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社員ブログを信じる? まさか!

» 2008年12月11日 16時28分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftの5000人以上の社員ブロガーの皆さんに悪い知らせがある。誰もあなた方のことを信じていないらしい。

 Forrester Researchは先ごろ、各種の情報ソースに対する消費者の信頼度に関して、驚くべき調査結果を発表した。それによると、企業の社員ブログに対する信頼度は18の選択肢のうち最下位となっている。

 「企業ブログに対する信頼度は新聞やポータルサイトだけでなく、Wikiやダイレクトメール、企業メール、掲示板の投稿よりも低くなっている」とForresterのアナリスト、ジョシュ・バーノフ氏は9日付のブログ記事で語っている。「企業の社員ブログを読むオンラインユーザーのうち、その内容を信じていると答えたのはわずか16%となっている。企業にアドバイスする立場にある人や社員ブロガーはこの調査結果を真剣に受け止める必要があるだろう」

 人は自分が知っている相手を最も信頼するというのは少しも意外なことではない。だが、個人とは関係のない情報ソースの中にも、信頼されているものはある。Forresterの調査では、回答者の50%は検索エンジンを信頼していると答えており、社員ブログが18位にランキングされたのに対し、こちらは第3位にランクインしている。

 「そもそも、人々は概して企業を信頼していない。それなら、プレスリリースや広告を信じないのと同様、社員ブログを信じなくても当然だ」とジョシュ氏は指摘している。

 ジョシュ氏の同僚であるジェレミア・オーヤン氏はブログに次のように記している。「企業の社員ブログは、かつてスーパーブロガーのロバート・スコーブル氏が2006年に実現したような真の透明性は実現できずにいるという意見の人もいるだろう」

 念のために説明しておくが、スコーブル氏はMicrosoftの元エバンジェリストで、ブログでの率直な発言で注目を集めた人物だ。同氏はブログを通じて、会社の透明性を推進し、多くの支持者を獲得し、Microsoftを退社後もその状態は続いている。なんと! スコーブル氏のTwitterには4万2936人ものフォロワーがいる!

 わたしはこれまでも、スコーブル氏の退社後、Microsoftのブログは明らかにPR路線に変わったと主張してきた。その傾向は広がりつつある。「多くの企業ブログは、プレスリリースをより口語的に書き直したものになっている。それでも、市場での実際の会話とはどこかずれている」とジェレミア氏は書いている。

 そうだった、わたしは2007年9月に「MicrosoftのPRブログはどのように機能しているか」という記事で、一見個人的に見えるブログにいかにしてPRの意図が隠されているかについて説明している。実際、そうしたブログの中には、PRの専門家によって書かれたものや、専門家のチェックを受けているものもあるようだ。

chart (資料:Forrester Research)

 消費者は企業の社員ブログをあまり信用していないようだが、残念ながら、新聞雑誌記者は社員ブログを信じているようだ。プレスリリースは決して引用しないような新聞雑誌記者でも、Microsoft社員のブログはあっさり引用している。そうしたブログの多くはプレスリリースの代わりに会社発表の役割を果たしている。一般の人たちでさえ何が起きているのかを理解しているというのに、なぜ新聞雑誌記者にはそれが分からないのだろう? Microsoftのブログを引用する際には少し猶予期間を置くという、わたしのやり方に誰か賛同してくれる人はいないだろうか?

 これは重要な問い掛けだ。なぜなら、新聞雑誌記者にブログの内容を引用してもらうことによって、MicrosoftのPR部門は正規のPRチャンネルを回避できてしまうからだ。Microsoftは文書化したQ&Aや社員同士のインタビュー動画をサイトに掲載し、新聞雑誌記者はそうしたQ&Aや取材動画から引用を行っている。そのおかげで、MicrosoftのPR部門は製品マネジャーや幹部を記者らの意地の悪い質問から守ることができているのだ。では、新聞雑誌記者が皆、こうした情報を無視したらどうなるだろう? MicrosoftはeWEEKやCNETなどのITニュースメディアを介してPRを行う必要が生じるだろう。PR部門に操られたブログ記事を新聞雑誌記者が相手にしないようになれば、Microsoftも戦略を変えざるを得ないだろう。

 Forresterの調査はそのもっともな理由になる。なぜなら、新聞雑誌記者が太鼓判を押さない限り、ブログを信頼する人はあまりいないということだからだ。ニュースメディアに対する信頼度が抜きんでて高いというわけではない。だが、3つのメディアカテゴリーが獲得した39%という信頼度は、企業ブログの16%と比べれば上出来だ。ただしForresterによると、ブロガーに限定すれば、39%の読者が企業ブログを信頼しているという。

 恐らくMicrosoftの社員ブロガーや外部のPRプロフェッショナルは、ブログに寄せられるコメントなどの反応を見て、「社員ブログは信頼されており、顧客を効果的に巻き込んでいる」と考えているだろう。Microsoftの幹部とPR担当者にアドバイスしたいことがある。そうした読者グループの規模が実際にどの程度かを一度調査してみたらどうだろう? 恐らく、ごく少人数だが主張の強いグループがフィードバックを提供していることが分かるだろう。そうした状態は企業の視野を狭めることになりかねない。わたしなら、そうしたグループの反応だけを見て製品に関する重大な決定を下したりはしない。

 思うに、景気の悪化が進む中、人々はますます企業の社員ブログを信じなくなるのではないだろうか。たとえ何と呼ぼうと、車のセールスマンによるブログはセールスマンのブログだ。何かを売ろうとしている人のブログであり、何か隠された意図を持っている人のブログなのだ。

 ジャーナリズムにも責任はある。わたしにそれを語らせれば、ブログ記事を優に3つは書けるだろう。だが理論上は、新聞雑誌記者の方が公平な立場にいるはずだ。なぜなら、彼らは何かを売ろうとはしていないからだ。eWEEK編集部では、編集チームと販売チームははっきり分かれている。わたしは販売の人間とは決して交わっていない。編集内容に影響を及ぼしたり、公平性を求める努力が損なわれるのを避けるためだ。

 厳しい経済情勢が続く中、広告収益の減少に伴い、今後、より多くの報道機関がプレッシャーにさらされることになるだろう。願わくば、報道の公明正大さ――あるいは少なくともそれを目指そうという思い――が不況を切り抜けられますように。

 わたしが懸念しているのは、ブログとその広告主との関係、さらに悪い場合には、記事で取り上げている企業とブログとの関係があまりに緊密になることだ。最悪なのは、記事で取り上げているまさにその企業にブロガー自身が投資しているようなケースだ。そのようなブロガーには何か隠された意図があり、企業のPRを行う社員ブロガーと大差ない。正体知れたりだ。

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