第2回 相手を説得する──「人の評判タイプ」と「自分の納得タイプ」平本メソッド 行動の指針(2/2 ページ)

» 2007年02月16日 12時20分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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平本 「自分の納得タイプ」の人に対応するときのもうひとつのコツは、「イエス」を引き出していくことです。これを「Yes Set」といいます。人間はイエス、イエスと、肯定し続けると、そのまま全部イエスと答えてしまう傾向があります。例えば、これはお茶ですよね。

房野 はい。

平本 これは電子手帳ですね。

房野 はい。

平本 これは紙ですね。

房野 はい。

平本 これはホワイトボードですよね。

房野 はい。

平本 これは時計ですよね。

房野 はい。

平本 ちょっと1000円貸してもらえますか?

房野 は……危ない、危ない。

平本 (笑)これはちょっとテーマが違い過ぎますが、一瞬、はいと言いそうになるでしょう? モノを買う状況では、お客さんは、迷っているわけです。例えば、パソコンを見に来て、買おうかどうしようか迷っている人なのです。その人に、「バッテリーは8時間、持つので……ご存じですか、安心ですよね……CPUも、そう、速いですよね。メモリもこれだけあって……よくご存じですね。HDDは○Gバイトで、ああ、本当によくご存じですね。私がいろいろご説明しなくても、良さをご存知ですね。じゃあ、私にいろいろ言われなくても、買うって、もう決めてらっしゃいますよね」、と薦めると、自分の納得タイプの人は買う気になります。

房野 買わないとは、言いにくいですね。

斎藤 自分がセールスされる場合を思い出してみたんですが、「よく売れているんですよ」とかの「評判タイプ」で薦められると、大抵、「今日はいいや」って思っちゃいます。

平本 上手なセールスマンは、知らず知らずのうちに必ず、どちらかのアプローチをしているものです。「自分の納得タイプ」の人に対応するときは、自分が知っていたとしてもお客さんの方がよく知っている、という態度で接しているはずです。もちろん、このタイプのお客さんでも、スペックをよく知らない場合もありますよ。それでも、少なくとも「良さをご存じですね」とは言えますよね。「房野さんは、この良さをご存知ですよね」と言われたら、知っていなくても、知らないとはいえないでしょう?

房野 そうですね。

平本 そうすると、「Yes Set」を引き出せます。「じゃあ、私の意見なんか参考にならないですよね」「私に言われなくても、良さを知っていますよね」「じゃあ、私に言われることもなく、これをご購入されるというのは、決めてらっしゃいますよね」、という具合です。

房野 逃げ場がなくなるような感じですが……

平本 (笑)買おうと思っている人、迷っている人には有効です。ちなみに、斉藤さんはどちらのタイプですか?

斎藤 仕事とプライベートだと違いますね。仕事は「人の評判タイプ」で、周りの評判を気にします。プライベートのほうは、自分が納得するかどうかで決めます。

平本 今、買おうかな、と迷っているプライベートの商品はありますか?

斎藤 金融商品をちょっと考えています。でも、「これ、人気ですよ」って薦められても、「僕は結構です」となってしまうんですよね。

平本 例えば、金融商品がいっぱいあって、私がそのセールスマンだとしましょう。「私に言われなくても、斎藤さんは、この金融商品の中で、ご自身の判断で、これだ、というのはおありですよね?」

斎藤 「そうですね、この辺が気になっているんですよね」

平本 「この辺は、どんな点を魅力的だと感じられているんですか?」

斎藤 「リスクはあるけれど、ちゃんともうかると思うんですよ」

平本 「ちゃんと儲かる。さすがですね、よく勉強されていますね」……こう言われると、どうですか?

斎藤 買うつもりで来ているので、購入すると思います。

平本 では、「あ、それ、私もお薦めしますよ」と言われると、どうですか? 「実は、他のお客様もみんないいっておっしゃっているんですよ。ウチのスタッフも、プライベートで買っているくらいです。これ、お薦めですよ」って言われるとどうですか?

斎藤 あまり、背中を押されている感じがしないんですよね〜。

平本 そうでしょうね。

斎藤 逆に、仕事で参考になる本を買うという場合には、ベストセラーは必ず読むようにしているんです。人気のあるサイト、とかもチェックします。見逃して損することは避けたいですね。

平本 なるほど。では、斉藤さんは仕事面では「人の評判タイプ」で、先週の「向かうタイプ/避けるタイプ」では、避けるタイプなのですね。


おまけ 気になる人をデートに誘う場合(2)

 「人の評判タイプ」と「自分の納得タイプ」で、デートに誘うアプローチは次のような感じです。

 「人の評判タイプ」の人を誘う場合、「AちゃんもBちゃんも、みんなディズニーランドに行っているよ」「雑誌の○○でも、面白いって書いてあったよ」などの言い方が有効です。これは、比較的、簡単ですよね。

 一方、「自分の納得タイプ」の人を誘うときには、こちらからはなく、彼女(彼氏)に自分でどんどん言わせてください。「ディズニーシーが面白いって……あ、そうなんだ、よく知っているね」「へえ〜、そういうアトラクションもあるんだ」「それが面白いんだ」「それ、いいね〜」「ディズニーシーって、本当に楽しいところなんだね」と受けていると、「Yes Set」が出てきます。そうすれば、「やっぱり行くしかないね」という流れに持っていけます。


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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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