第12回 仮説は間違っている方が都合がいい実践! 専門知識を教えてみよう(2/4 ページ)

» 2008年06月10日 15時21分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

「え? 違うだろ?」という思いが人の思考力を刺激する

 その方法を「採点比較ワーク」と言い、具体的にはこんな形で行います。

採点比較ワーク
1 解答の選択肢が3、4個ある問題を用意します。
2 A4用紙にその選択肢を大きく印刷して、採点欄を用意しておきます。
3 まず、各自個人ワークでそれぞれの選択肢が「どれぐらい良いと思うか?」を10点満点で採点します。
4 この時、必ずすべての選択肢に点差をつけるようにします。AとBの選択肢がどちらも7点などと同点項目がないようにするわけです。
5 各自で採点が終わったら、グループ内でその採点結果を見せ合い、相違点を見つけて「なぜその差が出たのか?」を議論します。

 この採点比較ワークをすると、まず、

  • 「最高点をつけた項目が同じか、違うか」

 で各個人の意見の差がハッキリ出ます。例えば図2を見ると田中さんと鈴木さんはAに最高点をつけ、佐藤さんはBに最高点をつけているので、意見が違うことが分かります。こうしてハッキリと差が出てくると、当然誰もが、

  • え? 違うだろ?」

 と思いますね。このえ?という思いが、「どうしてそうなるの?」という問いを生み、ディスカッションを刺激するわけです。

 また、この方法は「単なる選択問題」ではダメで、「10点満点で点数をつける」という「採点ワーク」が効果的です。単なる選択問題だと全員の見解が一致してしまうことがありますが、全員一致では、

 「私もAが最高だと思います。異議無し!」

 で終わってしまうので議論が進まず、理解が深まりません。ところが、点数をつけるとたいてい差が出てきます。鈴木さんが「Aが最高だとは思うけどでも10点なんてそこまで高くないだろう」と言えば、田中さんは「そうかな? Aはパーフェクトだと思うけど?」のように、点数をつけて初めて見えてくる違いがあります。その「違い」がコミュニケーションを活発にさせるのです。

 偶然この方法が役に立つことを発見して、あれこれ考えた結果、私は次のような理解に達しました。結局、大事なのは

  • 「違い」を一点に集中して顕在化させること

 なのです。そのために効果的なのが「点数をつける」ことです。口頭で意見を言い合うのでは、「解釈」しなければいけないので、違いが一点に集中して見えません。数字で採点すれば「10点 対 6点」のように一目で違いが分かります。これがその後のディスカッションを刺激するわけです。

 ただし、いくら「点数をつけて小さな違いを浮き彫りにさせる」にしても、それが有効なのは、複数人でディスカッションをしていて、ちょうど手頃な選択肢のある問題がある、というケースに限られます。1人で何かを勉強している時にはこの手は使えそうにありません。

 でも、心配は要りません。そんな時には「間違った仮説が役に立つ」のです。

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