評価、イメージの次に大事な要素、それは「スピード」です。
「トライアルから学ぶ学習のサイクル」は、何しろ「サイクル」なので繰り返し行わなければなりません。そのスピードは可能な限りで早いほうが都合がいいのです。そのためには、「トライアル」自体を注意深く設計し、削れる要素は大胆に切り捨てる、といった発想も必要になってきます。
2005年にテレビドラマにもなり、ヒットした受験マンガ「ドラゴン桜」では、数学の勉強法として次のような方法を紹介していました。
これに近いことを実は私自身も過去にやっていたのですが、ドラゴン桜で改めてこれを見た時、昔は無意識にやっていたこの方法が、あまりに理にかなっているのでつくづく関心したものです。実際、数学の基本的な解法を学ぶためにはこれは理想的な方法です。なぜこれが理想的なのかというと、
以上、イメージと評価とスピードという3つの側面がすべてきっちりハマった理想的なものなのです。特に3番目の「できることはやらない」という割り切りは注目に値します。数学の場合、これによって大幅に時間を節約できることが多く、トライアルのサイクルが早くなるため、その分学習範囲を広げることができるからです。
逆に、理科実験の場合、「実験器具が少ない」という状態は「トライアルのサイクルを大幅に延ばしてしまう」結果になるのは言うまでもありません。ここまで、格闘技経験者N氏、松坂投手、「ドラゴン桜」などいくつかの例を紹介してきましたが、ここで改めて今回のタイトルを問い直してみましょう。
キックミットという「道具」は当然ですが実戦では使いません。ということはこの「道具」は指導用として考案しなければ使えないわけです。松坂投手の「ボール1個」なら実戦でも使いますが、しかしそれをホームベースに置くという運用は実戦ではありえないものでした。ドラゴン桜の「数学の問題と解答」も、その運用方法が非常に独特なものでした。
「道具」を適切に選択し、その運用方法を工夫することで学習の効果が上がる場面は非常に多いものです。ぜひ意識的に「教えるための道具」を考えるようにしてください。
そして新しい「教える道具」やその運用方法を考えるにあたっては、「トライアルのサイクル」という、学習をする時にも共通の構造を意識しておきましょう。
どれか一点でもYESであれば、使える可能性は十分にあるのです。
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