Windows Vistaが2回目の誕生日を迎えた。だが、誰も気にも留めなかった。
確かに世の中には、お父さんやお母さんが自分の大切な誕生日を忘れてはいないかと不安に思いながら眠る子供もいるだろう。2年前の11月30日、米Microsoftは企業向けにWindows Vistaをリリースした。だが今年の11月30日には、ファンファーレもなければ、2周年を祝う義務的なコメントも発表されず、Microsoftの従業員ブロガーによるコメントすら一切なかった。なんてことだ。Vistaはどうなってしまったのだろう?
第2のWindows Meだ。
Microsoftは既にVistaの後継版に目を向けているが、この後継版はまだリリースもされていない。悲しいことに、誰もWindows Vistaの誕生日を祝いたいとは思っておらず、その存在を忘れてしまっている。そして、多くの企業は依然としてWindows XPを使い続けている。
Gartnerの最近の調査結果によると、既にWindows Vistaを導入している企業は全体の10%にすぎない。リリースから2年が経ち、既にサービスパック1(SP1)もリリースされているWindows新版、そして企業が5年以上も待ちわびていたWindows新版にしては、お世辞にも高いとは言えない採用率だ。
2年前にWindows Vistaがリリースされた際、GartnerはVistaの早期採用は2007年第4四半期に本格的に始まり、2008年第2四半期にはVistaが主流になると予想していた。Vistaには、それまで抑えられてきた高い需要があるはずだったからだ。だが早期レビューでの悪評や企業によるテスト導入でのトラブルの報告の影響でVistaに対する関心は薄れていった。そして1年前、GartnerはVistaに関する見通しを改め、企業での本格的な採用は2009年初めにずれ込むだろうと発表した。そして今では、多くの企業は初代Vistaには移行せず、Windows 7と呼ばれる後継版のVistaに移行することになるとみられている。
Windows 7はWindows Vistaをベースにしている。MicrosoftはVistaを徹底的に作り直すのではなく、Vistaに対する不当な非難を打ち消したいのだ。となると、Windows 7がVistaの作り直しというのは奇妙な話だ。
わたしは2カ月ほど前、ブログに「もはやWindows Vistaは重要ではない」という記事を投稿した。この記事に対して、Microsoft Watchの読者であるマイク・レンナさんは次のようにコメントしてきた。
わたしはVistaにはほとんど触っていない。わたしはITコンサルティングの仕事をしているが、Vistaを習得してクライアントに教えることができずにいる。彼らが何年も前からXPで使ってきた機能が今ではどこに行ってしまったのかが分からない。スタートボタンはどこ? なぜ変わってしまったの? そういった疑問ばかりだ。「マイ ドキュメント」フォルダにしても、今では画像は専用のフォルダに保存される。Vistaでは、ユーザーフォルダと文書フォルダと設定フォルダのツリーがあるということだろうか? ひどくややこしい。わたしはWindows 7に期待して待ちたい。だがWindows 7もVistaをベースにしているということなら、どのようにしてVistaに対する不評を受け継がずに済ませるつもりなのだろう? むやみに機能をいじくり回すのはやめにして、そろぞろぜい肉をそぎ落としにかかるべきだろう。
かねて繰り返し主張しているように、ビジネスにおいては認識がすべてだ。レンナさんの疑問は正しい。どうすればWindows 7でVistaに対する悪評を受け継がずに済むのだろう? まず手始めに、Microsoftはこの種のメッセージにうまく対処し、早期のレビューで幾つかプラスの評価を獲得している。
だがVistaの問題は根強く残っている。なぜならユーザーは引き続き、このOSに関して嫌な経験をしているからだ。同じ記事に対して、トマスというユーザーはひどくイライラした様子で次のようにコメントしている。
これまでに使ったコンピュータ製品の中でVistaは最もイライラさせられるいまいましい製品だ。わたしはこれまで、何かの商品にここまで激怒したことはない。これまでに何度、自分のマシンを持ち上げ、壁に投げつけたいと思ったことか。どう解決したかって? わたしはVistaマシンのそばに本を置くようにした。そうしておけば、Vistaが1日に10〜15回程度フリーズして、そのたびに1〜3分間ほど待たされても、何か読むものをすぐに手にできるからだ。
こうしたユーザーの意見はWindowsにとってアンチマーケティングのようなものだ。MicrosoftはWindows 7の市場においてはそうした流れを避けたいところだ。
もっとも、ユーザーの中にはもっと快適にVistaを利用している人もいる。Vistaに対する悪評を散々聞かされた後に、期待値の低い状態でVistaを使い始めた向きだ。「Vistaの約束、Windows 7では守られる?」というわたしの記事にジェス・ミーツさんは次のようにコメントしている。
わたしはVistaを気に入っている。正直なところ、わたしは皆より遅くにVistaを使い始めた。わたしは自宅のノートPCを買い換えた際には、XP搭載モデルにした。Vistaについては否定的な記事をいろいろ目にしていたから、自分で試してみようともしなかった。だから、仕事でVista搭載のノートPCを使うようになったときには、既にSP1もリリースされ、主要な問題は修正されていた。SP1以降にVistaを使い始めたわたしとしては、なぜ皆が不満を言っているのかが分からない。このノートPCは自宅のXP搭載ノートPCと比べて起動がはるかに速く、シャットダウンも非常に迅速で、動作も速く、UIも優れていて、スタートメニューの検索ツールも実に使いやすくて便利だ。
常に評価が揺れているユーザーもいる。同じ記事に対して、Jeffer03というユーザーは次のようにコメントしている。
最初はVistaを気に入っていたが、その後嫌いになり、また好きになり、また嫌いになった。最近は、以前にはできていたことができなくなっていることに気付かされてばかりで、とにかくうんざりしている。念のため断っておくが、わたしはMS-DOSやWindows NTの時代から、MicrosoftのあらゆるバージョンのOSを使ってきている。わたしはITのプロであり、EA(Enterprise Application)サーバの管理も行っている。
Jeffer03の意見はわたしがVistaに対して抱いている感情とまさに同じだ。それは強い愛憎だ。嫌悪の情は細かな厄介事が組み合わさった結果であり、何か1つ大きな理由があるわけではない。小さなことの積み重ねがVistaをいら立つ存在にしているのだ。とはいえ、Vistaの評判の悪さはそうした小さな厄介事を集めただけでは足りないレベルだ。Vistaは実際、悪いOSではない。Windows XPよりもはるかに優れたOSと言えるような多くの機能を備えている。
だが企業向けにリリースされてから2年が経つも、まだVistaはその悪評を吹き飛ばすほど十分な好評価を受けていない。従って、VistaはMicrosoft BobやWindows Meと同じ運命、つまり、すぐに忘れ去られる運命をたどることになるのだろう。それでもVistaの遺産は引き継がれるはずだ。MicrosoftはMicrosoft Bobで導入したユーザーコンセプトの多くをその後、各種の製品に採用している。Windows Meで導入されたデジタルメディア機能もWindows XPやVistaのほか、一部のLive製品やLiveサービスで復活している。
Vistaの誕生日はほぼ全員に無視された。Microsoftの従業員も含め、多くの人たちはこのOSを完全に忘れたがっているのかもしれない。だがVistaはWindows 7以降の製品で生き残っていくだろう。それは確実だ。
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