分かっちゃいるのに取りかかれない対策(2)【解決編】シゴトハック研究所

“弱い自分をどうするか”について悩んだことはありますか。前回は弱い自分を前提とした方法を紹介しました。今回は弱い自分を変えるやり方を考えます。

» 2008年02月01日 16時05分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 今回の課題:「弱い自分」を変えるには?

 コツ:「調節」でネジを巻く


 前回に引き続き、「分かっちゃいるのに取りかかれない」問題について考えていきます。前回は、次の2つの方法をご紹介しました。

  • 「15分だけやる、その後は休憩してもいい」ことにする
  • 完了報告であれ中間報告であれ、相手にその予定時刻を宣言し、これを守る

 この2つの方法によって、

  • 取りかかりの心理的ハードルを下げる
  • 取りかからざるを得ない状況に自分を追い込む

 という効果を引き出すことができます。

 ところで、このような方法が必要になる背景を考えていくと「弱い自分をどうするか」という課題に行き着きます。「分かっちゃいるのに取りかかれない」原因はさまざまあるかもしれませんが、意志の弱さはその最たるものといえるわけです。

 この課題へのアプローチとしては次の2つが考えられるのですが、

  1. 「弱い自分」を前提とする
  2. 「弱い自分」を変えていく

 前回ご紹介したアプローチは、「弱い自分」を前提としたものといえます。言い換えれば、弱い自分であっても実行できる方法です。タイマーや他人のプレッシャーをテコに「弱い自分」という重荷を動かすわけです。

 一方、「弱い自分」を変えていくというアプローチも当然あるわけですが、せっかくですからこちらにもチャレンジしましょう。

「弱い自分」を変える方法

 「弱い自分」を変える上では、ベンジャミン・フランクリンのやり方が参考になります。彼が25歳の時に確立したという「フランクリンの一三徳」がそれです(書評参照)。進め方は以下の通り。

  1. 達成したい項目(徳)をリストアップする
  2. 毎週1項目だけ「重点項目」としてピックアップする
  3. 1週間、その項目だけに注意して日々を過ごす
  4. 毎晩、1でリストアップした全項目をチェックして達成度合いを確認する
  5. 「重点項目」だけはきちんと達成できるようにする
  6. 1週間毎日欠かさず「重点項目」が達成できたら次の項目へ(1に戻る)

 この手順を、達成したい項目の数だけ回していけば、すべての項目を達成できる、というわけです。フランクリンの場合は13項目ですから最低でも13週間必要です。

 とはいえ、フランクリン自身も全13項目を達成できたわけではありません。ここで大切なことは、

  • 自分の達成したい項目を把握していること
  • その中で今この瞬間は具体的に何をしたらいいかが分かっていること

 という2点です。マラソンでいえばコース全体と、今いる場所の両方が把握できている状態です。どちらかが欠けても、走り続けることは難しくなるでしょう。何となく「やらないといけないなー」「これも大事だし、あれも大事だなー」と思っているだけでは、目的地も現在地もあいまいなため、なかなか行動に結びつかないわけです。

 そこで、上記のフランクリンの方法を応用してみます。「弱い自分を変えたい」ということであれば、その弱さを具体的な項目に分解していき、1つずつ時間をかけてじっくりと取り組んでいくのです。

 当然、時間はかかるでしょう。でも、「付け焼き刃」という言葉もあるように、短時間で身につけたことは簡単に忘れてしまうものです。逆にいえば時間をかけて身につけたことというのは、その後の人生に大いに役に立つということになります。

「同化」に行き詰まったら「調節」でネジを巻く

 なお、今回ご紹介した考え方と方法は「調節」といえます。一方、前回のタイマーや他人のプレッシャーに頼る方法は「同化」です(2007年1月26日の記事参照)。

 今回の例における「同化」と「調節」の違いは次の通りです。

「同化」と「調節」の違い
同化 タイマーや他人のプレッシャーに頼る(弱い自分をカバーする)
調節 弱い自分を変えていく(タイマーや他人のプレッシャーに頼らない)

 上記の記事でも書きましたが、「同化」に頼りすぎると行き詰まることになる、すなわち「待ち受け」モードになりがちです。「分かっちゃいるのに取りかかれない」という状態は、ちょうどゼンマイが切れた時計のようなものです。「そもそも自分はどうしたいのだろうか?」という自問を通して課題を明らかにし、時間を掛けてこれに取り組むという「調節」で巻き直していきましょう。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


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