新人たちの「免疫力低下」現象を見過ごしていないか【個人編】樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

初々しかった新人たちも配属後半年ほどで落ち着いてくる。ここで見逃してならないのは、新人たちが入社時や配属時に持っていた“自己免疫力”を失っているのではないか――ということだ。

» 2007年11月30日 12時10分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 赤ちゃんは生まれてから半年間、お母さんの胎内にいたころの免疫が効いていて病気にかかりにくいという。これと同じように、新社会人も自由な学生時代の恩恵で、半年は免疫が効いていて、社会に“毒”されずにいる。

 ところが、あれほど初々しかった新人たちも、配属後半年ほどで少し落ち着いてくる。もちろん、会社の仕事を少しは理解するようになってきたことや、社風や先輩たちの雰囲気に慣れてきたことも要因だろう。ここで見逃してならないのは、新人たちが入社時や配属時に持っていた“自己免疫力”を失っているのではないか――ということだ。

免疫力低下に効く「自信ワクチン」「笑顔マスク」

 自己免疫力の喪失は「体力」「気力」「知力」に影響してくる。仕事のストレスや運動不足、通勤の厳しさ、日照不足、不味いコーヒー、連日の飲み会、仕事へのネガティブな印象、学生時代へのノスタルジー、こづかい不足、人間関係の複雑さなどが全部重なって体力を失っている。どんなにタフな新人でも逃れられないのである。

 男性の場合、今まで病気にかかったことがない人が入社後半年ほどで、下痢を起こし、1〜2年で、急に風邪を引き始めたりする。3年ほどで体力の大きな低下を感じ、4年目に腹が出っ張り始める。学生時代のスポーツマンは、どこに行ってしまったのか。

 多くの新人たちがこうして免疫力を失う一方、まったく失わない者もいる。どうしてこのような差が出るのだろうか。筆者は、免疫力低下の最も大きな要因は本人が持つ自信の大きさと考えている。しっかりと自信を持っている者は免疫力も強い。学生時代にたくさんの自信を獲得しておくことは、社会に出たあと免疫力の低下の影響を比較的少なく受けることになるのだ。

 自信が免疫力低下の「維持」だとすれば、免疫力の「予防」に重要な要素は「笑顔」。自然な笑顔は会話や仕事の中から出てくる。周りの触れ合いがなくなると笑顔は消えていくのである。

 とはいえ、ひとりで笑顔を保つのは難しいと思う読者もいるだろう。みんながピリピリしている時に笑っているとなんだか不謹慎な気もする。だが、あなたが笑うことで職場の雰囲気も変わるのだ。さまざまな職場環境を見てきたが、普段はみんなに笑顔があふれているところこそ、いったん緊急事態になると結束が早い。参考までに、強い企業の特徴は普段の笑顔と緊急時の結束力と思っている。ユーモアが自由な発想に結びついているのだ。

どこでも同じ、逃げられない

 新人の中には、仕事が自分に合わないということを理由として、免疫力を失うことを本能的に直感して辞職する人すらいる。とはいえ、ほかの仕事に就いても免疫力低下の危険性からは根本的にまぬがれないし、転職先が肌に合わないと再び辞職するなんてことになりかねない。

 仕事を辞めることが厄介なのは、自分を殻にこもらせてしまうこと。他人との接触も少なくなり、会社に在籍していたころに稼いでいた経験値も増えない。いつまでも学生の雰囲気が抜けないままになる。こうなると企業も採用しづらくなってしまうのだ――。

免疫力低下現象のチェックと対策8カ条【個人編】
低下現象 対策
第1条 軽い下痢は続かないか? 通勤途中に大きい方に行くことはないか? 飲み過ぎ、ジャンクフードの食べ過ぎ、肉類過剰を止めること。たまには野菜も上手いぞ
第2条 コーヒー、ソフトドリンク、ジャンクフード、酒に注意。軽く一杯のつもりが、いつもいっぱい飲むことになっていないか? たまに飲みつぶれるのもいいが、いつもダラダラで飲むなよ
第3条 のど、鼻の調子は悪くないか? 家に帰れば、手洗い、うがいを励行。風邪は周囲にも迷惑だ
第4条 眠れなくなっていないか? 睡眠せずにいい仕事はできない。平日2日はノー深夜デー。夜の仕事を朝に回せ
第5条 会社での午後、以前にも増して眠くなっていないか? 昼休みの終わりは15分睡眠
第6条 長く旅行に行っていない。スキーも忘れた。映画も面倒。実家にも行かなくなっていないか? 生身の人間だから、たまには気分転換が必要。簡単に休めないって? 意地でも休むのだ
第7条 食欲が全体的に落ちていないか? ジャンクフードを止める。少なくとも毎日食べるのはやめよう
第8条 笑うことが少なくなっていないか? たまには、親友と笑い合おう

今回の教訓

笑う門には福来たる――。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

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 1946 年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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