バラバラな情報が「つながって」意味を持つ、という例をもう1つご覧いただきましょう。
図1はいずれも日本の地形の一部で、(a)と(b)は四国の佐田岬半島と吉野川、(c)と(d)は紀伊半島の紀ノ川と櫛田川、(e)は愛知県の渥美半島のあたりです。
これらの地形は、個別に見ている分には、ただの半島や川でしかありません。しかし全体を通して見ると、ある違った意味が見えてきます。それが図2です。実は図1の地形はいずれも「中央構造線」と呼ばれる、関東から九州までの西南日本を縦断する大断層系に沿って存在するものなのです(図2)。これは、図1のように地形をバラバラに見ていたら分かりません。すべてをつなげて初めて見えてきます。
「中央構造線」は単にたまたま並んでそう見えているのではなく、日本列島を形成した大きな地殻変動の痕跡です。ここに実は「専門知識」の構造に関わる1つの典型的なパターンがあります。大まかに「メカニズム・個別事象・統合概念」という3つのキーワードで語ることができるそのパターンを、いったい何と呼んだらよいかは私も今なお考えているところなのですが、とりあえず本稿ではこのまま話を進めましょう。
現実の世界は、何らかの「メカニズム」によって動いています。例えば「日本列島を形成した地殻変動」がその「メカニズム」の一例です。
するとそのメカニズムの働きによって「個別事象」が起こります。佐田岬半島、吉野川、紀ノ川、などの個別地形がその例です。この「個別事象」は人の目に見えやすいので、通常、人がまず意識するのはこの部分です。しかし、個別事象が共通のメカニズムから生まれたものであるならば、それを束ねてみるとそこに何らかの共通する意味を見出すことができます。これが「統合概念」であり、「中央構造線」がそれに該当します(以上、図3)。
理想的なのは、この3層を一気通貫ですべて理解することです。そうすれば、すべての情報が意味のネットワークの中にがっちりと結びつけられ、ちょっとやそっとでは忘れないし応用も効く、タフな「専門知識」が獲得できます。
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