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» 2008年05月21日 15時43分 UPDATE

もう大丈夫、あなたを救う「うつ対策119番」:メンタルヘルスの社内教育

ここ数年、メンタルヘルスへの取り組みは企業の大きな課題となっている。各企業でさまざまな対策が取られてはいるものの、過重労働や職場の人間関係などのストレスにより、うつになる人があとを断たない。この現状を改善するために総務ができることとは? 改めて考えてみよう。

[SOS総務]
SOS総務

 2006年3月、厚生労働省から「労働者の心の健康の保持増進のための指針(以下、指針)」が発表された。これは企業におけるメンタルヘルス対策の指針となるもので、それによるとメンタルヘルス対策は、問題や病気を予防する段階(1次予防)、早く見つけて対処する段階(2次予防)、リハビリの段階(3次予防)、そして理想的な形のゼロ次予防(パフォーマンスの向上)という4つの段階に分類することができる。今回はその1次予防である「企業内での効果的な教育」について見ていこう。

うつ状態の部下を励ましてしまったA課長(事例)

 A課長(男性38歳)は、15人の部下を持つ技術部門のマネージャー。部下の中でも特に専門技術の能力の高いBさん(男性30歳)に期待をかけ、工場の技術指導を担当してもらうべく、やや高度な仕事を与えながら指導していた。Bさんは知識や技術ののみ込みが早く、A課長の期待通りに半年間で多くの技術指導ができるようになった。

 ところが、ある日、いつもは期日までに資料を準備するBさんが、期日に間に合わないという事態が発生。A課長が確認したところ、Bさんは、肩凝りがひどいとか頭が痛いなどと、ちょっとした体の症状をいい訳に資料ができないと主張した。山田課長は、いい訳ばかりをするBさんを励ますつもりで、「君ならできるはずだ。頭痛は薬でも飲んで治し、早く仕事を片付けてくれ!」と声をかけた。Bさんは「はい、がんばります」と返事をしたが、そのあとも仕事は進まず、とうとう欠勤してしまった。

知識さえあれば

 うつ病の初期症状とその対処方法についてマネージャー向けの教育をしておけば、事例のようにBさんがそれまでのBさんらしくない「頭痛」などを訴えた場合、A課長はうつ状態を疑っただろう。うつ病を疑えば、Bさんを励ますことなく、話を聞き、悩みの相談にのったり、業務が問題であれば業務の調整をしたはずだ。A課長が適切に対応できれば、欠勤は予防できるし、Bさんにとっても困難を乗り越えて人間的に成長する機会となる。

 教育の中でも、特にマネージャーに対する教育は、職場の雰囲気が改善する効果(東京大学・川上憲人)や、部下の心理的ストレス反応が低下する効果(産業医科大学・堤 明純)が証明されている。年に1回1〜2時間の教育をすることにより、ストレス病を防ぐだけでなく、職場の雰囲気が改善され、ひいては職場のパフォーマンス向上ができれば、教育にかかるコストは企業にとって決して高くはない投資といえる。

教育を行うための準備

 社内のメンタルヘルスの方針や施策は衛生委員会などで審議するよう指針で述べられているので、教育を行う前には、会社として「1次予防に重点を置いたメンタルヘルスの方針」を明確にしておきたい。教育を受ける側にとっては、会社がどのような方針を持っているかによって、その印象がかなり変わる。

 例えば、会社が「うつ病の早期発見と対処」という考え方で施策を進めると、社員は「うつ病を見つけられたら会社をクビになるかもしれない」と思ってしまうし、そうなれば、ストレス関連の病気に対する偏見が進むことになる。

 一方、会社が「働きがいを高めるためのメンタルヘルス」という方針にすれば、従業員の心理的な抵抗は少なく、相談窓口も利用しやすくなると思われる。

 もう1つのポイントは、具体的な施策をある程度決めてから教育を行うことだ。教育により社員やマネージャーがメンタルヘルスに対する知識を身に付けても、いざ問題が生じたときに相談できる窓口がないと、教育の効果が表れない。  このように、教育と施策を両立しておき、導入段階では以下の表のような内容の教育を行おう。

メンタルヘルス教育の対象者と教育内容のポイント
対象者 教育内容のポイント
幹部 ・社会的責任と法令順守としてのメンタルヘルスケア
・メンタルヘルスケアに関する方針と計画の重要性
・メンタルヘルスケアの正しい理解(推進上の留意点)
マネージャー ・メンタルヘルスにおける会社の方針と対策(相談窓口などの紹介)
・部下のストレス症状の早期発見とその対応方法
・職場ストレス管理のためのマネージャーの役割
全社員 ・メンタルヘルスにおける会社の方針と対策(相談窓口などの紹介)
・ストレスの気付き方
・リラクゼーションの方法

教育の方法

 教育の方法は、研修会や講演会など講師を呼んで行う講義形式や、社内イントラネットを利用したネット上での教育、または民間が提供しているメンタルヘルスのためのeラーニングがある。企業によっては、民間のメンタルヘルスの検定試験(メンタルヘルスマネジメント検定試験など)を利用して、自己学習による資格取得により、会社の研修に代用することもあるようだ。

 社内で研修を行う場合、もっとも適した講師は、社内の相談窓口となる産業保健スタッフ(産業医、看護職など)である。しかし、産業保健スタッフがいない場合は、社外のEAP(Employee Assistance Program)機関や地域産業保健推進センターの精神科医やカウンセラーなどが良いだろう。ただし社外の専門家に講師を依頼する場合は、メンタルヘルスにおける会社の方針や具体的な施策(相談窓口や復職支援のシステムなど)を総務から追加説明しておく必要がある。

『月刊総務』2007年4月号 総務の引き出し「メンタルヘルス」より


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