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IE 8は「8度目の正直」?

» 2008年09月18日 14時12分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftのおかげで、わたしは10歳若返った気分だ。もしかして今って1998年? どうにもそう思えてならない。

 Microsoftが再びWebブラウザを一新しようとしている。Microsoftがブラウザにこれほど集中し、実行力、コミュニケーション力を発揮しているのを見るのは、1996年から1998年にかけて、同社がNetscapeを相手にブラウザ戦争を繰り広げ、そして勝利したとき以来のことだ。

 だが、わたしが1998年に受けた印象とは違っている部分もある。いい意味での違いだ。10年前、MicrosoftはWindows 98へのInternet Explorer(IE)のバンドルをめぐり、米連邦政府と争った。Microsoftはサードパーティーを不当に軽視し、ブラウザ市場で競争上の優位を獲得しようとしたのだ。だが2008年の今、同社のアプローチは驚くほど違ったものになっている。

 Microsoftはパートナーとの関係強化を図るとともに、競争上の優位性よりも顧客の利益を優先しようとしている。例えば、IE 8では、ユーザーは検索ボックスのドロップダウンアイコンを使って、Googleも含め、各種の検索エンジンを自由に選択できるようになっている。もちろん、別の見方をすれば、これはMicrosoftにとってもメリットとなる。なぜなら、たとえ仮にユーザーがGoogleを選んだとしても、ほかの検索エンジンにワンクリックで簡単に移動できるからだ。Firefoxにも同様のアイコンメニューがあるが、IE 8のようにどの検索エンジンでも選べるわけではない。

 IEをめぐっては開発者の新たな意気込みが感じられる。何しろ、IE 8がパスしなければならない厳しい試験は、AcidのWeb標準テストだけではない。IEに対して実に手厳しい顧客や開発者、コンテンツパートナーの存在があるからだ。IT好きの人たちの間では、Firefoxは愛されているが、IEはバカにされている。Microsoftは好意的なマインドシェアの構築に真剣に取り組む必要があるだろう。そして、それは決して成功しないかもしれない。同社がIEを停滞させてきた時間はあまりに長い。

 IE 8の開発チームは「Microsoftのマネジャーが適切な判断を下すことができ、マーケティングでも優れた腕前を発揮できる」ということをブログとWebキャストを通じて実証している。わたしは2007年には、Microsoftが常々アピールしている「透明性の向上」に向けた取り組みを本気で取り合わなかったが、どうやらIE 8に関しては、ある程度の、あるいはかなりの透明性が提供されているようだ。

 わたしは数週間前の記事でIEチームの透過性を高く評価したところだ。わたしはもう一度それを繰り返しておきたい。なぜなら、これはMicrosoftのほかの製品開発チームも見習うべきモデルだからだ。IE担当ジェネラルマネジャーのディーン・ハチャモビッチ氏とそのチームは、IE開発チームの公式ブログを通じて、単なるマーケティング文句を羅列するのではなく、顧客に誠実に対応し、的確な情報提供に努めている。そしてMicrosoftは9月16日、この新しいWebブラウザに関する一連のWebキャストを実施した。

 評価できるのは以下の点だ。

ストーリーテリング

 効果的なマーケティングのためには、良いストーリーを語る必要がある。主にブログを通じて、Microsoftは新機能をただ宣伝するだけでなく、その機能の詳細、そしてさらに重要なことには、その理由までもをしっかり説明している。

広範なコミュニケーション

 顧客に提供される情報の量とその内容が充実しており、IE 7のβテストやリリース時と比べてはるかに改善されている印象だ。恐らく当時はIEのシェアをFirefoxに奪われつつある時期だったため、Microsoftは守勢に回っていたのだろう。だがこうしたコミュニケーションの充実ぶりは、Microsoftで起きている変化を反映したものでもある。そうした変化は最近のものに思えるかもしれないが、実際には長い時間をかけて実現されつつあるものだ。そして、同社に批判的な向きにとっては、いまだにこうした変化は明確ではないかもしれない。

プラットフォーム化

 アクセラレータやWeb Slicesなどのツールは、IEをブラウザプラットフォームとして再構築するための若干の後退だ。これは、いいスタートだ。ただし、仕上げはモバイルブラウジングであるべきだ。それこそが、IEチームが次に開発者に伝えるべきストーリーだろう。

 Microsoftは16日、追加で21言語版のIE 8のβ2をリリースした。これでIE 8のβ2は合計25言語版が配布されたことになる。これは当然の展開と言えるだろう。わたしがテストしたところでは、このブラウザは驚くほど安定している。

 世の中には「3度目の正直」という言葉がある。またMicrosoftの製品については「3度目のリリースでまともになる」という評判もある。IEに関しては、どうやら「8度目の正直」ということになりそうだ。

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