“売る”ためのコミュニケーション──お客様の3つの感覚モード(3)コミュニケーションをワンランクアップ!(1/3 ページ)

信頼関係を築く方法として、今回は「3つの感覚モードの一致」を取り上げる。接客時のセールストークなどにおける、具体的な活用方法も紹介します。

» 2006年09月19日 23時13分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 前回、信頼関係を築く方法を3つ紹介しました。相手の言葉を繰り返すバックトラッキングはもちろん、声のトーンや口調を合わせるペーシング、姿勢やボディランゲージを合わせるミラリングも、信頼関係を築くために有効です。ただ、もちろん、相手の立場や気持ちを理解したいという気持ちが大前提です。

3つの感覚モード(モダリティ)──視覚傾向・聴覚傾向・体感覚傾向

 今回はこれに加えて、もう1つの方法「3つの感覚モード(モダリティ)の一致」を紹介します。感覚モードとは、厳密にいうと、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の5つの感覚のこと、つまり五感です。ただ、触覚・嗅覚・味覚は身体に起こる感覚「体感覚」ということで1つにまとめ、大きく3つの感覚とします。

 人間は五感を通して外の情報を取り入れます。その際、目から入る情報が多い人、耳から入る情報が多い人、肌から入る情報が多い人というように、情報を取り入れる道筋は個人差があります。

 例えば、「ハワイ」といったら、白い砂浜、青い海、青い空、ヤシの実……などのように、目から入る情報をたくさん思い出す人がいます。あるいは、波の音、滝の音、遠くから聞こえるハワイアンソング、外国人の声の中に日本人の声も聞こえてくる……ように、音の情報をたくさん話す人もいます。さらに、熱い砂浜、じりじりした日差し、流れる汗、もわっとした空気、甘い香り……のように、体感覚の情報が多い人もいます。

 もちろん、人間にはこの3つの感覚すべてがあります。ただ利き手があるように、視覚・聴覚・体感覚のどれかが強い/弱い傾向があります。「3つの感覚モード(モダリティ)の一致」とは、相手の感覚傾向に合った対話をすることによって、信頼関係を築くやり方です。

3つの感覚傾向の特徴

 各感覚傾向の人の特徴を紹介しましょう。

 視覚傾向の人は大抵、早口です。思い描けるさまざまな情報を持っていて、たくさん言うことがあるので、ついつい早口になってしまうのです。視覚傾向の人に対して大事なのは目を見ることです。相手の目をしっかり見て話すこと。「アイコンタクトをしないのに、どうやってコミュニケーションとるの?」と思うのですね。また好きなことは、外出/買ってきてもらうこと/見せてもらうことです。とにかく出歩いて見て回ることが好きです。見た目やビジュアルに気を使い、服装やイメージを大事にします。

 聴覚傾向の人は、聞こえてくる音や声、言葉が大事です。しかも話が、ほかの人にとって筋が通っているかではなく、自分の中で筋道が通らないと納得しません。口調は一本調子で、つらつらと話します。目を見る代わりに耳がその人に向きます。講義を聴いているときに目を閉じている人もいます。視覚傾向の講師だと、「寝るな、ちゃんと聞いているのか!」となる。聴覚傾向の人は、言葉で言われるのが好きです。文字が好きで、本を読むのが好きです。聴覚傾向の人には、口で言ったり、メールや手紙を書いてあげたりすると喜びます。

 体感傾向の人の話し方は、こんな感じです。「こう……なんていうのかな……こう、なんていうの、(力が入っているような感じ)こう、バーっと、ガーっときたときに、カーっときて、なんか、クッときたときというか……。コミュニケーションはやっぱり、こう、胃のあたりがじんわりと(意味のない身振り手振り)……。で、うわーっというのが、スーっときたときに……」と、なんだか言葉だけではよく分からないですね(笑)。口調は3つの感覚傾向の中で一番ゆっくりです。聴覚傾向の人からすると、「もう少し論理的に話せ」と言われるし、視覚傾向の人からは「もっと全体がよく見えるように話せ」と言われます。

 体感傾向の人は触れるのが好きですから、「がんばれよ」みたいな感じで肩をたたくなど触れてあげるといいです。また雰囲気が大事です。心地よいソファやブランケットがあるようなところで、恋人とくっついてゴロゴロするのが好きです。

 余談ですが、「世界の中心で愛を叫ぶ」の主人公2人の感覚傾向が何だか分かりますか? ヒロインは、主人公の男の子に言葉を吹き込んだテープを渡します。つまりウォークマン交換日記をするのです。彼女は直接会うよりも、テープに言葉を吹き込んで彼とやり取りする方を好む、典型的な聴覚傾向ですね。一方、男の子の方はどう見ても視覚・体感覚傾向が強い。「テープに吹き込むなんて面倒くさい。会って話せばいいのに」という感じです。でも、彼女のことがとても好きなので、やむを得ずやっているという雰囲気が出ていました。


 このように、人は視覚傾向、聴覚傾向、体感覚傾向に分けられますが、どんな人でもすべての部分を持っています。利き手のように考えてください。右利きだけど、左手を使えないのかといえば、そうではありませんよね。この感覚傾向も同じです。だから訓練次第で鍛えることができます。大事なのは、自分の傾向を知り、訓練して全感覚を鍛え、どんな人とでも信頼関係を築けるようになることです。

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