までほとんど変わっていない。Appleは4月にiMacをかなりアップグレードしたが、それでもメモリとHDDの容量は相対的にはるかに安価なWindows PCに及ばない。

 ミッドレンジのiMacとDellのInspiron 518を比較してみよう(価格はApple StoreとDellのオンラインショップのもの)。

iMac:1199ドル。2.4GHzのIntel Core Duo。20インチワイドディスプレイ(一体型)。1GバイトのDDRメモリ。128MバイトのATI Radeon HD 2400 XTグラフィックス。250GバイトのHDD。8倍速2層式のDVDドライブ。Bluetooth 2.1。802.11g Wi-Fi。Webカム。Mac OS X 10.5。

Inspiron 518:739ドル(150ドルの値引き後)。2.4GHzのIntel Core 2 Quad。19インチワイドディスプレイ。3GバイトのDDRメモリ。Intel GMA X3100グラフィックス。500GバイトのHDD。8倍速1層式のDVDドライブ。Windows Vista Home Premium Service Pack 1。

 あなたならどちらを選ぶだろうか。Macの方がグラフィックスメモリが多いが、DellのPCは簡単にアップグレードできる。DellのPCにBluetoothとWi-FiとWebカムを付けるには追加コストが掛かる。だが、Inspiron 518はメモリ容量はiMacの3倍、HDD容量は2倍で、プロセッサはiMacの「Duo」に対して「Quad」だ。Dellの方がiMacより低価格でより多くを提供する。とはいえ、「より多く」にはWindows Vistaも含まれており、これが気に入らない購買者もいる。

 ASPに話を戻すと、Windows PCとMacの価格差は単純に驚異的だ。そして、2008年におけるMacデスクトップのASPは2006年より111ドル高くなっている。Appleの粗利率が高いのも当然だ。だが、この状態はそう続かないし、Appleはそれを自覚しているだろう。

 Windows PCのASPは限界価格に達し、だがメーカーはそんな中でもシステム仕様のアップグレードを図っている。Appleはこのまま市場シェアを拡大していくか、米国での8.5%というシェアを保つだけにしても、Macの価格を下げて仕様をアップグレードする必要がある。間違いない。

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