「あまり走らないんでしょ?」と思いながらエコカーに乗ってきたエコプロダクツ2007

“エコカー”と聞くと、環境には優しいけどスピードが出ないつまらない車と思いがち。しかしエコプロダクツ2007で試乗したエコカーたちは、ガソリンエンジンとは違った不思議な加速をする車だった。

» 2007年12月14日 23時58分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 “エコカー”と聞くと、環境には優しいけど、スピードの出ない車、運転して楽しくない車──というイメージを持っていないだろうか。いやいやそれは大いなる誤解。エコカーには、ならではの“パワフルな”面白さも持っているのだ。

 12月13日から東京ビッグサイトで開催されている「エコプロダクツ2007」。会場で実施されている「エコカー乗車体験」コーナーで、クリーンディーゼルエンジン搭載車と電気自動車に試乗してみた。

ガソリンエンジンでは味わえない加速感

 まず試乗したのは三菱自動車工業の「iMiEV」(アイミーブ)。これは軽自動車「i」(アイ)の車体に、新開発のリチウムイオン電池を搭載した電気自動車だ。

 「航続距離は160キロなので、セカンドカーということで軽自動車をベースにしました。でも、最高速度は軽自動車の自主規制最高値の時速130キロだし、最高出力も47kW(64ps)なんです」

 そう話してくれた、三菱自動車ブースの担当者。では、その走りはいったいどんな感じなのか。

 まず感じたのは、とにかく静かなこと。ガソリンエンジンのように“爆発”が起きているわけではないので当たり前なのだが、電車のようなスルスルという感触に驚く。そしてグッとアクセルを踏み込んでもらったときの加速感は、ガソリン車とは異なる感触のものだった。

 「モーターは停止時に最大トルクが出るんです。だからガソリンエンジンより加速はすごいですよ」とドライバーの方。

 iMiEVが搭載しているモーターは最大トルク180Nm(18.4kgm)。ガソリンエンジンのi(アイ)が4000回転で最大トルク57Nm(5.8kgm)なのに対し、停止時から3倍近いトルクを出すわけだ。変速機(トランスミッション)がないのでそのまま比較できるわけではないが、高いトルクを保ったまま加速する感覚はガソリンエンジンとは全く違う。

 ちなみにトルクというのはエンジンがモノ(自動車本体)を動かす力を表す。トルクに回転数を掛けたのが出力で、馬力とかpsと呼ばれるもの。高回転まで回るエンジンなら馬力を上げることはできるが、加速はトルクで決まるといわれている。

 「このiMiEVはハンドリングも良いんです。一番重いバッテリーが車体中央の下に積んであるので、低重心なんですよ」(ドライバーの方)

 電気自動車用の専用充電ステーションだけでなく、家庭用の100ボルト電源からも充電できる、いわゆるエコカーなのだが、走りのほうについ意識が向いてしまうiMiEVだった。

クリーンディーゼルはハイパワー

 お次に試乗したのは、日産が欧州で販売している「エクストレイル」のクリーンディーゼル搭載車だ。

 「ほら、振動がほとんどないですよね。ディーゼルのイメージと違うと思います」。エンジン始動直後にドライバーの方はそう言った。走り出すと、パワーの出方が違う。

 この2000ccターボのクリーンディーゼルエンジンは110kW(150ps)版でも、トルク320Nmを発する。クリーンディーゼルというと、CO2排出量の少なさから“エコ”と呼ばれることが多い。しかし、ディーゼル車の販売比率が5割を超える欧州では、エコという理由だけでなく、“パワフルだからディーゼル”──なのだそうだ。

 このエンジンを搭載したエクストレイル デュアリスは、2008年秋に日本でもお目見えする予定。「パワフルなディーゼルのイメージには、エクストレイルのようなSUVが合っていると思いますので」と日産の担当者。

 日本ではクリーンというよりも、「ススが出る」「振動がうるさい」などのイメージが強いディーゼルだが、このエンジンでは、燃料の燃えかすであるススを完全焼却する仕組みや、リーンNOx触媒を使ってNOxを浄化する。実はエコかつパワフルなディーゼル。“スス”のイメージの払拭が現在の課題だ。

 2台にしか乗れなかった今回の試乗だが、“エコカー試乗”にも関わらず、ドライバーの皆さんも、試乗した本人も、話題になったのは“エコさ”ではなく“パワフルさ”。エコかどうかは関係なく、エコカーが欲しいと感じる2台だった。

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